論文カテゴリー: VEテクニック 217件

企業も製品も進化していかなければ生き残れない。製品進化はターゲットとした顧客の満足を継続して向上させることによってなされる。この満足を向上させるには継続的・断続的価値向上と、その製品の差別化・個性化が不可欠となる。この結果が製品進化となるのである。本論文はこれら2つの要素を効果的に実現するため以下の展開をするものである。
まず第一に、機能定義の対象拡大(上位拡大と並位拡大)を図る。ここでは、VE対象(製品など)の果たすべき機能とその目的となる機能(使用目的など)を明確にし、さらに、VE対象(製品など)の機能発揮に密接に関わる「人」や「もの」が果たしている機能も明確にする。次に、これらに基づいて全体最適の思考の下に、これら三者の間の機能分担を合理的・合目的的に行うのである。この経過を経て、使用目的などを確定し、「人」や「もの」が果たしている機能をVE対象(製品など)に採り込むなどしてターゲットとした顧客に対するその製品の価値向上や差別化を図るのである。

現代の製品には電子回路が不可欠であるが、電子回路のVE論文や事例はあまり見かけない。現在では電子回路 VE の必要性は高いはずだが、それが普及しているとは言いがたい 。この理由は、主に2点の特徴が電子回路にあるためだと考える 。第1に、電子回路は回路や部品が果たす機能に着目して開発設計している一面があるために、電気技術者の多くは、VE実施手順の特に機能定義段階について、通常の開発設計段階と重複すると感ずる傾向が見られることである。第2は、電子回路は小型ながら多機能を有するものが多いので、機能系統図の作成に多大な工数を要することである。本論文はこれらの要因を課題として捉え、その負担軽減の方法の一つとして、機能の整理にあたりブロック図を活用することを提案するとともに、機能の整理に有益な、一般的なブロック図を修正した新しい ブロック図の作成方法を提案し、その有効性を明らかにするものである。

昨今、働き方改革により業務効率化が必須の課題となっており、VE活動自体においても、VE投資倍率の向上を目指し、活動時間の短縮化、成果の向上が果たせる活動の実現が重要課題となっている。したがって、これまでは量産品や繰り返し生産品など適用数量が多いという理由から、価値向上が果たせるVE対象テーマを選定し活動することが主であった。逆に、主に個別生産品を主体とする製品・サービスについては、一品一様となることが多いためVE活動が停滞気味であり、個別生産品へのVE 活動の導入が急務であった。

そこで本論文では、主に個別生産品を主体とする製品・サービスに多く共通して存在している2次レベルの機能に着目し、その機能を実現するための手段(以降類似サブアセンブリ品)を対象とし、VE活動を効率的に、かつ効果を拡大させる手法を提案するとともに、事例による有効性の検証を報告する。

第49回VE全国大会(平成28年開催)において、「対極類比アプローチによる創造 手法の提案と検証」と題したVE研究論文を発表した。この中で、企画段階のVEプロセ スで顧客の潜在的要求に応えるアイデアの創造手法を提案し、その有効性を検証した。今 回、その創造手法にTRIZの発明原理を取り入れて、より普遍性の高い技術的な観点を 付与しさらに有効性を高めた。 本論文では、TRIZを活用した対極類比アプローチによる創造手法を企画段階のVE に適用することで、技術的方向性に沿った信頼性の高い革新的アイデアを創造できること を検証する。リサイクル工場の冷媒用フロンの回収技術の開発に本創造手法を適用し、国 内最高レベルのフロン回収率を実現することができた。

製品流通のグローバル化が進んでいる昨今、必要な機能を確実に達成していることはも ちろんのこと、ユニークかつ安価な製品を市場へ提供することが求められている。この要 求を満たすためには、機能とコストの関連を追求することで抜本改善となる代替案を導く VE(Value Engineering、以降VEと記す)プロセスは有効である。そこで弊社では、新規 性や技術的難度の高い製品開発テーマに対して、開発設計段階のVEの適用を推進してい る。 新規性の高いテーマや今まで自社で採択したことのない要素技術を用い基本構想案の検 討を行う構想段階のVEにおいては、リスクを含めた技術的な欠点が発生することが多く なる。そこでVEプロセスの「具体化」において、欠点のない代替案を練り上げる手順が 用意されているが、作成された代替案は品質確保のためのコストが増加し、コスト低減活 動を別途実施しなければいけない可能性がある。 本論文では、構想段階のVEプロセスの「具体化」手順において、VEの特徴である機 能とコストの関連追求の思考とQC(Quality Control、以降QCと記す)的思考を融合する ことにより、欠点抽出の段階で高コスト化につながる過剰な品質対策を回避する手順を提 案するとともに、構想段階のVEにおける手順の有効性を検証した。

機能評価の詳細ステップである機能別コスト分析については、個々の構成要素のコスト をそれぞれの機能分野に各種の配賦計算で配賦することになっている。 本論文では、各配賦計算の使用実績について過去の VE 全国大会や西日本支部(関西地 区)の VE 活動事例を調べた。その結果、機能別コスト分析の記載のあった事例のほとん どが貢献度評価による配賦であった。さらに、各配賦方法の長所と短所をまとめてみた。 しかし、これらの評価はどうしても主観的になり、よりどころを明確にできない問題が あった。その改善策として重みづけ基準による配賦計算に機能の定義カード枚数による重 みづけ基準を付加することで、機能別コスト分析の合理的な基準にしようとするものであ り、事例による有効性の検証結果を報告するものである。

VE活動において、適切に機能分野を明らかにすることは重要な事項であり、効率的に 機能系統図を作成することが必要とされる。また、エアーコンディショナーの室内温度制 御、ロボットアームの位置決め等の多くの分野で使用されているフィードバック制御にV Eを適用して価値ある製品を生み出すことが期待されている。 そこで、フィードバック制御を一般化した基本となるブロック線図を基に対象テーマの ブロック線図や回路図などが設計されていることに着目し、同様にその基本となるブロッ ク線図の機能系統図を基にすれば、対象テーマの機能系統図を効率的に作成できると仮説 を立てた。そして、複数の事例による検証により、基本となる機能系統図の機能の名詞の みを特定化した後、特定化した機能の下位レベルに機能を追加することで対象テーマの機 能系統図が作成できることを確認し、本提案の有効性を明確にした。

企業には顧客に新たな感動を与える価値の創造が求められている。そのためには既に明 らかな顧客の顕在的要求に加えて、潜在的な要求を見いだし、新たな価値をもたらす製品 やサービスの基本着想を創造する必要がある。本論文では、企画段階のVEプロセスで顧 客の潜在的要求に応える基本着想の創造手法を提案し、その有効性を検証した。 提案する創造手法は開発する対象と概念的に対極のものを発想し、対極のものとその特 性を手がかりに新たな着眼点を得て、顧客の潜在的要求に応える基本着想を創造するもの である。リサイクル工場の環境改善技術の開発に本創造手法を活用し、顧客の潜在的要求 に応える基本着想を得て、顧客の期待を超えるコンセプトの工場を構築することができた。

近年、製品機能の高度化、複雑化により、新規開発や設計変更により生じる品質面での リスクは益々増加している。このリスクを避けるため、創造による変更を行うVEに対し て、消極的になることが製造業の開発現場でも見受けられる。このような傾向は、企業だ けでなく社会全体の成長を停滞させる大きな問題になる。 そこで、本論文では、製品の新規開発や設計変更によるリスクを管理し、品質を確保す るため、VE実施手順にリスクマネジメント手法注1)を活用することを提唱する。この中で、 反転リスク分析系統図を作成する手法を確立する。 この手法により、VE実践の中で、機能本位の視点から、製品全体のリスクを特定・分 析し、具体的な対応を検討することで、新規開発や設計変更によるリスクを漏れなく管理 することができ、品質をより効果的に確保することができることを示した。

企業の経営環境の変化や顧客の要求に対応するために、経営層から設定されるVE活動目標の難度は高くなりつつある。VEプロジェクトチームは、難度が高く設定されたVE活動目標を達成するために、価値の高い代替案を構築する必要がある。そのためには「アイデア発想」で数多くのアイデアを発想し、アイデアを発展させることで、VE活動目標の達成に寄与するアイデアの量を増やす必要がある。

しかし、「アイデアの発想」でアイデアを多く発想した結果、アイデアの組み合わせが逆に困難となりアイデアの発展が不十分となる問題やトレードオフ関係にある機能が存在する場合に全体最適となるようにアイデアの発展が十分にできない問題により、「詳細評価」でVE活動目標が達成できずにVE活動の手戻りが発生するなどの問題が発生している。

そこで、本論文では、アイデアの発展を行いやすくする技法として「アイデア体系図を用いたアイデアの発展技法」を提案する。