論文カテゴリー: マネジメントとVE 62件

VEが企業内に導入され,計画的に実施された結果,大幅な原価低減を効率的に実現し,収益性の向上に貢献しているが,責任者が不明確な管埋されていないVE活動では,効果に限度があると思われる。故に,マネジメントの一環として,VEによる目標原価の達成を,システマチックに,しかも全社的に実施し,目標を管理しなければならないので,コスト・マネジメントを効果的に実施するためプロダクト・マネジャーは,VE活動の計画・実施・効果の確認を総括的に管理することになった。

従来,企業の努力目標が,高生産性による生産コストの低減に向けられていたが,近来の市場の需給バランスから,商品の滞貨を招くようになった現在では,新たな企業の目標として,新しい機能を開発し,市場の再開発を計ることが,急務であります。

また一方,近来の労務費,材料費の高騰,商品の多様化からくる生産コストの吸収を,今までのように,生産性向上,合埋化による生産費の低減等の量的メリットに求めることは,次第に困難となってきました。

当社においても,VE活動の中で,今までのように既成の機能におけるVEにおいて,毎年くりかえされるこれら生産費の上昇に,すでに今までの機能のやきなおし(MODEL CHANGE)では,吸収出来ないことを痛感しております。

ここに,VEの目標を,現状おかれている企業の生み出し得る付加価値の低下に対し,これをいかにして維持するか,また一方,新たな機能を開発し,付加価値上昇を如何にして計るかの改善活動は,VErの一層重大な責務として,とりくまなければならない問題であります。

このような新しい環境を基に,VEを展開するためには,今までのような一定のパターン(企画機能or設計機能)を基に,その中で,いかにコストを引き下げるか,いいかえれば,与えられた機能に対し,いかにコストの低い手段を選択し,価値を向上させるかという"コスト・ダウン"の目的から,今後は,これら価値の追求とともに,新たな機能を開発する活動が必要であります。

そのためには,VEのあり方も,今までのVEの領域を,より上位に展開し,企業の経営段階にさかのぼり,製品の企画段階において,VEを適用する,いわゆる開発VEが必要になります。

シャープ株式会社テレビ事業本部に,本格的にVEが導入されたのは,昭和39年で,購買部門に調査室を設け,購入部品を対象としたセカンド・ルックのVEが開始された。

これは,コストテーブルによる購入価格基準の管理と,その過程におけるVE提案を活動の中心としたもので,購買管理のレベルアップに大いに貢献した。

しかしながら,必然的に,購買部門のためのコストテーブルという傾向があり,また,組織的な制約からファースト・ルックのVEに脱皮しきれず,企業のコストダウンの要請に適合できなかった。

そこで,昭和42年に,新製品の原価見積りを担当していた原価計算部門と統合されて,原価管理部門として独立し,設計段階のVEへ,さらに企画段階へのVEへと発展してきた。

しかし,企業を取巻く環境は誠に厳しく,帰納的な部品単位のVEや,機種単位のVEだけでは,十分とはいえなくなってきた。

そこで現在は,原価管理部門と経理部門を密着させ,演繹的なVEによる管理会計システムを確立し,利益計画に直結したVE活動を展開している。

これによって,目まぐるしく変動する市場動向に即応し,企業の要請する利潤を確保するためのコスト・マネジメントが可能となったので,その概要について述べてみたい。

生産には大別して,生産の基本ラインである直接作業と,それに付随する間接作業(すなわち管理業務〉とがある。本来,直接作業と間接作業の比は,直接作業の占める割合が多い程望ましい。しかし,多機種少量生産体制下では,技術部門では,純設計活動以外の多くの雑業務,機種毎のぼう大な設計資料の管理等の作業がある。また,そのために,同一機能品の二重設計や,同じ失敗のくり返しを生じやすい。発注部門では,伝票量の増加に伴なう発注工数の増大,工程管理部門では,管理オーダーの増加に伴なう管理漏れ等を生じやすい。

生産性の観点から見れば,密度の低いこれらの業務が,生産原価に占める間接作業費の割合を多くしている。

われわれは,生産ラインでの業務及び,それに付随する各種管理業務の機能分析を行ない,これらを最も少い労力で,最も能率的に行なうために,問題点を把握し,それぞれに対して,きめの細かい改善を施し,業務の合理化を実施しつつある。そのいくつかを紹介して,識者のご批判を仰ぎたい。

なお,このVE的合理化計画は,現在,まだ進展の途上にあり,完成したものではないので,併せて今後の方向についても言及させていただきたい。

IEは衆知のごとく,テーラーの科学的管理法にはじまる伝統的管理技法であり,わが国に導入されてから久しいが,近年,賃金の高騰,人手不足による省力化の必要性から,ふたたび見直されてきた。

また,VEを進めていく過程で,すでにIEの基盤のあるところは別として,一般に標準時間の未確立によるコストデータの不備が改めて認識され,遅ればせながら,IEの導入に踏み切った企業も少なくない。

以前,わが国が,まだ人手不足の経済でなかった時代には,IEのニーズはあまりなく,むしろQC,VEを重点的に採り入れた企業のほうが多かったようである。

全社的に,ただ1つの管理技法に努力を集中している時は,問題にならなかったが,途中から別の管理技法を併行して導入するとなると,企業によっては,それらの間の関係をどのように位置づけ,理解,統合したら良いか混乱することも十分にあり得る。とくに親企業から種々の管理技法の導入を勧告されても,中小規模の協力企業では人材も少なく,なおさら上記のような事態がみられるのではあるまいか。

この問題は,IEをどのように定義するかによっても,取上け方が違ってくる。VEをはじめ,多くの管理技法は,広義のIEにふくまれてしまうが,それでは主題の解決にはならないので,ここではIEを,狭義のIEすなわち,作業研究に限定し,VEとの関係を取扱うことにする。

どのような管理技法にしても,時代とともに,適用の場所,対象,時期,要求に応じ得る範囲を拡大し,それぞれ精緻な手法も漸次,開発されて内容が豊富になり,往々にして,あたかも1つの管理技法のみで,あらゆる経営管理上の問題が解決できるかのように信じられることがある。

しかし,管理技法は,あくまで手段であり,それ自身は目的たり得ず,また,1つの管理技法のみでは限界があることも否定できない。すなわち,それぞれの管理技法が相補関係にあることを理解し,各技法の利点を良く認識し,企業目的のためにうまく統合活用してこそ,はじめて意義がある。

この論文では,プロジェクトワークを中心にして,IEとVEの特徴を考察し,とくにIEの場合,問題定式化のフェーズが重要であることを指摘した。そして問題解決のジョブプランを基本とし,これに手法を組み合わせたWSS方式による教育訓練プログラムを開発,実施したところ効果が認められたので,統合のあり方を方向づける一例として,その内容を提示する

VAが,わが国に導入されて10年を経過した。この間,VA思想の企業への浸透は,めざましいものがあり,VAの対象も部分から全体,そして総合化へと,遂次,拡大の一途をたどってきた。またVE技法はセカンドルックを中心としたVAから,ファーストルックをめざすVEにと,発展拡大してきたことは,周知のとおりである。

最近の価値概念の変化は,大きく拡大しつつある。使用価値の向上に限定された初期のVAに比して,最近の傾向は,エスティーム・バリューをも対象とした,感覚機能に重点が置かれた,広い価値概念に対象が拡大化してきたといえる。今やVEは,単なるコストダウンの有力な手段にとどまらず,広く顧客の要求を満たすマーケッティングの中にあって,商品の価値を高める,そして具現化を計る強力な一助を担うVEに,成長したとみるべきであろう。

一方,企業内活動においても,ソフトウェア面で,価値向上をめざす努力がなされている。"物"を中心として発展し,半ば成功をおさめてきたVEの適用局面も,その基本姿勢ともいえる価値概念を,ソフトウェアの効率向上面に拡大しつつある点も,指適できよう。

このように10年を経過したVE,そして,これまで未開発であった局面に,VErの活躍の場が展開しようとしている'70代に,VErとして,企業から何を期待され,また,どのように応えるべきかについて考察を試みたい。

最近のVEの一般的傾向として,機能を向上させることもVEであるとされている。また,今後はその傾向がより深められる,といわれており,現に,その方向にVEを推進してゆこうとしている企業が多くなりつつある。

しかし,従来からの機能を一定でコストだけを下げる,が本当は本流ではないだろうか?また,機能向上ということは,一体どの様なことなのだろうか,従来の機能一定と,どのように違うのだろうか,設計段階のVEでも機能向上があるのだろうか? 以下考察してみよう。

VEとは,その製品とかサービスの機能(目的とする働き)を最低の総コストで達成するために機能を分析し,価値を最大にするための組織的なチーム活動である。

VE活動を活発化するためには,企業トップの明確な方針により営業部門の受注活動より販売後の保守サービスに至るまでの総コストを最小を最小にするVE活動の管理が重要となる。

従来は,とかく日常業務はそのまま担当させ,従業員個人またはVEチームの自発的な努力に期待し,VE活動推進の環境整備をおこたり,VE予算の裏付けもせず,いたずらにVE低減目標のみ過大な要求を行なうなど,VEに対する投資を過小にする企業のトップが少くなかった。VEの効果は,その投資額に比例して増大されることを自覚し,国際的なコスト競争に打ち勝つVE推進の総合化を,早急に実現させるべきである。

1. 最初に三つの言葉を提示しよう。多くのVErは,VEを論ずる時,これは的はずれであると合点し,とまどうかも知れぬが。

(1) 正しいはかりと天びんとは主のものである,袋にあるふんどうもすべて彼の造られたものである。

(2) 相はかることがなければ,計画は破れる,はかる者が多ければ,それは必ず成る。

(3) 全地は同じ発音,同じ言葉であった。時に人々は,東に移り,シナルの地に平野を得て,そこに住んだ。彼らは互いに言った。「さあ,れんがを造って,よく焼こう。」こうして彼らは,石の代りに,レンガを得,しっくいの代りに,アスファルトを得た。彼らは,また言った,「さあ,町と塔とを建てて,その頂きを天に届かせよう。そして,われわれは名を上げて,全地のおもてに散るのを免がれよう。」時に主は下って,人の子たちの建てる町と塔とを見て,言われた,「民は一つで,みな同じ言葉である。彼らはすでに,この事をしはじめた。彼らがしようとすることは,もはや何事も,とどめ得ないであろう。さあ,われわれは下って行って,そこで彼らの言葉を乱し,互いに言葉が通じないようにしよう。「こうして主が彼らを,そこから全地のおもてに散らされたので,彼らは町を建てるのをやめた。これによって,その町の名はバベルと呼ばれた。

以上聖書より

2. VEをツールとしてVErが自からの生命を企業に奉げんとしている時,"VEを経営の中に組み込み体系化しなさい"と言うことや,"VEをコストダウンプログラム,また,新商品開発プログラムで充分活用しなさい"と言うようなことは,よく耳にすることである。VEの具体的な展開方法については,確かに,充分に論議し,研究しなければならないであろうが,われわれは,今,VEの根本,VEの本質までさかのぼって,討議する必要もあるのではなかろうか。

3. V=F/C(V:価値の尺度,F:要求機能,C:総コスト)

これは,われわれVErが見慣れている式である。ではVErに尋ねよう,「価値が高められた,損われたというが"価値をはかる正しいはかりと天びんは何んですか。何を基準にして価値を判断していますか。機能とコストのバランスによる?それならば,そのバランスは何を基準にして判断していますか」

次に尋ねよう,「あなたがたは,よく計画を立てるが,それは生かされていますか。実施され,成果を得ていますか。計画が破れる? どうしてですか?」

最後に尋ねよう,「あなたがたは懸命に働らいているようですが,一体,何をしているのですか。何を造っているのですか。

4. 開放経済のなかで,VEはあらゆる時と場で適用され,いろいろなものをどんどんと生み出していく。しかしながら,本質的な問題が解決されないままのVEは,VEと呼ぶだけの値打ちをも持てなくなるのではないかと考えるのである。

この問題を解きながら,ここに,これからのVEのあり方として,Value Design(VD)を提唱する。

5. Value Design(VD)という言葉自体は,過去において,何人もの人々によって,述べられたことなので,何も新しいことではない。ただ過去においては,デザインというので,即,物の形態や色彩をどうすべきか,などの点とVEとの関係において,問題をとらえていた感が強く,デザインの本質までには触れていなかったようである。

ここでいう "Value Design" とは,本物のVEとは,デザインの本質を包含しなければならぬことを意味し,これが,今後のVEの姿勢であろうと考え,推奨したいのである。

VA手法が導入されてから,既に,10年が経過している。導入当初,部品に対する分析から始まって,製品・装置へ対象が移行して行っている。これと並行して,各ステップ毎のVA手法も研究が進み,対象の変化に応じて,展開が可能になって来た。

当社では,VA活動の企業内の定着は,経営幹部の理解と,承認が,最も,効果が大である点に着目し,VAの効果を,経営効果に反映させることを最終目標とし,工場単位の,収益改善計画としてのVA活動の投入,受注から発送迄の,各段階におけるコスト効率を高めることを目標とする。

このような,経営活動そのものに対する,VA活動の適用は,経営活動の広範囲な分野に対し,高所からの,マクロ的な視野による,問題点の摘出が必要で,それら,対象となる問題点の多様性に応じて,解決のための戦略を立案しなければならない。

従って,環境によって,極めて,特異な性格を持っている問題点に対しては,個々の具体的な手法そのものよりも,VA活動の計画,すなわち,広義の対象選定の計画立案が,より重要な課題となる。

今後,予想される材料費の上昇,人件費の高騰,労働人口の減少等,山積する問題点をかかえた企業経営は,戦略的なVA活動の投入によってのみ,健全性を確保出来ると考えられる。

本論文は,取り上げられた対象機種が「経営の川」を流れてゆく過程で,どの領域にVA的攻撃の的をしぼるかを,戦略的に決定し,実施した事例を挙げて,その効果が,経営の業績を直接向上せしめた実証を示したものである。