現下の厳しい経済体制下において,外注企業は親企業の指導育成に過渡に依存しているだけでは,変化の激しい経済・社会状勢にフォローして行けない。外注企業においても,経営管理に関する手法,例えば,VE,IE,QC,その他ORなど,マスターすることに努力し,利益を自ら計らねばならず,また他面,発注企業としても経営上不充分な点があれば,外注企業を指導して行く必要があると考える。
発注企業は,現在取引中の外注企業群に対し,その近代化,その他購入資材費を極力低減させる必要性から,VE手法によるコスト・ダウンを重視していることは明白なことであり,外注企業の窓口としての購買部門に,独創力,コスト・ガイド,その他,経営管理手法を身につけたVE専任者を置いて,外注企業の指導育成に当っているのが,一般的に見られる現象である。
以下に,製造工程改善のためのVEを中心として,創造性開発訓練としてKJ法を折込み,前記VE専任者が行なったVE教育指導の一端を述べる。VE推進活動を行なううえでの一助となれば幸いである。
近年,社会経済の変動は,一段とその激しさを加え,国内外を問わず,荒波に直面している。建設産業においても,労働力の払底と労賃の高騰,生産性の遅れに加えて,金融事情の悪化などにより,企業収益の減退が余儀なくされている現状である。一見,はなばなしく感じられる建設産業も,他の装置産業(自動車,電気等見込み生産を行なっている産業)に比べると,企業の近代化は,非常な遅れを見せ,技術の改革は遅々として進んでいなかった。
体質改警にあたり,科学的な管理技法の導入も,いくつか試みてはいるものの,業態の特殊性にさえぎられ,他産業に見られる程,定着しているものは少ない。企業の経営効率を高める1つの手段としてVEが登場し,建設業に,その適用面を見出したのも,数年前にすぎない。
建設企業が過去の因習を打ち破り,企業改革に乗り出したのは,まだ新らしい事実であり,その息吹きは大きくなりつつある。生産面に技術革新を展開することと,経営面において体質改善を行なうことは,必須の急務であり,業界あげて必死の努力を続けている。
ここに産業能率短期大学のご指導を受け,建設業の問題として導入以来,諸方面にわたってコストダウンの効果が大きいことを知り,米国キングスコット社のA・J・デリソーラ氏の実践活動を結び合わせ,われわれなりに,適応性を求めて手法を展開している。
今回は,これらの実績をもとに,建設業での適用と今後のあり方について述べたいと思う。
現在の電気業界における競争は,熾烈をきわめ,新技術の開発,コスト開発の優劣は,そのまま製品の販売に大きく影響を与えております。
このような厳しい市場をはいけいに,コストダウンの手法として紹介されたVEは,各社こぞって導入したことは当然であります。
当社においても,このような状勢のもとに,昭和38年,購買部門にて,購入する部品のコストダウンを計ることを目的として,VEを導入し,その任としてVE事務局を,購買部門に設置致しました。
購買部門に設置された理由は
(a) 当社製品の製造原価中に占める材料比率が70~80%に及び,その90%を外注工場に依存していること。
(b) 市場より各種情報の収集が容易であること。
(c) 外注工場の専門的技術を活用出来ること。
(d) コスト情報がはやく,問題点をとらえやすいこと。
(e) 製品開発が,モデルチェンジ(一部機能の改造)的なものが多いこと。
等の理由によります。
株式会社日本製鋼所においては,広島製作所が昭和42年11月VEを導入,半年後,室蘭,東京,横浜の各製作所も導入し,全社的なVE活動が展開されようとしている。
中でも広島製作所では,VE推進満3ヵ年を迎え,7回に及ぶセミナーと,ON THE JOB TRAINING 方式により,養成されたバリューエンジニアの総数は,230余名に達し,春秋2回実施されるセミナーの期間を除き,年間,常時,6人編成のチームを2チーム活動させ,製品の価値の向上とコスト低減に取り組んでいる。
このような継続的VE活動の原動力となっているものは,次に述べるトップの方針よろしきを得た,設計管理者を中心とする積極的姿勢であることは,論を待たないが,VE推進マニュアル活用を通じて,設計ライン,VEチームメンバー,これに助言するスタッフの三者が,よりよいコミュニケーションによって結ばれ,総合されたチームデザインが生れていることも,忘れてはならない。
このマニュアルと,その背景について,動機づけを中心に,主要項目につき解説すると共に,今後のVE適用範囲とタイミングに言及し,将来のマニュアルの姿と,バリューエンジニアの使命について,述べることとする。
最近は,VEあるいは価値分析に対する反応が非常に多い。「価値」という問題に,非常に関心がもたれ,バリューエンジニアという専門家が養成されつつある。企業内におけるVEは,アレンジされた形で推進され,定着発展しているが,もう一度,本来のVE理論を基本よりふり返り,再確認し,現在の企業内におけるVEの問題と対策及び今後の方向づけの指針の設定をしてみたい。
しかるに
1) VEの適用局面
2) チームと組織化
3) VEの専門化
という問題を深く,企業の体質に合わせてボーリングし,定着化する必要がある。