この論文は,建築設備工事における作業所VEの対象選定について,新しい考え方を述べるものである。
当社では,VE活動における対象選定のステップを,VE計画会議と称して重要な役割を持たせている。
基本的にはベストよりベターを狙い,多くのVE対象を選定し改善することで,成果の拡大をはかる作業所VEでは,そのVE対象の良否が,効率よくVE活動を進めるうえでの大きな課題でもある。
そこで今回,当支店で実施した過去の数多くのVE事例を分析し,建築設備工事における効率的なVE対象の選定方法を開発したので,ここに発表するものである。
中・長期的な商品に結びついたVE目標を正しく設定することは,VE活動を成功に導くための極めて重要な条件の1つである。
一昨年(1983年)に発表した研究論文「原価低減曲線による戦略的VE目標の設定」では,多くの事例の分析結果から導きだされた原価低減式により,あるべき製造原価の中・長期的な推移を予測し,これに基づいた戦略的VE目標の設定法を報告した。この報告では,あるべき製造原価,すなわち必要な利益を確保するための製造原価の基礎となっている売価低減曲線(Selling Price Reduction Ratio Curve=SPR曲線)についての検討事項は,紙面の関係でほんの一部しか触れることができなかった。
本論文では,まず売価低減曲線について触れ,ついでボストン・コンサルタント・グループの研究で有名になった経験曲線(Experience Curve=E曲線)または習熟曲線(Learning Curve=L曲線)と原価低減曲線(Cost Reduction Ratio Curve=CRR曲線)及び売価低減曲線との関係を明確にする。更に目標の設定を容易にするために年をパラメーターにした売価低減式を検討し,最後に原価低減曲線と売価低減曲線の低減率の差の考察から戦略的VE目標の設定法を述べる。
家庭電化製品では,現在限界普及率に達しているものが多く,当工場における主要生産品目である冷蔵庫においても,厳しい市場環境にある。
従って,生産増による利益拡大は困難な状態にあり,VEに対する期待は,ますます大きくなっており,VE活動に多大の力をかけて,設計VE・製造VEはもちろんのこと,品質基準総点検による適切な品質確保によるVEにも着手し,製品の価値向上にチャレンジしている。
本稿は,これらのVE活動において,ともすればコストについて目がとどきにくい取扱説明書という印刷物にスポットをあて,パソコンを活用して最適機能コストを追求した技法について説明する。
当社は建設他社に先駆けVEによる管理技法を導入して以来,16年以上を経過しており,ハードVE・ソフトVEによる種々の改善活動も定着している。
なかでも,いち早く取り入れた作業所VEでの苦心談や失敗談を聴き,整理すると,うまく活動した作業所と,そうでない作業所との間には,VEテーマ選定の差,すなわち,たくさんある問題点,改善ヒントから,どれを自分たちの作業所のテーマとして選定したかによるVEテーマ選定で,活動の差が生じたのではないかと思われる。
そこで今回,当社の仙台支店で昭和55年から58年までの作業所の中から,任意に選出した建築系作業所6カ所のVEテーマを分類した結果,VEテーマ選定に能率的な手法(TS法)を考えたら,効果が認められたので提起する。
当工場は,設立以来約15年間,オーディオ製品を中心に生産してきている。
しかし,このオーディオ市場は,今日の低成長経済の中で,伸びなやみ状態となっている。その結果,図-1のCDコードプレーヤー売価推移の如く,激しい売価低下を繰り返しながら,メーカー間の競争を行っている。
これは,お客様からみれば,どんどん価値の高い商品が発売されて喜ばしい。しかし,生産者側にとっては,急激な速度で原価低減を行わなければならなく,さらにシェアを増加させようとするには,この市場のスピード以上に原価低減を行う必要があるといえる。
かかる状況に対処するには,従来,行っているブレーンストーミング法主体のアイデア発想から,さらに,より斬新なアイデアを創造する方法へと技法を向上させなければならない。(図-2参照)
本報告は,上記課題に答えるべく,アイデア発想での阻害要因を改善するとともに,機能系統図のイメージを見直すことによって,新しいアイデア発想技法を開発した経緯及び,結果についてまとめたものである。
VEが長い歴史の中で着実に発展し,企業経営における収益改善の大きな柱として位置づけられるようになったことは,まことに喜ばしい限りである。
しかし,この事実は,とりも直さず,VEに携わる人が企業の利益計画に結びついたVE目標の必達という大きな責任を背負っていることを意味するものである。
一方,企業の利益計画に必要なVEの成果を,長期間にわたり継続的に確保することは,なかなか困難なことである。
VEの成果を継続的に得るためには,次の3つのことが大切である。
まず第1は,「この製品のVEはもう限界にきた」という心理的障壁の克服である。同一製品,または同一機種の繰返しVEにおいては,枯れた製品,すなわちVEのタネ切れという図式が無意識のうちに心の中に障壁となって形成されるからである。
しかしVE努力を傾注してきた製品の製造原価は,着実な歩みをもって低減の軌跡を描き続けている。この事実は,製品は決して枯れるものではなく,顧客の要求に対応し,強い生命力をもって変化していることを物語っている。
心理的障壁の克服には,VE活動の実績成果という事実を通して「製品は決して枯れるものではなく,枯れるのは,その製品をとり巻く人間の頭の方である」ということに気づくことが必要である。
第2は,新しい角度からのVEアイテムの発掘である。従来のアプローチ方法を繰返すマンネリVEでは,必要な目標利益の達成は難しい。
継続的にVEの成果を得るためには,VEアイテムを発掘する新しい技法の開発が必要である。
第3は,VEに必要な新しい知恵と情報の調達範囲を,更に拡大することである。
VE技法をよく理解している人達ばかりでVE活動を実施すれば,非常に能率的ではあるが,情報の質の量が,かなり限定される。日常業務においては,VE技法にあまりなじみがない,より広い分野の人達がもつ知恵と情報を,VEアイテムに結びつけるためには,これに適したやさしい発想技法の確立が必要である。
本論文は,新しい観点,視点または角度からVEアイテムを発掘する方法,しかも,それがVEの初心者にも容易に活用できる方法の確立を目的として研究したものである。
この結果,われわれ日本人が常に使用している左脳の漢字を補助的なキーワードとして使用し,機能中心に右脳に,いろいろなイメージを描き,有効なVEアイテムにつながるようなヒントをつかむ方法を考案した。
本技法の大きな特徴は,発想の観点,視点または角度として単一漢字をキーワードとしていること,及びこの漢字と機能定義の動詞を併用し,2つのキーワードによって大脳の記憶情報を検索することの2点にある。
VEは,機能定義段階におけるFASTダイヤグラムや機能系統図の作成とか,機能評価段階におけるFD法やDAREシステムの応用,あるいはDTCといったマネジメント・システムによって,管理技術としての形態を整え,世界的な発展を続けている。
しかし,これらの技法を正しく理解し,完全に実践するには相当長期間の年月を要し,専門のバリュー・エンジニアでなければ活用しにくい面がある。
また,FD法などの機能評価法によって,コスト意識の低い設計者などへの動機づけをしようとするやり方は,表面的な形だけのVEになったり,逆に,意識の高い設計者からは客観性がないと,VE技法に疑念が持たれる結果になりやすい。
そのために,せっかくのすぐれたVE技法の真価が発揮されず,VE活動の拡大・定着化のネックとなっている場合も,多く見受けられるが,これらはVE思想や技法の本質と適用方法を誤っているからである。
さらに,今日のVEは,開発日程の短縮,過大な改善目標,対象プロジェクト数の増大など,非常に困難な条件のもとでの活動が要請されているのに,それに対応し得る技法の開発が遅れている感がある。
このような観点から,ここに体系化した「実践的VE技法」は,
①VEの本質は,顧客の考え方と同じ立場での価値判断に基づく「創造技法」であることを再認識し,
②特別に習熟したバリュー・エンジニアのための技法ではなく,設計者の誰もが「容易に実践できる効果的で効率的なVE技法」をシステム化し,
③専任のタスクフォースプロジェクトではなく,コストマネジメントとの融合による「日常組織主体のVE活動」を展開する。
ことにより,
厳しい経営環境を克服するために全員参加型の,いわば,QCサークル活動のVE版としてのプログラムである。
そして,その特長は,
①日常組織での企業集団ぐるみの推進体制により,VE技法の有効性を高めながら容易化が図られている。
②機能的なダイヤグラムの「コスト構成図」により,VEの原点である機能やコストが把握・比較しやすい。
③創造的機能を案出しやすい「要求機能の洗練化」により,製品差別化による付加価値向上がはかりやすい。
④体系化された「技巧的な機能評価技法」により,改善の極限を追求するためにVEの真価が発揮しやすい。
⑤ 「簡易VEワークシート」や,「VEチェックリスト」,「アイデアバンク」,「コストテーブル」などのVEデータとか,コストマネジメントシステムとの融合による効率化がはかられている。
ということができる。
プラント制御を目的とする産業用電気制御システムは顧客仕様にもとづき単品受注生産することが多いが,近年顧客ニーズにより制御対象範囲が拡大し,性能,保守などの面から高機能化がはかられている。また,制御装置はエレクトロニクス化の進展により,その製品ライフサイクルが短いものになってきている。
このような情勢にともない,システム計画段階から顧客に対し,長期間の技術的なコンサルティングが必要であり,また製品を工場から出荷した後も,現地での据付工事及び試運転調整に多くの時間を要しており,これらの費用の削減が急務であった。
そこで製品ライフサイクルの初期の段階で,トータルコストミニマムな製品にするため,関与者分析によりメーカーからユーザー迄の製品ライフの各関与者からみた製品のあるべき姿を追求し,魅力的な製品に仕上げ,販売の拡大をはかった。
VAを推進するに際し,大切なことは,実施した結果について,誇りと感激と生き甲斐を感ずるような活動を行うことであろう。特にVA推進ステップの中での機能分析は,製品の本質を追求するという意味で,最も重要な分析作業であり,このステップを忠実に実行することにより,少なくとも顕在化されている要求機能を確実に解明することができる。ただ,残された問題として,顧客要求機能から具体的な達成機能解明の過程において,対象製品の設計構想そのものが,どのような過程から採用され,どのような構想が,如何なる理由で不採用となったかという,いわゆる,潜在構想にもスポットを当てると,更に価値の高い真の達成機能を選択することができると考える。
今回,紹介する技法は,上述の問題点を解決するために,数々のVA活動を消化してゆく過程の中で,フト浮かんだアイデアを,苦心の末,体系化したもので,実際のシステム製品のTFP-VAに適用し,予想以上の成果を得ることができた。
以下,その概要について述べる。
逆オイルショックに代表される激動の1980年中期を迎えて,世界の経済情勢は,一部の業界を除いて底冷えの状態にある。この零サム時代を生き残るには,世界中の業界をしのぐ強いコスト競走力をつけた企業にならないと,現状設備の稼動を維持できないことはもちろん,利益の維持増加をはかり,次世代の新分野ヘシフトして行くことは困難になってくる。
これを乗り切る一つの方策として,固定費増加をもたらさない購入材料を,高効率的に用いる新材料VE技法を開発した。この技法は,材料多消費型の装置産業に高い効果が見込まれるが,他の業界においても,有効的な適用がはかれる。これを『商品分析』と命名し,その応用発展をはかっている。