論文カテゴリー: VEテクニック 216件

企業と市場を結ぶ生命線は製品である。しかし、高度化した市場において競争力、収益力、新市場開拓力を持った製品を創出することは生やさしいことではない。ここに技術を基軸にVE展開とその戦略要素を掘り起こし、新しいVE展開とその運用を提示する。

FTM(機能・技術マップ)は、市場動向に対応する製品の機能を定義し、その機能の達成と制約条件を克服するため、技術的アプローチを展開するものである。このFTMの検討結果をVEの展開と組み合わせることで、VEを戦略的に展開でき、かつ価値の高い代替案が得られるようになる。

当社製品の核磁気共鳴装置(NMR)のプローブの改善にこのVEの展開方法を実施した結果、性能約50%向上、コスト20%削減の成果を得て、製品の競争力を大きく高めることができた。

本研究の目的は成熟期の製品で実用機能が重視される製品を対象にし、各メーカーの製品の特性とマーケットシェアとの関係を分析的に明らかにし、顧客により好まれる製品を開発設計するための有益な情報を提供することである。この事例として小型トラック(最大積載量1t以上4t未満)を取り上げ、マーケットシェアの高い製品の特性と低い製品の特性を分析的に明らかにし、マーケットシェアの差の要因を究明し、それを新製品の開発に活用させようとするものである。そのため、小型トラックの製品カタログから得られる仕様等や顧客に対する実態調査による機能特性等の評価の情報に基づく分析を行った。

VEでは、5原則の1つ「機能本位の原則」に従い、機能を発想起点にすることで、大きな変革に繋がるアイデア発想が可能だとしている。しかし、企業において、製品の機能やその達成手段は長年にわたり研究され現在の方式や方法が採用されている。また、現在、スピード開発が求められている。通常の製品開発期間においてすべてに対し、機能に立ち返った研究を行うことは困難となっている。特に、上位の機能は変更の困難性が高く、製品開発日程上、アイデア発想の起点としにくい状況である。

また、設計図や試作機などがなく、設計者の頭脳内部の構想しかない製品構想初期段階や、クリーンルームを必要とする小ロット大型産業機械など、現物を目の前に置き、その機能からアイデアを発想することができないようなケースにおいても、機能だけを発想起点とする事は困難になりつつある。本研究は、このような困難に対し、事前に「言い訳(Excuse)」と「質問(Question)」を準備し、問題点や改善点を明確化し新たな発想起点を提案する事で、アイデア発想を活性化することに役立てようとするものである。

本研究は数多くある競合製品の主要な機能を対象にし、その標準的売価の設定に不可欠な予測売価の合理的な算出法を提案し、その有用性を明らかにするものである。

本研究では、標準的売価は予測売価に戦略的要素を加味して決定されると考え、この予測売価の合理的、かつ、実践的な新しい算出法を提案する。その骨子は次のようである。

本研究は潜在顧客を対象とし、特定の製品機能の評価額をある幅をもった金額帯で評価してもらい、この評価額を平均値(加重平均)、最頻値(モード)、中央値(メジアン)の3つの統計量でとらえ、これに数学的分析を加えることによって機能評価額の3つのタイプの代表値を算出し、それら3つの機能評価額の代表値の特性を生かして、潜在顧客の当該機能に対する評価額に基づく予測売価を戦略的に算出する方法を提案するものである。

企業にとって製品のシリーズ化は、既存技術や改良技術によって既存市場を深耕していく上で非常に有効な販売戦略である。この戦略の下にメーカーは価格づけを行うが、その合理的な根拠は明らかではない。望ましいのは顧客の視点に立ったシリーズ製品の合理的な評価法の確立であるが、現実にはまだなされていない。

本研究はこの方法論の確立を指向したものである。シリーズ製品の例としてカラーテレビを取り上げ、まず、アンケート調査によって調査対象者にシリーズ製品のそれぞれの評価とこれらの製品間の性能差を評価してもらう。次いで、調査対象者の個々人の暖昧な評価額を統合する。さらには、調査対象者全体の代表的評価額と購入率を算出する。これらのプロセスを経ることにより、シリーズ製品の金額評価を合理的に行う方法を提案するものである。本研究で提案する評価法は、企業が製品のシリーズ化を行う上で戦略的売価設定法として活用されよう。

低迷する協力会社のVE改善提案を活性化させるため取り組んだ連鎖工程グループ別によるVE研修会から、全体最適化管理を標榜するサプライチェーンマネジメントに着目し飛躍的改善に結びつけるVEアプローチを導いた。現状のVE活動の拡大と深化を追求するもので、協力会社を分業工程の専門家に見立て、協業パートナーの立場で情報の共有を図りつつ、データベースの構築を図る。さらに、整理されたデータベースをもとにサプライチェーン全体の最適化の調整を図る。そうすることで大幅のコスト削減と協力会社との真のパートナーシップが形成される。この一連の活動の考察についてまとめている。

建築工事におけるVE検討は、設計・入札・見積・調達・施工の各段階で企業にとっての受注拡大や利益確保のために実施されている。しかしながら、工事項目が多岐にわたり設計図書が多くなると、有効なVEの対象分野を選定できず、総花的なCR案の提示や仕様の変更提案に終始してしまい、顧客や設計事務所から不信感を持たれる場合も散見される。VE検討が徒労に終わらぬためには、VE検討チームは顧客・設計者の意図を的確に把握するとともに、それを満足する提案をすべきである。ここでは、設計者とVEチームが共通の基盤を持つために、設計図書の表記内容を現行の仕様規定から性能規定に変えることを提案する。そして、機能定義の段階で性能を重視し、設計図書から目標値を類推しながらアイデアを洗練化することにより、ほかの性能に対しての検討も広がり、原設計より性能が上回る仕様が具体化され、波及効果の期待できる提案であることを確証した。

建築工事におけるVE検討は、設計・入札・見積・調達・施工の各段階で企業にとっての受注拡大や利益確保のために実施されている。しかしながら、工事項目が多岐にわたり設計図書が多くなると、有効なVEの改善対象分野を選定できず、総花的なCR案の提示か仕様の変更提案に終始してしまい、顧客や設計事務所から不信感を持たれる場合も散見される。VEが目指す抜本的な代替案の提案を生み出すためには、対象工事のムダな部分をいかに早く見つけ出しテーマとして抽出できるかによるといっても過言でない。

ここでは、各種工事の金額比率に着目し市販の「工事原価分析情報」のデータと比較し分析することにより、早い段階で対象分野を選定しテーマとしてしぼりこむ方法をとった。その検証事例では、工事全体を分析することにより建築と設備にまたがるテーマが選定でき、高い効果が期待できるVE手法であると確信している。

製品差別化に当たって重要な役割を果たすのが付加機能である。付加機能は単独で組み込まれることは少なく、通常、複数の付加機能が同時に組み込まれる。複数の付加機能が同時に組み込まれることにより、顧客が有用であると認識する新たな機能がほとんどコストの上昇を伴うことなく生み出されることがある。本研究ではこれを機能の複合効果と呼ぶことにする。

本研究はこの複合効果に着目し、顧客指向による「機能の複合効果認識率」および「機能の複合効果額比率」という2つの新しい評価指標を提案し、これを用いて事例に基づく複合効果の分析・評価を行う。さらに、この結果に基づいて、より価値の高い新製品コンセプトづくりや売価設定に有用な情報を提供するものである。

建設業では品質規格ISOの認証取得ラッシュが続いている。当社でも全支店で品質規格ISO9001の認証を取得することができた。一方、当社では30年にわたりVEに取り組んできた。VEとISOとは、どんな関連があるのだろうか。個別に運用していてよいのだろうか。本論文では最初にVEとISOとの関連を分析し、それぞれの性格を明らかにする。その後、企業にとって効率的で効果的な運用をするための提案を行う。

標準的な事例として、某文化会館建設工事でのVE適用事例により活用提案の検証を行う。本論文を公表することにより、ISOとの融合をはかり施工管理においてVEを管理技術として有効活用することを期待する。