本論文は、企画VEを一層充実させる方法を商品企画プロセスの先行研究と、アンケート調査結果の考察を通して論ずるものである。
商品企画に関する先行研究からは、商品企画プロセスとは不確実・多義性・複雑性に富んだ情報処理作業であり、この不確実・多義性・複雑性への対応が商品企画プロセスの高度化の1つの方向性であるとの結論を得た。
また、アンケートによる商品企画の実態調査結果から、優れた商品企画プロセスでは、商品ロードマップが活用されていることが明らかになり、商品企画プロセスにおける情報処理の1つの方法として商品ロードマップの活用という方向が得られた。
そこで、本論では、企画VEを充実させるための1つの方法として、商品ロードマップの活用を通じた企画VEの方法についての提案を行う。
第37回VE全国大会(平成16年開催)において、「納得と創造を引き出すVEファシリテーションの技術」と題したVE研究論文を発表した。この中で、VEチームリーダーを育成するステップは納得と創造の連鎖であり、それぞれに特徴のある手法として、会話例とともにVEファシリテーションの技術を紹介した。
本論文では、メンバーに対する「質問」を中心にその効果的な活用方法を整理し、理論的な背景に踏み込んだ考察を試みた。その結果、以下の理解に立った効果的な質問を行うことで、チームの生産性に大きな影響を与えることを認識するに至った。
●質問には、VE活動の局面に応じて、その問いかけ方や表現方法に特徴がある。
●目的達成に必要な論点に議論が集中するよう、質問を構築することが重要である。
●いかに効果的な質問を作り出すかが、VEファシリテーションの要である。
油圧ショベルやホイールローダ等汎用的な建設機械の多くは、顧客用途や使用環境への適合を考慮し、同じ機能の製品を複数のクラスに分けシリーズ化して販売している。成熟されたこれら市場では、各クラスにおいて非常に厳しい競合が繰り返され、同時に顧客も厳しい眼で製品価値の評価を行い、購入機の選定を行っている。
本論文では、建設機械の中心的位置づけにある油圧ショベルを取り上げ、顧客価値評価に基づいた適正な価格評価を行うことを目的に、価格の分析とその評価方法の検討を行った。同時に、検討内容に関し、モデルチェンジにおける価格設定への反映を試みた。
本研究では、VE活動メンバーの保有する評価能力を効果的に発揮できる代替案評価法(特に構想設計案レベル想定)について提案するものである。従来の代替案評価では、スコアリングモデル(特に5点評価法)の活用やメンバ一間の相談に基づく評価が多いようであるが、今回提案する代替案評価法は、最近VEでも注目されているAHP(Analytic Hierarchy Process)を改良した「記述型AHPモデル」になっている。
記述型AHPモデルとは、現実の人間の意思決定に近づけて、意思決定者自身の納得性を高めようとする「記述型モデル」を前提にしたAHPによる評価法のことである。この手法は、とくに少数ではあるが複数ある代替案の中から最適案を選択する際に、評価に至る構造の顕在化とその評価結果の修正によって、評価者自身の評価に対する納得性の向上を目指している点が最大の特徴である。なお、本論文では、一つの適用事例に基づいて提案手法の有効性について論じるつもりである。
ここ数年、道路建設事業の業界においてもVEの流れが急速に押し寄せてきた。しかし、その目は価値の向上というよりも、直接的なコスト(道路建設費)の縮減に目が行きがちであることは否めない。もちろん、道路建設事業のエンドユーザーである国民がコスト縮減を求めていることは事実ではあるが、道路建設事業は直接的なコストだけで説明できるものではない。移動時間の短縮や環境面での改善効果など、さまざまな投資効果があることはよく知られている。
しかしながら、現状の道路建設事業におけるVEでは、コストの縮減効果に対する評価は行っているものの、本来、使用者にとって最も重要なこれらの投資効果について、適切に評価されているとは言いがたい。このため、筆者は、道路建設事業がもたらす投資効果に着目し、これらをできるだけ定量的に測定することによって、道路建設事業の投資効果を反映したVEのあり方について検討することとした。
中小企業でVEのコンサルテーションをスムースに導入するには、PRE-VE段階での課題発掘が鍵である。この「事前分析と準備」段階のVE手順は、あまり研究されていない。本研究は課題発掘と事前準備を軸としたPRE-VE段階の方法論である。その手順は、課題発掘のための願望把握、課題のコンセプトアウト、課題の精緻化、課題の実現構想、プロジェクト計画、課題を解決するための応用VE技法の選択と教育、解決に役立つ最適情報の提供およびコミュニケーションギャップを埋めるまでを六つのステップで構成している。この技法は多方面での試行錯誤を繰り返し、「PRE-VEデザイン法」として確立した。このデザイン法には、「コンセプトアウト法」「理想システム構造図」「SQ展開法」等のユニークなツールがシステム化されている。本技法は管理技法に不慣れな中小企業に適用して効果をあげており、VEの裾野を広げる方法論として活用されることを期待している。
建築工事におけるVE検討は、設計・入札・見積・調達・施工の各段階で企業にとっての受注拡大や利益確保のために実施されている。しかしながら、時間的な制約や情報が未整備のために、大胆なアイデア発想の転換ができず、総花的なCR案の提示か仕様の変更提案に終始してしまい、顧客や設計事務所から不信感を持たれる場合が散見されている。VEが目指す抜本的な代替案の提案を生み出すためには、発想の転換が図れるアイデア発想ツールの開発が必要となってくる。
ここでは、既存ツールの問題点を克服し長所を統合した新アイデア発想ツールの作成法と新ツールの活用定着のためのシステム作りについて提案する。新ツールを試行したところ、利益率の向上が図れたことと更なるアイデア発想の切り口が報告されたことで、高い効果が期待できるアイデア発想ツールおよびシステムであると確信している。
建築工事におけるVE検討は、設計・見積・調達・施工の各段階において、受注拡大や利益確保のために実施されている。施工段階においては、施工方法を改善する施工VEを積極的に行うべきであるが、施工VE提案数は多くない。これは建築工事に適合する効率的な施工VE手法が確立されていないためと考えられる。また、設計仕様変更によるVE検討は広く行われているが、この手法だけではコスト低減は限界に近づき、コスト低減に有効な施工VEの手法が求められている。
ここでは建築現場の生産性向上を目指した施工VEの適用ノウハウを提案する。製造業を参考にして、共同VE、現場観測、機能系統図の効率的作成方法などを適用した。この手法を実際のプロジェクトに適用し、十分な成果を確認したので紹介する。
本格的なIT社会が到来し、スキミング被害やフィッシング詐欺に見られるようなIT絡みのリスクが増大している。このようなリスクは、以前には予想することすらできなかった内容である。このようにIT系のリスクは革新性が高く、過去の検証に基づく対策アプローチだけでは対応できない可能性が高い。
そこで本論文では、未来志向的なリスク管理アプローチとして、「逆転発想機能分析によるリスク管理手法」を提案するものである。具体的には、身の回りの設備や環境等を積極的に活用して、破壊工作者の思考で積極的に新手のリスクを発生させる方法を機能思考で創造し、その後にその結果を反転させることによって未来型リスクの予防に役立てようとする手法である。この手法の意図するところは、過去の発生の有無よりも、未来対応型でリスク対策案を検討するところに大きな特徴がある。したがって、本手法は未発生の新手のリスクに対処できる可能性が高いという点と、「リスク管理はリスクに対する認識力に依存する」という側面から「リスクに対する感受性感覚」を飛躍的に向上させる効果が期待できる。
製造段階における工程改善アイデアは、顧客要求及び製造条件からの制約が多く、質の高い改善アイデアを出すのに苦労している。すなわちVE技法である機能からのブレーン・ストーミング法によるアイデア発想だけでは対応できなくなりつつある。そこで、①ブレーン・ストーミング法を基本テクニックとして②製造上でのチェック項目を列挙したチェックリスト、そして③類比発想法の1手法であるNM法のステップにおけるQBを合わせて活用することによりアイデアを導き出す方法を提案する。本論文は、製造段階のVE活動におけるアイデア発想フェーズの強化に関する内容である。