論文カテゴリー: マネジメントとVE 62件

当社における管理技術は,昭和35年以降,これまで製造を基点として営業まで,その総称を「品質管理」の名のもとに,導入と推進をはかってきたが,その柱は,QCであり,IEであった。その間,市況の変動により,社内の緊急政策の実施等により,推進の濃淡はあったにしろ,長期的にみれば,着実に,その定着が,はかられてきた。

ところが,ご存知のごとく,昭和48年の石油ショック以後,特に消費構造の変化により,その対応のため社内における政策も急転換が始まり,当然,管理技術の推進も転換がせまられた。その一つは高品質低価格商品の造出であり,他の一つは,企業内部の効率化,いいかえれば,"贅肉取り"であった。前者については,表現をかえれば,お客さまのニーズをとり入れ,もっと次元をあげれば,お答さまの潜在需要までも,開発し,しかも,お容さまが,安く感じる"値ごろ"商品を開発することであり,後者については,いかなる不況といえども「赤字を出すことは,罪悪」であり,当然,商品個々について,最適利潤を確保することが,必定とあれば,商品個々のコストを下げることに,全力をつくすと共に,社内組織の効率化をはかり,単なる社内経費の引きしめのみならず,全社員の効率的活動による,企業内部のトータルコストの低減が,必要であった。

当社においては,昭和46年より,ワークショップセミナーが開始され,VEエンジニアが,事業部,協力会社で,主としてハードのVEを中心に活動をしておったので,幸いにも,石油ショック後の急激なコストダウンの要請には,何とか答えられたものの,企業内トータルコストの低減については,新企画が必要であった。それまでにも,社内において商品個々のVEの進展にともない,製造工程設計のVE,生産管理業務のVE,新商品開発へのVE等が,必要にせまられて,研究されつつあったが,いろいろの問題があり,苦労している時でもあった。しかし,今度は,会社トップからの要請であり,全社あげて取りくむテーマであるだけに,全社活動としてのVEのとらえ方を真剣に検討した結果,ソフトVEとしての展開をはかることを決心した。そして既に述べたごとく,事業部には,ハードのVEが思想的にも,手法的にも定着しつつあったので,一層の推進を考えるとしても,その焦点は,当然,会社の中枢である本社業務諸部門と営業部門であった。

当時の周辺の状況は,すでに市況の急激な変動にともない,"発想の転換をはかれ!!" "原点にかえって考えよ!!"と,さけばれている時であっただけに,トップの「今までの高度成長時のままの,会社体質(=考え方)では,非常に危険であり,その転換をはかれ!!」という強い要請は,全社員に良く理解されていたものの,では,具体的に,どう転換するかについては,精神的理解にとどまっている時でもあった。そこで,われわれ推進担当部として,転換の方法は,何も一つに限ったことではないが,われわれとしては,せっかく導入し,浸透しつつあるVEの幅を広げ,レベルアップをはかるため,VEの本質にたちかえり,その思想の展開と活用の徹底を,全社に拡大することにより,トップの要請に答えようとし,その結果,まとまったものが,ソフトVEによる推進であった。

VAが企業経営活動の一環として,極めて重要な役割をはたすようになり,各企業において,VA (VE)センターと呼ばれる組織VAを推進する専任部門を有するところが多い。これらVA専任部門の持つ機能は何か,何をすべきかを明確にすることが,VAがより効果的な活動となり得るか否かの鍵であろう。

VA活動そのものを,専任部門の専有物だと考えるとしたら,そこには,生きたVAは育たないであろう。VAとは,1つの行動によって生まれる価値を,より高めるための手段であり,行動とは,大げさにいえば,企業人すべての各自の職場における業務そのものである。つまり,日常の個々人の業務は,その組織の目的に沿って,より効果的アウトプットを求めて行動しているし,その具体的手段として,VAを活用しなければならないと考える。

VAセンターの仕事は,各職場が持つ機能を理解し,より効果的なアウトプットを出すよう,指導することであり,VA専任者とは,VAスタッフであるといえる。

当工場においても,VAセンターと呼ぶ組織があるが,特に,工場という生産に直結した部門内において,スタッフは,どうあるべきかを,具体的活動事例を上げながら,述べてみたい。

今日の社会,経済情勢は,企業経営にとって非常に厳しいものがある。とりわけ,高度経済成長と,それに伴う建設投資の緩慢ない伸びが,企業経営にとって不可欠ともいえる建設業界は,かつてない試練の時代に突入している。このような情勢の変化は,企業努力の必要性と重要性を,ますます高めることになった。さらに,このことは,VE活動においても,何らかの転換を計るべき時期であることを意味している。

当社では,過去に大会論文等で報告しているように,建設の施工部門を中心にVE活動を展開し,成果を上げてきた。しかし,企業をとりまく外部環境の変化と,企業としての多岐多様な問題がクローズアップされつつある状況の中で,VEを,単に施工分野における管理技術としてのみ位置づけるのは得策ではない。そこで,施工分野の実績の拡大をはかりつつ,あらゆる分野のさまざまな問題に対して,VEを合理的かつ効率的に適用して行こうとする考えがなされるようになった。当社における「トータルVE戦略」は,このような背景のもとに打ち出されたものである。

トータルVEは,組織的かつ総合的に,企業利益の改善に貢献することを目的とする。そのために,VE活動の間口の拡大と成果の増大をはかる。しかし,トータルVEの本質は,単なる量的拡大ではなく,VEマネジメント及びVEテクニックの新しい考え方の導入と,その実践という質的な転換であり,この点が,この小論の主題である。

この小論は,以上のような基本的な考え方のもとに,VE活動を展開した結果,この考え方が有効であることが認められたので,紹介するものである。

ステップリスト・マネジメントの方法とは「ステップリスト」という書式を道具として使って,マネジメントをする方法につけた名称です。

ステップリストの書式とは,第1図に示す通りです。

この書式は,こみ入ったマネジメントをするときに,非常に便利なものであり,他にも,考えをまとめたり,新しいことを創造したり,問題を解決したりするときにも,便利に使うことのできる道具です。

一般に,ある目的を達するためには,いくつかの手段があります。そして,目的に対して,適切に手段が選ばれ,それが能率よく運ばれていく場合には,そこに,なにか共通したものの存在を感じます。これが,これから説明するステップリストマネジメントの中身なのです。

従って,この方法が使える対象は,ごく簡単な問題解決から,非常にこみ入った内容をもった対象分野にまで及びます。そして,その対象がこみ入ったものであるほど,この方法は使ったときの威力を発揮します。

すなわち,この方法は,こみ入った対象分野において,従来開発された各種の管理技術(IE,QC,VE,PERT,KJ法等を含んだ幅広い意味の管理技術)を目的に対し,必要に応じて適切に位置づけ,総合的に使っていくことのできる枠組を作りあげる性質をそなえており,システムエンジニアリング等の基本手法としても使える,極めて応用範囲の広い方法です。

この論文では,紙面の都合上,まず,その方法の手順ステップについて述ベ,次に,その各部分の意義と応用について説明します。

また,手順ステップに使うことばの説明は,この方法を多くの人に利用して載くため,できるだけ日常の卑近な例と,ことばを利用するように努めました。

低成長時代のコンシューマーの眼は,高度成長時代には想像もつかなかった程,厳しくなり,それはあたかも,VE技術者の眼のごとき様相を呈してきた。消費者団体の各方面での活動は,それらを代表するものであり,適正価格の追求,信頼性表示の要求,そして「約束された機能」の判定等,企業に対する要求は,激動する経済環境を反映してか,かなり多様なものになってきている。そうした市場環境に対応すベく,企業のVE技術者に対する要求も,少なからず変化してきたようである。激化の一途を辿る企業競争の中にあって,経営者の思考も,トータルコストの見直しへと移行してきているようであり,営業第一線から製造部門まで,その問題は多岐にわたっている。そして,それらの各方面へのVE担当者のアプローチ,アクションが期待されてきているのである。しかし,複雑多岐にわたる問題が,有機的に結びついており,それらを一元化されたデーターベースに表わすということは,甚だ容易ではなく,VEは,もはや個人,グループの技術ではなく,企業体としてのテクニックになりつつあるということである。そこで今回,トータルコストに影響する因子を,如何にして適確に把握し,かつ,それを如何に効率よく商品原価計算システムにフィードバックするかということを検討してみた。

もはや高度成長経済は過去の甘美な夢と化した。

低成長経済を大前提として,企業活動の健全な発展を期して行かねばならい現在,この点での努力と成果が,企業間格差を大きく広げて行くであろうことは,容易に想像がつく。当然,VEに対する要請も過酷なものとなり,より効果の上る手法の登場が期待されている。

当事業部においては,昭和48年頃より本格的なVE活動の実用化段階に入り,第1図に示すように着実な成果をあげて来たが,われわれは49年初頭までを"VEを実施する環境と手法の確立"を成した『第1次活動期』と呼び,以後VE活動は新たな段階である『第2次活動期』に突入したと考えている。この段階では,先に確立した手法と環境をベースに,さらに過酷なVE要請に力強く答えるべく『ワースト指数』という概念を導入したVE活動によって,飛躍的なコスト力の向上を計り,着実に成果を上げつつある。

本論文では,この『ワースト指数』を中心としたVE活動について,当事業部の実例を交えながら,述べてみたい。なお,本論文では図表等を意欲的に取り入れているので,内容把握の一助としていただければ幸に思う。

昨年わが国に石油パニックを起し,大きなショックを与えたいろいろな問題はまだ記憶に生々しいが,石油に端を発した諸問題は石油のみにとどまらず,我々に資源,エネルギー不足を再認識させる一方,「狂乱物価」と言う流行語までつくり出させてしまった。かって例をみなかった大幅なコストアップ攻勢に対し今後各企業が,この「狂乱物価」をどう吸収対策し,いかにして各商品の付加価値を高めるか,又新しい社会の経済変化に,いかにして速やかに同化するか否かによって,今後各企業に格差が生じてくることは明らかであろう。これ等の諸問題に対処すべく筆者の所属する事業部で行なっている種々対策の中で,現在着実に成果をあげつつあるVE活動について以下述べてみたいと思う。なお,本論文中の各種実施例は全て筆者の所属する音響機器事業部の実例である。

昨年末よりはじまった石油パニック,それに続くインフレ,大幅な人件費上昇と,企業は省資源,省力,省エネルギーといったコストダウンに追われているといっても過言ではない。また社会から,この事を,これ程まで強く要請された事も今だかって無かったといえる。社会の体質が変る時に,企業の体質が,それについて改善されないとしたら,その企業は生き残る事は困難といえよう。

一方,かねてからVEにおいては機能の追求を行ない余剰機能の削減,コストの低減,価値の向上という面を各界の人より論じられ実施されて来た。これは,現在の社会が要請している事そのものズバリといえる事である。今こそ企業が,ほんとうにVEを必要とする時であり,企業の経営にVEを採り入れる時期である。そして,企業の中に,VEというものを採り入れる時,それを,どの様な形で運用するのかを,検討するべきであるといえる。

現在,日本経済をとりまく周国の情勢は,激しい変化の様相を,更に,こくしてきております。昨年に始まった,石油パニックと,西欧,米国に進行してきたインフレーションが,更に世界的なインフレーションとして押しよせ,日本が国際社会の中で貿易立国として存在することが,国内コストプッシュ要因の増大に伴なって,大幅に圧縮されつつあり,このままゆけば3~4年間で日本は,完全に国際競争力を喪失する危機に直面してきた,とさえいわれております。

国内では,消費者物価,卸売物価は,まだまだ不安定,公共料金は値上げの一方,総需要抑制策の進行は,正に最悪のスタグフレーションへと深刻化しております。

一般企業においては,生産販売の鈍化,材料等を中心とするコストアップ,人件費の大幅な上昇など………「やがて回復するであろう」という安易な企業経済見通しは,今や,全く否定的であり,最近,特に企業経営の中にVEが大きくクローズアップされてきました。

「この危機を乗り切るためには,VEしかない」とさえいわれております。

かって60年代においては,わが国企業は経済の高度成長の中にあって,ややもすれば売上高の増大,シェアーの拡大などにより,利益の確保と賃上げの吸収を図ってきたが,今後は経済成長が鈍化する中で,賃上げの吸収と利益の確保を実現してゆかなければならなくなった。

さらに,わが国は原材料,燃料等の量的な問題から諸資源・諸エネルギーを含めた,知識集約産業型への構造転換に迫られている。

したがって,従来の高度成長に慣れ切ってしまった経営感覚を断って,経営体制を根本的に再検討していくことが必要であり,今後,企業にとってはソフト・テクノロジーの開発と,導入が非常に重要になることから,経営の質的高度化・効率化は,70年代における最も重要な課題といえる。

そこで,わが国の企業経営における質的高度化・効率化を図るとき,どのような問題の解決が重要なのかを検討してみた。