論文カテゴリー: VEテクニック 216件

企業の利益計画におけるVEの役割は,ますます大きくなり,その活動に投入する資源も増大の一途をたどりつつある。しかし,一時期としてとらえると,企業の人的資源には,おのずと限界があり,これを越えると,大きな混乱が生じる。また,VE活動には,企業の宿命として,できるだけ短い期間で,目的を達成し,機会損失を少なくすることが,常に要求される。これらのことから,最近では,バリュー・マネジャー及びバリュー・エンジニアに課せられた大きな課題として,VE活動の効率化および迅速化の問題が大きくクローズアップされてきた。

本論文は,製品を対象とした数多くのプロジェクトの実践活動による資料をもとに,基本機能から補助機能(または二次機能)への展開およびアイデアの発想につなぐステップをとらえ,これらステップのアプローチを容易にするために,補助機能の性質を統計的に分析,明確化すると共に,発想のしやすい機能定義用語を抽出,体系化したものである。

これによると,機能のコスト順位において,上位の5つの機能で,全体コストの84%(平均値)を占め,また全体コストの80%を占める上位コストの構成品が,これら5つの機能に,何らかの役割を持っていること,同様に,上位6つの機能で,全体コストの90%(平均値)を占めていることがわかった。また,機能そのものについては,ここで取扱った173の機能のうち,いろいろな表現形式をとっている同義語および同類語をまとめると,例えば,「電流を流す」,「絶縁を保つ」,「○○を固定する」等の機能は,それぞれ13あり,これらのものをパターン化することによって,発想のための機能定義用語の体系化が可能となった。

なお,本論文は,当社の性質から「電気製品」を中心としたものであるが,他業界の製品にも,これらの考え方は,充分,敷延することが可能であると思われる。

従来の価値工学の分野では,思考の幅を広げるために機能定義と機能系統図の方法が使われてきた。

しかし,これらの方法は,いずれも使ってみると,有効ではあるが,なにかあいまいなところ,ぎこちないところが残っており,それを取り除く技法の開発が各国で望まれてきた。

この論文は,そのあいまいなところ,ぎこちないところを取り除くため,日常なにげなくやっている思考のメカニズムを,新しい目で再分析・再組立し,それの手順化を試みたもので,次のような結果を得たものである。

(1) 「最も適切な基本機能の表現」をとらえる簡単な手順を確立し,そのメカニズムを明らかにした。(機能定義の方法の改善)

(2) 従来の作業分割構成WSSの考え方を一般化し,それを機能系統図の上に重ね合わせることにより,両方の考え方の改善をした。(機能系統図の改善)

(3) 価値の高い案を手ばやく合理的に創り出し選択するプロセスを再確認し,それを手順の中に含めた。

FBSテクニックとは,その手順につけた名称である。

低経済成長下の企業経営にとって,VEに寄せる期待は大きい。また,多くの企業で,VEは着実に成果を上げてきている。VE適用分野についても,現製品VEから新製品VEへ,さらに,ハードVEからソフト面のVEへと,拡大してきている。

VE手法面の開発,改善についても,業種あるいは企業にマッチした形で進んでいるように見うけられる。

一方,VE投資効率の観点から,VE活動体制はどうか,VE対象の取り上げ方は適切か,という反省もある。

当社では,建設業の特性を生かし,作業所中心のVE活動を長年にわたり,一貫して展開してきた。

現在,設計VE,設備VE,あるいは事務VEと適用範囲は拡大しているが,経営の基盤を作業所におく建設業にとって,今後もVE活動の中軸を作業所におくことはまちがいない。

建設現場の汗と英知を結集して実施されたVE事例は,数多く収集されている。こうしたVE情報は整備され,新しい工事に際して繰返しVEや,改善のヒントに供するよう,組織的な展開をはかっていることは,第11回論文(工事管理におけるVEのシステム的展開)で述べたところである。

近年,VE事例は飛躍的に増大しているが,その最大の要因は,作業所VE活動における「VE計画」の徹底によるものである。

本論文では,作業所におけるVE計画の重要性を述べ,ついで,VE計画をいかに行うか,VE対象の選定をいかにするか,について述べるものである。

日立電子(株)におけるVAは,テレビ放送装置・ビデオ関連装置・無線通信装置等の製品VAや製造VAが,ほとんどであった。今回,ビジコンの製造VAを行うにあたり

1. 工程が28工程にも分かれており,しかも大半の工程がクリーンルーム内の作業である。

2. 半導体の前工程と同様の微細加工を伴い,各工程毎に歩留りがあり,この歩留りが全体の歩留りに大きく影響を与えている。

などで,従来のVAとは趣を異にしていることがわかった。

本VAでは,工程の流れ・つなぎの改善に重点をおく必要があったので,種々,検討を加え,以下に述べるプロセスVA手法を開発適用して,好結果を得ることができた。

この論文は,先に発表された「ステップリスト・マネジメントの方法」(1976年度VE大会論文集に記載)の考え方を利用して,DESIGN-TO-COSTの方法を新しく手順化すると同時に,その中で使われる「VE手法」をいくつかの形に変化させ,短時間でかつシステマティックにそれを進めることができるようにしたものです。

低成長時代を迎え,家電音響製品は,ますます市場競争が激しくなり,さらに最近の石油関連資材を中心とする,材料費の高騰は収益を悪化させつつある。一方,市場のニーズにより製品はますます多様化の一途をたどっている。

これらの傾向は開発機種の数を増加させ,収益確保のために多くの機種の製品VAが要求されるようになる。VA活動は企業の置かれた環境とニーズにそったものでなければならない。

今回,家電音響製品における開発生産形態の中での,企業のニーズに合わせた製品VAのあり方について効率的な分析形態を中心に述べてみたい。

VEが我が国に導入されて以来,この思考法は色々な環境の中で,企業経営における利益確保の柱として大きく成長した。この間に,VE技法そのものもより大きな成果を得るために,VE手順の改善とか,新しい分野に適用する新技法の開発等,長足の進歩を遂げてきた。

しかし,このような努力にもかかわらず,VE活動によって獲得される成果は,初期の導入段階で得られたものに比較して,次第に減少の傾向にあるのも事実である。

本論文は,特定のプロジェクトについて,数回のVE-TFP活動を繰り返して実施した結果の資料に基づき,本当に「VEは無限である」のか……を検討したものである。その結果,VE活動の成果を示すVE率は,1つの曲線の近似式によって低減することが判明した。この曲線の性質は,今後多くの事実データによって裏付けられる性質のものであるが,「VEは無限である」ことを示唆している。また,この近似式によって最初の第1回目のVE活動によるVE率から2回目以降におけるVE活動の目標額の大枠設定が可能となる。

更に,本論文はこれら一連のTFP活動の追跡調査により,この曲線の性質を究明しこれと現在活用されている各種発想技法から,VE活動の発想段階における実践上の具体的な方法をパターン化した。この方法の有効性は,多くのプロジェクトによる実践活動において証明されているので,本論文は今後のVE活動における参考の資料とするものである。

昨今の企業を取り巻く環境は,円高ドル安,国内外の景気不振と,ますますの厳しさを迎え,企業の総合的な体質改善を余儀なくされている。また市場競争の形態からみても,ほとんどの商品群が成長期から爛熟期へと移行し,コスト,品質,技術等の膠着化による,デザイン競争の感が,より顕著となり,デザイン部門に対する,価値ある商品デザインが切望されている。

また,こうした中で,当社VE活動の重点を,商品,部品に対するハードVEと,製造部門や間接部門を中心とした,仕事の作業の進め方のVE,いわゆるソフトVEとの,トータル的VE活動展開による,価値ある仕事の進め方を基本思想とした,新しい商品づくりを志向している。

しかしながら,感覚的な要素が重大な意味をもつデザイン活動と,価値,機能を重要視し現象をクールに分析把握しようとするVE活動とは,相反する要素を含んでいるために,水と油的印象を与える。しかも,機能(F)を一定にして部品コスト(C)を下げるという,ハードVEの影響を受け,デザイン(外観コスト)に対する価値評価が正確に把握されていないことと相互して,VEによるコストダウン会議では,常にデザイン面が"いけにえ"にされていた時期があり,デザイナーはVE活動を反目敬遠するようになり,VEを正しく理解する機会を逸していたが,新しい仕事への脱皮を迫られる今日,VEというクールなフィルターを通して,デザイン業務全体の体質改善,およびデザイナーの意識改革を目標とし,手仕事的な作業を省力化することにより,デザイン本来の機能である,発想部分に重点をおいた,デザインプロセスを展開し,将来の状況を予測し,それを描くことのできるという,デザイン独自の秘法と信用を,確保することを目的としなければならない。

当社では昭和47年に産業能率短期大学のご指導により,VE実践セミナーを開催以来,従来の管理技術の主流であった「IE」,「QC」,に「VE」を含めた三本柱で,生産活動の合理化・管理技術の向上を推進してきた。

その間,推進組織の変遷や,ポリシーの変化により,個々の事業場での進歩状況は,一定の伸びを示してはいないが,全体としては,着実に定着・発展しつつある。

しかしながら,商品ライフの短縮傾向をはじめとし,VE活動をとりまく環境の変化とVE活動の活発化により,次のような新たな問題が発生してきた。

<改善の質的内容の変化>

(1) VE改善の繰返し実施による投資効率の逓減。

(2) 多品種少量生産による改善効率の低下。

(3) 取組メンバーの拡大による改善案の多様化。

(4) 標準化推進活動とVE活動の競合。

一方,VE提案の採否判定については,商品ライフの短縮化の傾向の中で多様化する改善案に対して,機会損失を防ぐ意味から,早急な決断が必要とされている。

そこで,これ等の問題に対処するべくVE提案の損益分岐点を明確にすると共に,その判断基準の確立を目指した。

「高度成長時代から低成長時代へ」と,経済の構造的変動に伴い,企業は経営体質の強化を迫られている。このような状勢下にあって,VEの果している役割は大きく,より広範なVE活動の要望がなされている。この要望に応えるためには,企業内のVE活動を,さらに定着化し,普遍,発展させていく必要がある。

当社では,その一環として,"利益の宝庫"である製造現場にVEを導入することにより,沈滞ムード気味の小集団活動をRefleshし,経営体質の強化の一担い手として,VE小集団活動を推進してきた。(われわれは,このVE小集団を「VE New Power」と称している)

本論文では,このVE小集団活動を推進するための新しいVE手法を紹介するとともに,VE小集団組織,フォロ一体制およびVE小集団活動の今後の問題点などについて述べている。