購買費用は、製造業の例でいえば、原価の約55~70%を占め、企業経営への影響度が高い。筆者は、最安値が実現でき、かつ効率的、効果的な購買テクニックの開発はますます重要であるという認識をもっており、企業経営に役立つ購買主導的な活動は何かという観点から本テーマに挑戦した。
アプローチの方法は、購買業務機能はなにか、経営に貢献できるその時代、時代の購買戦略機能は何かを再点検することを試みた。ここで明確になった機能を達成するための方法と科学的なテクニックを開発・改良して適用する。
さらに、購買業務機能、戦略機能、テクニックを有機的に組み合わせマトリックスにして、誰にでもできるようにしたものである。これらの方式は、実戦でも活用済みである。また、経営状況や市場の状況の変化に応じ、内容を見直しながら活用できる。
自動車部品を対象とした自社のVE活動を進めるかたわら,13社に及ぶ協力会社に対して同じような共同VE活動を指導・推進し,6~8ヶ月の活動で所期の目標を達成できる見通しを得た。
協力会社とのVE活動においては,各企業の性格を十分に理解することが必要であり,また,発注者と協力会社は売買する製品の価格については対立関係にあるため,共同VE活動において両者は対等な立場にあるとは言いがたく,VE活動を推進するに当たってはその点を十分に配慮しなければならない。この論文では,通常の自社内のVE活動と違って協力会社との共同VE活動で特に気配りを要する点についていくつかの提案をする。
金型は個別発注生産であるため,発注者側(例えば,資材購買部門)で金型の事前分析を行なうことは,大変困難であるといわれていた。しかし逆の見方をすれば,金型は個別生産(1品生産)であるだけに事前に各種の分析や標準設定を具体的根拠に基づいて行ない,両者(発注者と受注者)が共通のベースで,両者の意志を十分に取り入れた型分析を行なう必要がある。
決して各担当者個人の経験技量だけに基づいた分析であってはならない。基本的な型製作方針に基づき,型分析を行ない,判断を必要とする部分に対し,経験や技量を結集していけばよい。このようにして作られた金型は,意思の入った金型といえるであろう。
ところで,最近の型製作技術の進歩はめざましく,NC装置付加工機,EDPによる型設計・製作,ワイヤーカット放電加工機等,型製作加工機の進歩のみならず,金型を構成する各種の標準規格部品の普及度合も高く,削って作る時代から,規格品の選択・組合せの時代へと移りつつある。つまり"金型づくりの改革"が行なわれつつあるのである。
一方,産業界にあっては,経済の低迷,需要の鈍化など厳しい環境下にあり,生産部門では多種少量生産の傾向がますます増大している。ということは,金型製作面数の増大,金型費用の上昇(コスト増大),金型切換頻度の増加ということになる。これらのことを考えると,発注者側での事前の金型分析,つまりは"金型への意志投入"ということは,大変重要な意味を持っているといわざるをえない。
今回,このような金型という技術的要素の強い分野にVE手法も活用し,資材購買部門がどのように取り組んだかを述べてみたい。
安定成長時代を迎え経営環境により厳しさが増すとともに,企業経営の質が問題となる。特に,下請中小企業においては,経営の近代化がおくれ経営効率が甚だ低い企業が多く,経常基盤が脆弱である。
高成長期では,低賃金と長時間労働の労働集約型の経営を行なうことにより,企業収益を得ていたが,受注量の減少,採算の悪化に伴って収益性が急激に低下し,分岐点の売上高を確保できず,水面下の経営をよぎなくされている下請企業が増加しつつある。
企業体質を改善し経営効率を高めるためには,その企業に適した管理技法を導入し,経営責任者がリーダーシップを発揮し,全従業員の総力を結集して問題解決にあたる必要がある。このような下請中小企業に,VEを定着させるためには,単に技法の紹介のみではなく,利用可能な管理技法を適切に組み合わせ,企業体質の改善を図りながら収益性向上に役立つことを体験させることが重要である。本論文は,企業診断とその改善指導を計画的に実施し,下請企業の経営効率化を効果的に実現させようとするもので,資材部門のVE専任者としての研究課題でもあるので,今後とも一層の努力を傾注していきたいと考えている。
オイルショックが,日本経済に大きな変質をもたらせてから,早や2年半余,経過した。この2年半余の日本及び世界経済環境の激動の流れは,高度成長時代から低成長時代への経営転換を迫り,企業経営について体質改善を余儀なくしてきた。体質改善の具体策は,高度成長時代の感覚を超えた諸策が求められ,その対応策の一環として,内部努力により利益改善の達成-コストダウン-が,企業の安定軌道を着実に確立するものとして,重要視される。
その最適有効手段として,VE活動の一層の充実展開が,各企業に進められている。企業内部各層へ浸透・定着を通じ,適用局面の拡大を進めながら,企業経営のマインドに押し進めてゆく展開過程は,幾多の企業に,その実例をみることができる。それゆえに,VEの威力に,企業が注目するところであろう。
一方,現時点の資材調達環境は,石油パニック・物価狂乱の一時期を経て,資材の新価格体系への移行が進んでいる。生産工場における購買部門の調達活動は,コストダウンの最前線部門として,質的充実・価値の追求を強く要請される。
この難局のなかで,購買部門として,個品のVE活動を積み重ねて,購買管理体系にVEマインドを組み入れ,低成長時の購買部門の利益創出機能の徹底追求と確立をはかり,併せて企業内VE活動の活性化を進めることは,企業体質改善の効果あるアプローチであろう。
本論文は,購買局面におけるVE活動の新展開を進めて,原低成果をあげてきた当所の展開過程を紹介しながら,その重要性・波及効果をまとめたものである。
従来,VE手法の企業内導入については,いくつかの議論がなされてきた。
日く,トップの支持と理解を得ること,VEは体験しないと身につかない,VE提案は採用のための説得も充分考慮せねばならないこと。等々である。
かって,ローレンス・D・マイルズは,その著書の中で「失墜の危険排除」についての見解を次のように記述している。すなわち「意志決定に必要な環境」の章で,「新しく価値のもっとよくなるものをつくりだすための組織は,通常1年以内で,十分に機能を発揮するように作りあげることができる。しかし,新しく価値のもっとよくなるものの研究検討で得た結果を効果的に実施に結びつけるための意志決定者の考え方を変えるのには,数年を要すると考えてもよい。」と一般的な企業内の姿をとらえ,その理由と対策を次のように述べている。
すなわち,コストダウンのための良い改善案を,現在の製品にもりこむための採用意志決定の場に際して,現状を変更することが,つねに反対されがちであるから,対策の第一ステップとして「変更に関連する人達の失墜とか,将来の失墜につながるような可能性のあることがらを,最少限にしておくための,できるだけの処置をすること。」と指摘している。
このような観点から,コストが急に下がることに対する関係者段階の失墜の歯止め策を考慮しているうちに,以下に説明するような,「適正購入価格のステップリスト」の骨格ができあがった。
できあがった結果をみると,失墜防止のための歯止め策としてばかりではなく,各種の立場からもステップリストとして使えそうなので,経営上よりの,新製品/量産の管理サイクルまで拡大し,まとめてみたしだいである。
産業構造の変化(技術革新,人件費の上昇,そして労働力不足)は,中小企業にとって何を意味するのであろうか。それは今日の時代がイノベーションの時代と言われているように,中小企業にとっても,企業体質の革新を意味しているのである。しかしながら,いまだ旧態依然の体質から抜けきれず,上記の問題に面して,対応策を見い出せず戸惑っている企業が意外に多く存在しているのではないだろうか。
この論文において,ある中小企業との共同でVEによるコスト低減活動の実践をモデルとして,特にVEの人間的側面の重要性を説明し,VE実施の結果を分析することによって,VEの多面化について考察してみたい。