本年1月に実施された日本VE協会主催の第12回VEリーダー資格試験は4,057名の合格者を発表したが、今年も合格者数の75%を建設業とその関連業が占め、企業別合格者数も上位20社のうち建設業が15社、総合重機械メーカーや建設コンサルタントの関連業を含めると実に19社となり、建設と関連業がほぼ独占する形となっている。
この事は諸官庁のVE提案制度の導入と、企業評価にVE能力を加えたことや、昨今の民間分野での受注においても、VE手法の活用が欠かせなくなってきたことが、建設の関連業界にVEL取得の異常な高まりを持たれている要素になったことと思う。
他方、建設業界での受注競争は、相変わらずの明日無きコストダウン競争の状況にあり、この業界での生き残りをかけた戦いは、今後益々熾烈なものとなることが予想される。
本論文は、VEの基本理念を建設会社に導入し、VELを積極的に活用の上、実り無きコストダウン競争からの脱却を図り、合理性のあるコストダウンシステムを作り上げ、過酷な現況に対応できる企業体質を目指した、VE実践システムの構築について述べる。
「業種業態に合ったVA/VE」即ち、実践的管理技法を求める要望は強い。そこで中小企業にVA/VEが浸透しない要因を考え、VA/VEコンサルタントの立場で、新たに企業トップが経営戦略の道具のーつとしての「VA/VE戦略」取り組みを意図した場合の、導入モデルを提案する。(第1報は総論編であったが、第2報は各論編として纏めた)
前段で浸透阻害の背景を考え、本論文の取り組み方向づけをし、「実践ステップ」のモデル化の概念を示すとともに、経営課題としてVA/VEの位置付を明確にした。
本論で、VA/VE導入手続きをステップ分けすることにより、VA/VE管理技法の活用具体化方法を取り組み時間に従って述べ、企業トップや従業員がVA/VEを理解し、本提案を取りあげていただける動機付工夫をした。
最終まとめはVA/VE管理技法が、お客様志向のものであり、その前提での筆者の今後の目標を確認し、決意表明をした。
VE活動の成果を確実なものとし、VEの考え方、技法を会社内に定着させていくためには、VEプロジェクトを企画推進するのみならず、プロジェクト終了時に活動を振り返り、次のプロジェクトの内容充実を図っていくことが重要である。
そのために、「活動の振り返りチェックシート」と「4Tチェックシート」によるプロジェクトの評価を行うことにより問題解決を図る方法を創出したので、紹介する。
この2つのチェックシートは共に、プロジェクトメンバーが記入するもので、プロジェクトを企画したり、VEをガイドする側にとって、そのプロジェクトでのVE理解度を定量的に知ることができる。また、プロジェクト企画推進上の評価は、次の活動企画に役立つ。
VEは,わが国に導入されて25年余となり,各企業の利益確保に貢献をしつつ,大きな発展を遂げたが,今後VEの"真価"を更に発揮しなければならない状況にある。
本論文は,VEの今後の課題について,
(1) VEの原点ともいうべき,「企業経営におけるVEの位置づけの明確化・VEの基本ステップの確認・VEの原点の再認識」をして,
(2) VE発展の最大のカギとなるVErが,「VErの"あるべき姿"を確認し,それを目指して,努力を続けること」である。
と考え,関係文献を参考にして,筆者なりの考えをまとめたものである。
昭和35年,米国から日本に上陸したVEは,近年多くの企業で導入し,その実効果は周知の認めるところである。なお,開発された技法・手法も多く,VE論文として全国に公表・発表されているものだけでも,200編を数えようとしている。
欲しければ,直ぐにでも手の届くところに参考書がいくつもありながら,なかなか思うようにVEを実行できず,実施したとしても,単なる形式的動作に終ってしまい,VEによる真の効果創出にまで至っていないところが,未だに数少なくはないと思われる。企業間競争は熾烈度を増し,性能面,納期面,信頼性面等,各企業とも,殆ど,その格差はなくなりつつある。そこで顧客,メーカーの双方に利益をもたらすため,できる限り価値を向上させ,できる限り安く作りあげることを,必須の条件と考えなければならないし,かかる観点から,VEの実施は避けて通れない関所と認識しなければならない。利益の下降,目標原価の未達成,あるいは新製品開発および製品転換の遅延等,その原因は「成せば成る」ことを知りながら「実行しなかった」までのことである。またその源流をとさかのぼると,ただ単なる「忙しいから」,「他人どころではない」といったものであり,「上から指示された仕事が先だから」式の「錦の御旗」として,まかり通っていたのでは,企業のじり貧は当然といえよう。企業の目的は「ますます発展と社会に貢献する」ことにあるから,やはりVEは,何が何でも強い意志でやり通さなくてはならないのである。
日常業務に追われる時こそ,問題点を発見しやすいし,その時期こそVE実施の絶好の機会なのである。よって本技法は,あえて多忙時のVE実施に焦点を合わせ,記述するものである。
本論文は,マックス・ウェーバーの三つの合理性と実践的三段論法を基礎として,VEのモデルを構成し,VE理論の研究を行った。また,最近発展しつつある設計学の中の設計実験をVE理論の研究に適用し,機能概念および属性概念の関係を論じ,機能と属性を結びつける因果合理性の内容を検討した。その結果,設計カタログの有用性に言及した。VEの発想過程は,マルコフ過程であり,機能と属性の両面からの発想の必要性と,それを容易にする研究とは何かを明らかにした。
1.1 鈴鹿工場の紹介
当社は総合電機メーカーであり,鈴鹿工場は回転機部門の中核をなす工場となり,現在の従業員数は約1,500名である。
製造品目を大別すると
① 誘導電動機
② 同期発電機
③ 可変速電動機
④ 応用機器
⑤ 電源装置
⑥ 誘導炉
を生産している。
1.2 当社のVAの特長
我々製造メーカーにとって,基本的な事は「図面があるから仕事がある」のである。
部品を作るには図面が必要である。次に生産準備部門での製作方法の決定,治工具の決定,資材の発注,部品製作工程での管理,品質管理,工程管理,在庫管理等が行われる。
このように1つの部品が製作過程でたどるそれぞれの処理ポイントで,それぞれの間接費用が発生する。
製品コストの内,間接費の占めるウェイトが大きくなっており,直接費のみに着眼するVAでは,かえって間接費が増大する場合も起り得る。
従って,直接費の他に間接費も削減させる必要があり,そこに着眼するのが当社の特長である。
当社のVE導入は,先進各社より大分おくれ,昭和49年における全社でのコスト低減緊急指令にもとづいて行なわれ,以来5年を経て全社的な成果を確保するまでに至っている。
昭和47年に始まった全社的なTQC推進活動の中で,VE導入はトップの強いニーズにより組織化されてスタートしたが,導入に当り,TQCの考え方にもとづいてPLAN,DO,CHECK,ACTIONのサークルをまわしてゆく方法がとられた。このような姿勢のもとに,本社センターと,各事業部との分担する役割を明確にしてVEが導入された。
この論文は,後発のギャップを解消するために,VE導入の考え方・すすめ方をTQC推進の中で計画化し,PDCAのステップをふみながら成果に結びつけた過程を報告し,ご批判を乞うものである。
産業界の発展とともに,近年,特に協力工場の戦力と能力が重要なポイントとして,認識されてきました。
これは親企業としての単一企業でなく,協力工場を含めた企業集団としての総合力が企業の存続発展の「決め手」であるという事が,激烈な企業間競争の体験の中から,切実な問題として感じてきたからです。
このため協力工場の体質改善強化,生産性向上に対する努力が行なわれており,その有効な武器として,QC,IE,VEなどの管理技術が駆使されています。
しかしながら,これらの管理技術の中で,VE活動については,QC,IEの普及定着度との比較において,残念ながら劣っていると認めざるを得ません。
これまでの日本のVE活動の歴史は,親企業が中心であり,VEは親企業がやるもの,あるいは,一部のスペシャリストがやるもの,としての風潮が大勢を占めていたと思います。
このような認識と現状のままでは,親企業と協力工場にとって,今後の企業存続をも左右する,重大な問題です。この論文では,親企業および協力工場にとって,"協力工場のVE活動が何故必要であるか" "VE普及定着化を阻害しているものは何か" "VE普及定着化のための進め方と留意点"について,その考えを述べてみたいと思います。
現下の厳しい経済体制下において,外注企業は親企業の指導育成に過渡に依存しているだけでは,変化の激しい経済・社会状勢にフォローして行けない。外注企業においても,経営管理に関する手法,例えば,VE,IE,QC,その他ORなど,マスターすることに努力し,利益を自ら計らねばならず,また他面,発注企業としても経営上不充分な点があれば,外注企業を指導して行く必要があると考える。
発注企業は,現在取引中の外注企業群に対し,その近代化,その他購入資材費を極力低減させる必要性から,VE手法によるコスト・ダウンを重視していることは明白なことであり,外注企業の窓口としての購買部門に,独創力,コスト・ガイド,その他,経営管理手法を身につけたVE専任者を置いて,外注企業の指導育成に当っているのが,一般的に見られる現象である。
以下に,製造工程改善のためのVEを中心として,創造性開発訓練としてKJ法を折込み,前記VE専任者が行なったVE教育指導の一端を述べる。VE推進活動を行なううえでの一助となれば幸いである。