論文カテゴリー: 開発設計とVE 57件

商品を開発して顧客に提供する迄のプロセスとしては「何を作るか」と「どのように作るか」という流れがメーカーサイドには有る。その中で「何を作るか」に対応する形でのVAの適用は,昨今,マーケティングVAとか,バリューマーケティングとか言われて商品コンセプト構築段階でのVA技法として,開発されつつある。

一方,「どのように作るか」を検討する段階でのVAの適用は,製品開発段階から,0 Look VAとか,1st Look VA という形で積極的に実施されており,当社においてはほとんどこの面に力点が置かれたVAが展開されている。この製品開発段階のVAにおいては,ともすると構造,方式等の面に検討の中心が置かれ,生産性,組立性を考えた上での分析が,ないがしろにされていた。これは,生産性とか組立性とかが漠然としていて適当な評価基準なり,改善指針が無く,つかみ所の無いことに大きく起因するものと思われる。本論文は,従来比較的軽視されがちであったこの面に焦点を当てて,組立性による機能評価を実施し,それに基づいてアイデアを抽出し,製品構造を決定する技法であり,これを適用することにより,生産性が良く,ロボット組立等の自動組立にも適し,信頼性,保守性にも優れた製品を開発することを意図したものである。

特に家電業界における機能・コスト競争は熾烈を極めており,市場での競争に勝ち残るためには,商品企画段階のVEが重要であることはいうまでもない。

こうした認識により,各社においても0.5-LooK VE,更に0-LooK VEと,その手法も変化してきた。

しかしながら,VEステップ上からは商品の差別化や価格ランクの差は考慮されず,同ージャンルの商品群は,基本的には同ーの機能系統図によって把握することになる。

数年前の商品と現在の商品の機能系統図の差,あるいは10万円の商品と20万円の商品のコスト構成が,図のように大きな差があるにもかかわらず,機能系統図の差はほとんどないといって過言ではない。従って,その商品固有の特徴を出して行くためには,もっぱらアイデア発想のやり方にゆだねられるきらいがある。

新商品を企画し,開発設計を進める段階で,VEをより一層効果的に運用するためには,VEステップの過程の中で,商品差別化が自然に検討できるようにすることが望ましい。

こうした観点からVEを見直し,機能定義・機能評価のステップをより拡大して分析していく手法を『拡大VE』と表現し,展開してみる。

オーディオの市場は,使用用途の拡大,新機能の開発等により,顧客のニーズにうまく対応しながら,その売上げを伸ばしてきた。

一方,商品の普及率の向上と成熟化により,業界の競争は,ますます熾烈をきわめ,一段と厳しい展開となりつつある。

厳しさを増す市場ニーズは,同時にユーザーの価値観の多様化と商品のライフサイクルの短命化を促進し,それに即応した商品の開発が望まれる。

ステレオ商品のカテゴリ一変遷を(図-1)に示す。商品の多様化とライフサイクルの短命化を物語っている。

オーディオの普及率は,すでに60%を越え,経済情勢も世界的な不況のなか,消費者の動向は変化し,

(1)今すぐどうしても必要なものだけ

(2)本当に魅力のある価値の高いものだけ

(3)他人と差別化できる個性的なものだけ

(4)衝動買いから計画的購入

へと変貌し,V=F/Cにおける"C"あるいは"F"へかたよるのではなく,"C"と"F"のバランスの良さが要求される等,市場ニーズは,ますます厳しいものとなってきた。

単なる製品のコストダウンやモデルチェンジでは,すでに対応しきれず,これまでのセールスポイントである単なる「業界初の機能搭載」といっただけの開発対応では,商品価値が高いとはいえなくなってきた。

こうした背景の中で,他社に一歩先んじる商品開発を実行するため,特に,ニーズとシーズの融合化をはかり,しかも,技術蓄積を生かした優れた商品の設計活動がなされるような設計の進め方に関しての仕組み作りを行いつつある。

この仕組みを,PSM設計(Paralell Design System by Seeds Stock Method)と仮称している。

本稿では,このPSM設計法の考え方と進め方を紹介する。

当工場は電力量計,通貨関連機器,情報関連機器等のファインメカニクスとエレクトロニクスを結合させた製品,パワーエレクトロニクス分野の半導体製品を生産している。

これら製品のおかれている状況をみると

①技術の革新,品質に関する市場ニーズの高度化による機能の多様化

②競合各社の価格競争の激化

等により,製品のライフサイクルは非常に短くなってきている中で,企業が維持拡大をはかるには,より早く新製品開発を行い,市場に供給することが重要である。

このためには新製品開発において,機会損失を最少にする手段として,有効的なVAを実施しなければならないことは,周知の通りである。

当工場は,昭和52年に製品,部品,資材分野を対象としてVAが導入され,昭和53年には新製品開発分野へと拡大をはかり,昭和57年にはVAテーマの約半数を占めるまでに発展した。

これは本論文で紹介する改善により,開発時のVA活動の効率化をはかったことが大きい。

なお,本論文における新製品とは,タイプチェンジ(モデルチェンジ),マイナーチェンジ,系列補完をいう。また,開発ステップの適用場面では,主に構想および試作設計段階を示している。

近年,VAが企業活動の中で重要視されてきたのは,その成果もさることながら,経営者の理解が高まってきたことによるところが大きいと思われる。VAの特徴である。

① タスクフォース方式で展開するため,組織間の壁が打破できる。

② 顧客ニーズにそった方向で製品を判断するため,アウトプットの方向性の妥当性が強い。

③ 機能分析による大幅な方式の変更により,大きな原低効果が期待できる。

以上の主要な点が認識されてきたためであろう。

企業の中で,VAがこれからも定着するためには,この3つの主要な点に,より磨きをかけることが大切と思われる。

年々多様化してゆく市場と,企業競争の激化に対応するためのVA活動は,如何にあるべきか。

VAは,コストダウン志向の取り組みが強く,企業トップのニーズも,古くから,その傾向にあり,コストダウンのツールとして多く活用されているのが実態であると思う。これからのVA活動は,前述の企業環境からも V=F/C の意味を充分に考えて取り組むことが肝要である。

Functionを最大にし,Costを最低にして,Valueを最大にすることができて,Priceを優位に設定することができる取り組みの可能な時点は,商品企画の段階である。

いうまでもなく,顧客ニーズに適応している商品を,タイミング良く売り出すことは,企業目標の1つであるが,この命題を課せられている商品企画にVAを適用させ,VAの威力によって商品企画の効率を向上させることが,これからの企業力の大きな要素となるものである。すなわち,0-Look VAの成果が,企業力のバロメーターとなるといっても過言でないと考える。

本論文は,「開発業務の効率を向上させるために,その源流である商品企画を効率的に進める」この狙いを成功させるために,0-Look VAの取り組み方を如何にすべきかを目指したものである。また,当社で 0-LookVA を実践するにあたり,手順等を作成したので,その一部も紹介する。

一般に商品の成長パターンは,開発→成長→成熟→衰退に至るまで,図-1のように一様のパターンをたどる。新開発の商品は,開発された当初は生産量を少なく,高価であるが,ユーザ一層も多くなり,需要量が増すに従い,低価格となり,その低価格が,更にユーザ一層を増加させる。一方では,新規参入のメーカー数も増加し普及率が向上するというパターンで推移するが,このパターンが最も良く表われているのが民生用商品であろう。

産業用電子機器では,普通,需要層が限られており,民生用電子機器ほどには需要の急速な拡大が図れないという壁があり,生産量の伸びや,製品サイクルの長さ,価格の推移のしかた等が,図-2のように,かなり異なっているのが通例である。

しかしながら,最近のファクシミリやOA機器にみられるように,明らかに民生用マーケットをねらった需要が開拓され,民生用電子機器に似た傾向が出始めていることは注目に値する。

本論では,産業用電子機器の発想を転換して,いかに民生用機器のレベルに近づけていくかという民生指向の戦略的VAアプローチの一方法について述べる。

低成長経済の続く昨今,家電業界は性能,特徴(付加機能)に重点を置いた高額製品と,経済性重視の低価格製品との二極分化の傾向を,ますます強めている。

これらの影響を受け最近のVE界でも,0 Look VE,0.5 Look VEなど,それぞれ趣向をこらしたアプローチをし,各企業とも懸命の努力を続けている。

他方,製品は,一般的に図-1のごとく,市場開拓期から衰退期まで4段階の経過をとるが,企業にとって成長期,成熟期を,いかに長く持続出来るかが,その企業の繁栄につながる。作れば売れる成長期から,成熟期の顧客のニーズに合ったものを,いかに長く供給出来るかが,重要なポイントとなるのである。

製品のライフサイクルにおけるVAの適用時期については,開発設計段階の,いわゆる「上流段階のVA」が重要であり,その効果も大きいことは論をまたないであろう。

この論文では,成熟期にある量産製品「事務用,産業用,電子機器,家電製品等」の新製品開発にあたって,目標製造原価のルール化した設定法について,一つの試みを述べる。

VA活動を行うに際して,VAによる目標額は,明確に,かつ,VAプロジェクトメンバーを説得できるものであるという必要があり,同時に,この目標は,顧客の要求を満足させるような設定でなければならない。

この論文では,従来開発製品の目標製造原価設定にあたって,経験とカンに依存していた度合を,若干でも少なくするため,市場における同業他社製品を機能的に分析,総合,評価をし,価値指数(V=F/C)の動向からみた製造原価の設定方法を,筆者の実際の活動経験を基に,体系化を試みたものである。なお記述にあたっては,目的の手順をわかりやすくするため,Job Plan形式を用いた。本文が,VA活動の目標設定に際し,多少とも参考になれば幸いである。

70年代は物質的充実時代であった。80年代は精神的充実の時代であるといわれている。消費者が60年代・70年代を通じて,追い求めてきたのは,商品の使用機能が主対象であった。これからの80年代は,必需品を中心とした実用的商品群と,生活を楽しみ,豊かにする一連の商品群との二極分化の時代である。後者にあっては,従来の使用機能を中心としたコンセプト作りだけでは,顧客の要求を満足させる事が困難になりつつあると思われる。

また,最近の商品のライフサイクルの短縮化傾向は著しく,特に,生活を楽しみ豊かにするといった商品分野においては,顕著であり,原価構成上の開発コストの比率は,増大の傾向にある。

従って,商品企画段階におけるコンセプトの適否が,市場占有率の増加と収益の向上を大きく左右することになる。

当事業部の主力製品であるヘッドホンにおいては,基本的な使用機を達成する技術的なレベルは,既に高度な領域に達しており,この面での技術向上の抜本的な期待度は低い。むしろ貴重機能や付加機能の適否が,販売高に大きく影響を与えており,コストに占める貴重機能コストの比率は,年々増加している。近年,アウトドア使用の製品が出現して以降,市場は一変して,一段と企業間競争は激化し,新製品の開発ラッシュとなり,製品のライフサイクルは著しく短かくなっている。

このような背景にあって,商品企画段階におけるVE適用(0 Look VE)の確立を目指し,検討,実践した内容について,以降,述べる。