VA活動も定着し,現製品の改善から,市場調査を含めた製品企画段階から総合力を結集し,体系的アプローチでもって製品企画を行い,価値ある製品を造る開発VAに焦点が移行している。豊かさからくる消費者の個性の主張と,自分の好みから選択したいという気風が強くなると同時に,伸びの少ない市場をめぐって製品競争が激しくなる。これは製品企画の競争であり,他社製品との差別化を進め,より購買意欲を高め,選択の探索を高めさせるポイントづくりが決め手となる。一方,マーケットセグメントをはかり,個々の消費者の要求に応えるきめ細かな製品企画が求められている。なお,1980年代の世界経済は不安定で,複雑で不透明な時代であるといわれている。特に,戦争がいつ勃発するか不安な中東状勢,サウジアラビアおよびイランが西側より離脱,1985年以降のソ連は海外からの石油輸入依存等により石油の問題は益々複雑になってきている。従って,企業経営においては,単に固定的で消極的な減量経営で対応するのではなく,弾力的に人,金,物,技術を組合わせ,活力と,ゆとりをもたせることが必要である。つまり,生産体制や間接業務の合理化による余剰人員の戦略的重点投入をはかり,顧客ニーズの追求,材料動向に対する情報収集に力を入れ,顧客が要求する"価値を最低コストで達成する一価値の創造"に組織的な努力でもってアプローチし,上記情報を十分に活用し,省資源,省エネルギー化を考慮した製品を開発していかなければならない。従って,省資源,省エネルギーに寄与する製品開発のアプローチと題して,体系的な製品企画のアプローチ,および省資源,省エネルギーを含めた機能評価のあり方について述べてみたい。
商品企画は,その商品のライフサイクルでの位置づけにより,展開のしかたに多少の相違はあろうが,違わないことは,その商品ができるだけ多くの顧客に受け入れられ,かつ企業として,さらに多くの利益を確保することである。商品企画は市場動向,顧客のニーズ,社会的ニーズ,マーケティング,技術開発力,製造能力等,多角的に最大の努力で検討されるであろう。また同業他社との競合のために仕様,コストダウンの検討が,企画段階で行われるのは当然のことであろう。ただ忘れてはならないことは,短期的な利益追求だけではなく,その商品のライフサイクルの長期化,すなわち衰退期を先に伸ばすような商品延命策を意識的にはかり,長期にわたる利益確保を行うことである。
売れる商品,商品延命のための適切な商品企画を目指す最大のポイントは,顧客の潜在的なニーズは何か,マーケット拡大の要素になる新しい顧客はだれかを導き出すことであろう。本論文では,このポイントに焦点をあて,VE思考によりアプローチする方法を述べる。
周知の通り,石油エネルギーの需給バランス,人工構成の急激な変動等,さまざまな環境下の今日,とりわけ技術立国をめざす日本にとって,知識労働力の生産性向上は必要不可欠であり,設計部門においても,より効率の高い仕事が要求されている。特に売れる商品を創り出す事は,効率の高い仕事をする重要な側面である。これ等は現情勢下においては,What to design-何を創るかという商品企画の優劣に負うところが極めて大きい。
しかも,それをどんな方式で具現化するかが成否の大きな鍵をにぎっているといっても過言ではない。以上の観点より,客先要求事項分析に基づき,方式を選択する企画設計段階のVEについて,何をどんな方式で設計するかを中心に紹介したいと思う。
低成長時代における商品戦略として,価値ある商品を短期間に開発し,市場に提供することは競争に打勝つための絶対条件である。新製品の開発は市場ニーズ,顧客要求等のマーケティングリサーチから開発方針を決定し,商品として生産されるまでには数段階のステップを通らなければならない。開発方針は商品の機能,売価,市場性,収益計画,技術的難易度,開発時期,開発予算,設備投資等の検討がベースとなって決定されているが,開発方針審議時点では,各項目に対する具体的裏付けに不安定要因が多く売価,収益計画の基本となる目標コストは企業経営,商品販売戦略からトップポリシーとして決定されるケースが多い。従って新製品開発ステップの最終段階において,計画の収益を確保するために目標コストの設定と,各ステップにおけるコスト管理を行う必要がある。
近年顧客ニーズが多様化し,市場におけるメリット競争が激化しているため,競合他社品を差別化できる高メリットの商品を,短期間に開発することは販売戦略上重要である。そのためには,開発ステップを最短のコースに設定し,重複した研究試験期間は避けなければならない。従って,開発VAをできるだけ源流に遡って実施するとともに,各ステップに応じたVAを投入することにより,目標コストを管理することが必要になってくる。
高度成長経済,低成長時代に続く80年代は"格差の時代"とでも呼んだものだろうか。高度成長から低成長への変化を,減量経営によって乗りきった各企業は,今また大きな試練の場に立たされようとしている。同じ時に,同じ土俵で,同じように企業活動をしながら,大きく格差のついてしまう厳しい時代の到来といえよう。この格差の要因こそ,われわれが真剣に取組まねばならないVE活動のターゲットであろうかと考える。
当事業部においては,昭和47年からVEの本格的活動に着手し,多くの成果をあげてきたが,さらに厳しい環境が予想される80年代においても"企業業績の飛躍的な向上"を実現すべく意欲的に進められている。
本論文において紹介しようとする『0.5 Look VE』は,"コスト低減が困難な状況下で業績向上を達成するためには,売上増加をダイレクトに実現する飛躍的な機能向上をなしとげる必要がある"という骨子にそって展開されている。80年代前半におけるわれわれのVE努力は,この方向に傾注されつつあることを述べながら,『0.5 Look VE』の考え方について紹介し,諸氏の賛同が得られればと思う。
なお,本論文においてはイラストを意欲的に取入れたので,内容把握の一助にしていただければ幸いに思う。
4月になると,各社とも社長が新入社員に対し訓示を行う。入社してからの心構えが主なる内容であるが,中には企業目的,行動指針も「製品供給の義務」「人類の幸福・福祉への貢献」更に,直接的に「利潤の追求」などと示される。いずれも社内事情を反映したもので,企業経営を左右する内外部要因はあまりに多いと言えよう。
こうした状況におけるVA活動を考えてみると,各企業のおかれた状況において何をやるべきか,その活動の位置付けを明確にせねば「何んでもVA」となってVA活動自体も焦点を失い,盛り上がらないものになる。
このような観点から,製造業である当社は下記する理由によって製品・製造VA,部品VA,物流VAそれもファーストルックVA (1st look VA) に的を絞り,開発活動の中にVA活動を仕組化した。本稿ではその一端を紹介し諸兄の批判を仰ぎたい。
(1) 家電商品はユーザーの巾が広く要求が多種多様であり機能の選択が厳しい。
(2) 競合会社が多く,適正な市場価格における差別化した商品でないと売れない。
(3) 製造原価に占める直接材料費の割合が高く,構造が決定される設計段階に,衆知を集める必要がある。
(4) VA導入後の歴史が浅く,金額評価できるVAが全体のコンセンサスを得やすい。
(5) VA活動がダイレクトに企業業績に反映され,参加者のモラルアップにつながっていく。
VAはもはや個人,グループの技術でなく,企業経営活動の一環として極めて重要な役割を占め,企業経営の方針に基づいた組織的な活動へと発展している。
一方,VA対象もハードからソフトへ,2nd Lookから1st Lookへと,製品の生まれる源へさかのぼる傾向にある。特に新製品の開発は経済の低成長時代にあって,企業の利益を確保する重要な柱として位置付けされている。
このような経済下で新製品の機動的開発を図るためには,開発VAのアプローチが必要である。当工場における新製品開発の実態を見ると,日常行われている開発業務と開発VAは,必ずしも効率よい運用がされているとは言えない。
今回これらの点に着眼し,開発手続業務にVA的要素を入れて改善し,新製品開発ジョブプランおよび開発VAジョブプランを確立した。
新製品開発に当っては,①性能,②開発期間,③コストの3つを管理する必要がある。しかし,現実には他社との競争上,新製品を早く市場に出すことが要求されるため,性能,納期が優先され,コストについては多少の不満があっても,そのまま出荷されることが,往々にしてある。
ところが,コストは開発,設計段階で"その大部分"が決定されてしまうので,利益機種を開発しようと思えば,その時点でVAを適用し,徹底したコスト管理を実施することが重要である。開発VAを展開するに当っては,機能展開の方法,機能評価法,アイデア発想法など,各種の技法上の問題があるが,それにも増して重要なことは,各メンバーがプロジェクトに対して,どれ程真剣に取り組む気持を持つかである。その大きな要因の1つに「目標コストの決め方」がある。
本稿では,目標設定の仕方と,その管理について,以下の項目に従って述べてみたい。
(1) 製品の目標コストの合理的な設定方法
(2) 目標コストの配分方法(機能コスト配分と個人別目標配分との融合)
(3) 目標コストの管理体制
なお,本稿における新製品開発とは,今まで世の中になかった製品を開発するという意味ではなく,従来の機種系列の1つとして開発するとか,コストダウンを狙ったモデル・チェンジとして新製品を開発するという意味で使用している。
景気の低迷と円高とによって,わが国の経済は低成長の時代に入り,総需要の減退から深刻な景気の悪化をまねくに至って,各企業間の競争は,ますます激烈をきわめ,その環境は,非常に厳しい状況下におかれている。
このような状況にあって,企業の目的である利益確保をはかるため,各企業はVAを単なる改善の手法としてのみでなく"経営戦略"の柱として位置づけ,全組織を結集して取り組み実績を上げている。
しかし,現在,新製品開発のためのVAアプローチ技法はあっても,それが新製品企画の市場調査や新規機能の発掘・拡大のツールとしては生かされていないのが実体のようである。それは,まずVAの考え方の中心をなす機能分析が,うまく生かされていないからである。これは使う側での勉強不足のために"機能"についての考え方に幅がなかったし,柔軟な考えが持てなかったためと思われる。
これらの背景をもとに,ある分野における商品に関しては,製品企画への実用度の高い手法の開発と確立を行ない,その有効性が確認されたので,ここに紹介する。
本手法は,新製品の中でも,現製品をもとに大幅に改善されるものを対象としたものであり,その主な内容としては<情報収集にもとづく顧客要求機能を,そのもっとも関係の深い各機能分野にとり入れ,使用者機能及びメリットを開発していく-川下型開発法>と<各機能の分解・組合わせによる方法と基本機能から使用者機能を展開していく-川上型開発法>をドッキングして展開する,商品企画に対する機能分析・分解・組立手法である。
現在のわが国における企業競争は,同業他社との競合だけに対処しておれば,企業の存続が可能であるといった時代ではなくなり,他の業界はもとより,国際競争をたえず意識しなければならないのである。
国際競争を意識したとき,部品業界は,現在の完成品メーカーの要求仕様,最優先の考え方を捨て,要求された機能を果すため,最も価値の高い製品を完成させるために,完成品メーカーと対等の立場での協力関係を確立し,VE活動を実施することによって,共に国際競争の勝利者となることができると確信するものである。
そのためには,完成品メーカーと部品メーカーの製品企画が,同一方向を指向していることが,最も望ましいことである。
しかし現実は厳しく,国際競争力のある製品においても,多くの機会損失を発生させており,この点の改善が必要である。
今回,VE研究論文を発表する機会を得たので,ここに私の考えを発表し,完成品メーカーの賛同を得たいと考える次第であります。