近年の低成長経済下では,軽量経営の一環として,製品,部品,材料など在庫量を極力圧縮することが要求される。一方,市場ニーズの多様化,新分野への参入など,製品機種は増加の一途をたどり,在庫量の圧縮の妨げとなっている。この打解策として「かんばん方式」による小ロット生産などと並び,「部品の標準化活動」が非常に有効である。
しかし,一般傾向として,各製造業種とも,「標準化」の必要性は十分認識しながら,実際には顕著な推進がはかられていない。その理由としては,各企業の体質,環境にもよるが,次の要因が考えられる。
1) 製品シリーズ毎のモデルチェンジ頻度が異なり,部品の仕様格差が大きい。
多くの製品シリーズ群のうち,特に同業他社とのきびしい競合下にある製品シリーズは,モデルチェンジの頻度が激しく,より価値ある新部品が要求され,採り入れられる。一方,それ以外の製品シリーズは,とり残された形となり,同一機能部品でも仕様,コストなど著しい格差が生ずる。したがって
(a) 仕様の統合が困難で,標準化としてまとまりにくい。
(b) 標準化案を立案しても,取付寸法が異なるなど,手数がかかり,切替手配段階で敬遠される。
2) 標準化案に魅力(コスト面,仕様面)が無い。
1)で記すような条件下で,互換性を考慮し過ぎた場合,既存部品ベースでの「最大公約数的仕様」になり易く,将来構想に欠け,ややもすれば価値が低く,寿命の短かい標準化案(標準部品)となってしまう。
3) 設計者の個人差によるもの。
設計者の個人差によるものとして,
(a) 設計者の好みの差(形,デザイン,方式)が,部品仕様に反映され易い。
(b) 法規制を受ける製品については,関連法規の解釈に微妙な差異があり,部品使様に反映され易い。
(c) 信頼性,安全に対する解釈度の相違,データの不足が部品仕様に左右され易い。
(d) 顧客ニーズのとらえ方に差が生じ易い。
4) 推進体制が弱い。
委員会形式の推進体制では,ややもすると,日常業務が優先し,推進体制が散漫になり易い。
以上,標準化阻害要因について述べたが,これに対する解決策を併記してまとめると,図-1の如くとなる。
これらの阻害要因を乗り越え,一気に標準化を強行することは,特に多種類の製品を対象とした場合,障害が多く,その前段階として「何等かの調整作業」と「魅力ある標準部品」を生みだすVE技法の必要性を感じた。
この結果,対応策として考案した技法が,以下に述べる「仕様平準化技法」である。
今や,第1次,第2次オイルショック等の経済変動の時期を経過し,各企業とも,これら経済変動に起因する収益圧迫を排除する強力な武器のーつとして,VAの有用性を確認し,今後に期待するものも大きいと思われる。また,これらVA活動をサポートするVA技法についても,部品VAから製品VA,工事VA,物流VAに至るまで開発され,VA実施時点についても,現流品から開発品といった具合に多岐にわたって適用されており,VA活動が企業に欠くことのできない,管理改善手法として根をおろしたかのように思える。
しかしながら,前論文「VA活動の効率的運営について」で,VAスピードの指標について述べたように,VA活動の効率化と,実効効果の向上は,早急に解決しなければならない課題となっている。今回は,このようなVA活動に対する要求にこたえるため標準化指向の製品VAを実践して,トータルコスト低減のための「ダイナミックな標準化とVAの同期化」をはかることのできるVA手法を開発したので,そのねらいと,手順について述べてみたい。
日立製作所のVAは,本社VAセンターを基軸にして,工場毎にそれぞれの体質に合わせた活動をしているのが,一つの特徴である。
当工場は,総合電機メーカーである日立の中にあって,ポンプ,コンプレッサーなどの大型産業機械を受注生産しており,VA活動としては,開発VAを中心とした総合VAを活動の基本方針としている。
一般に開発VAは,成果が大きい反面,具体化上のリスクも大きく,そのVA効率(成果/投入費用)を,提案成果でなく,実質成果で評価すると,必ずしも満足すべきものになっていない。
この問題に対処するため,当工場では開発VA以降のVAのあり方として,単なるフォローアップの域を超えたVA技法を開発し,一連の総合VAシステムとして確立し,戦略的に展開することにより,VA効率の向上をはかってきた。
以下その考え方,実践方法について述べる。
本論は,VE導入が遅れているといわれた総合建設業の当社が,VEを導入している先行同業他社に学びながら,特に1st Look VEの実施を試みた経験をもとに,われわれの業界にVEを導入し,日常的に活用するための,組織の運営の方法について考察を加えたものである。
当社は,常々,建築の設計と施工,建築と設備の総合的請負の優位性を主張してきたが,巨大な商品である建築にVEを導入することで,この一貫した請負・生産体制のメリットが,一層明確になったと考えている。
導入は,他の事例に照らしても,いささか特異な経過をたどっている。本論では,この特殊な経験と,そこに現われた状況の中から,できるだけ普遍的な方法論を導き出すことを心掛けた。
建設作業所におけるVE活動は,さまざまの制約条件のもとにあり,これを一つひとつ克服していくことは,建設業の特色を生かしたVEを生み出すことになる。建設作業所は全国に散在し,一品受注であり,ーつとして同一条件のものはない。また移動性があり,工期も6ヵ月とか1年という比較的短期間のものが大部分である。編成メンバーも1人から数名と少人数であり,その都度,編成替えが行なわれる。工事管理,原価管理はもとより,作業所経営の大部分は,作業所長に委ねられている。このような条件でVEを実施するためには,ベストをねらうより,ベターなものを数多く取り上げるのがよい。この考え方に基づいて,当社では「3時間VE」手法及び,VE対象選定のための「VE計画会議」を作業所において実践していることは,第6回および7回のVE全国大会で発表したとおりである。
現在,新しい作業所においては,次々とVE改善が行なわれ,その実施例はVE部門に報告されたもののみで,およそ,2,000件に達している。これらは,定期的に評価され,よいものは「VEスポット」にまとめられ,全作業所に配布されている。しかし,「VEスポット」はVE実施例のごく一部分であり,これらを含めたVE実施例は,今後も増え続けていくものである。
以上のような特色と実績を踏まえて,作業所VE活動をさらに実のあるものにし,質的にも転換をはかるためには,この莫大な実績データとしてのVE実施例を,縦横無尽に使い切ることが,きわめて重大な課題となる。VE情報としての手持ちVE実施例を,システム的に活用することは,今後の作業所における工事管理に欠かせないことになると思われる。また,とくに少人数作業所において,従来の「3時間VE」を補完する手法としての「担当者VE」を活用することも有効である。以下に,主としてVE情報側面から作業所VE活動の現状と問題点を述べ,その解決策と要点を工事管理に即したVEの展開として詳述する。
オイルショック以後,高度成長経済から低成長経済に大きく転換し,企業経営の体質改善を余儀なくされてきた。また,企業をとりまく環境は,かって経験したことのない状態『モデルなき時代』に突入しており,真に厳しい情勢となっている。
これらの対応策の一環として,内部努力により利益改善の達成(コストダウン)が企業トップにおいてますます認識され,重要視されており,その最適手段としてVE活動の一層の充実展開が押し進められている。
このような厳しい情勢の中,中期計画を前提としたVE活動の一考察について述べる。
当社は東京に本社を置き,東京・神奈川に6事業所,全国に約10の地方工場を有し,通信・コンピューター・電子部品及び家電を4本柱にして,それらの装置及び部品を製造,販売するメーカーである。
当エレクトロメカニカルディバイス事業部は,東京三田事業所に属し,主に交換機及び通信用の電磁リレー,封入リレー,コネクター並びに情報端末機器を製造し,それを日本電信電話公社,一般民需,輸出向けに販売を行なっている。
当社におけるVEは,昭和36年に購買を中心にしたコストダウン技法として全社に普及し,昭和38年に,VE委員会制度が発足し,全社的にVE活動が展開され,現在は,日本電気コストコンサルティング(株)の指導のもとに,VI技法により年々大きな効果を上げている。しかし昭和48年の石油ショック,物価狂乱を契機として,これまでの高度成長志向型から安定成長適応型への企業の体質転換をすみやかに行なうことが必要になった。このような状況下において,量的な拡大を前提とした省力化,生産性の向上という従来のコストダウン技法は封じられ,この手詰りを打開する方策として,VEの新展開が不可欠となって来た。
すなわち,限られた人員,資材,資源を最も有効に活用工夫するために,製品別を基準とした,営業,技術,製造を結んだタテ糸の改善,また,各部門の効率化という視点からのヨコ糸を通した改善,すなわちヨコとタテとがおりなすマトリックスの総合的な改善を行なうべくトータルVE活動が開始された。
以下,この活動について概要を述べる。
今や,低経済成長下における各企業のVA活動に対する期待は大きく,収益向上の強力な武器として,VA活動はより活発に展開される傾向にある。
しかしながら,一方では,製品へのVA案適用遅れ,VA案検討不足による実質効果の目減り,さらには,VA分析期間の長期化等,VA活動自身の非能率等の理由により,「時間をかけた割には儲からない」という批判もある。
このようなVA活動の効率的運営という課題に対しては,従来より,VAプロジェクトの計画とフォローアップに際し,「VA効率」によりVA投資効率効果を測定してきたが,今回,更に時間的効率指標を設定することにより,機会損失を最小とし,実質効果を向上させてVA活動に対する信頼度を高めるための管理手法を確立した。
以下,これらVA活動を効率的に運営するための管理手法について述べてみたい。
当社における管理技術は,昭和35年以降,これまで製造を基点として営業まで,その総称を「品質管理」の名のもとに,導入と推進をはかってきたが,その柱は,QCであり,IEであった。その間,市況の変動により,社内の緊急政策の実施等により,推進の濃淡はあったにしろ,長期的にみれば,着実に,その定着が,はかられてきた。
ところが,ご存知のごとく,昭和48年の石油ショック以後,特に消費構造の変化により,その対応のため社内における政策も急転換が始まり,当然,管理技術の推進も転換がせまられた。その一つは高品質低価格商品の造出であり,他の一つは,企業内部の効率化,いいかえれば,"贅肉取り"であった。前者については,表現をかえれば,お客さまのニーズをとり入れ,もっと次元をあげれば,お答さまの潜在需要までも,開発し,しかも,お容さまが,安く感じる"値ごろ"商品を開発することであり,後者については,いかなる不況といえども「赤字を出すことは,罪悪」であり,当然,商品個々について,最適利潤を確保することが,必定とあれば,商品個々のコストを下げることに,全力をつくすと共に,社内組織の効率化をはかり,単なる社内経費の引きしめのみならず,全社員の効率的活動による,企業内部のトータルコストの低減が,必要であった。
当社においては,昭和46年より,ワークショップセミナーが開始され,VEエンジニアが,事業部,協力会社で,主としてハードのVEを中心に活動をしておったので,幸いにも,石油ショック後の急激なコストダウンの要請には,何とか答えられたものの,企業内トータルコストの低減については,新企画が必要であった。それまでにも,社内において商品個々のVEの進展にともない,製造工程設計のVE,生産管理業務のVE,新商品開発へのVE等が,必要にせまられて,研究されつつあったが,いろいろの問題があり,苦労している時でもあった。しかし,今度は,会社トップからの要請であり,全社あげて取りくむテーマであるだけに,全社活動としてのVEのとらえ方を真剣に検討した結果,ソフトVEとしての展開をはかることを決心した。そして既に述べたごとく,事業部には,ハードのVEが思想的にも,手法的にも定着しつつあったので,一層の推進を考えるとしても,その焦点は,当然,会社の中枢である本社業務諸部門と営業部門であった。
当時の周辺の状況は,すでに市況の急激な変動にともない,"発想の転換をはかれ!!" "原点にかえって考えよ!!"と,さけばれている時であっただけに,トップの「今までの高度成長時のままの,会社体質(=考え方)では,非常に危険であり,その転換をはかれ!!」という強い要請は,全社員に良く理解されていたものの,では,具体的に,どう転換するかについては,精神的理解にとどまっている時でもあった。そこで,われわれ推進担当部として,転換の方法は,何も一つに限ったことではないが,われわれとしては,せっかく導入し,浸透しつつあるVEの幅を広げ,レベルアップをはかるため,VEの本質にたちかえり,その思想の展開と活用の徹底を,全社に拡大することにより,トップの要請に答えようとし,その結果,まとまったものが,ソフトVEによる推進であった。
VAが企業経営活動の一環として,極めて重要な役割をはたすようになり,各企業において,VA (VE)センターと呼ばれる組織VAを推進する専任部門を有するところが多い。これらVA専任部門の持つ機能は何か,何をすべきかを明確にすることが,VAがより効果的な活動となり得るか否かの鍵であろう。
VA活動そのものを,専任部門の専有物だと考えるとしたら,そこには,生きたVAは育たないであろう。VAとは,1つの行動によって生まれる価値を,より高めるための手段であり,行動とは,大げさにいえば,企業人すべての各自の職場における業務そのものである。つまり,日常の個々人の業務は,その組織の目的に沿って,より効果的アウトプットを求めて行動しているし,その具体的手段として,VAを活用しなければならないと考える。
VAセンターの仕事は,各職場が持つ機能を理解し,より効果的なアウトプットを出すよう,指導することであり,VA専任者とは,VAスタッフであるといえる。
当工場においても,VAセンターと呼ぶ組織があるが,特に,工場という生産に直結した部門内において,スタッフは,どうあるべきかを,具体的活動事例を上げながら,述べてみたい。