新型コロナウィルス感染症により、調達、物流などのサプライチェーンに支障をきたし、供給面に影響が及んだ。これにより、人員・設備が一部機能不全になり、ニューノーマルでの生き残りに向けて、自動化への取組みが急速に進展した。
今後は新型コロナウィルスだけでなく、高齢化も進み、人材確保が重要となってくる。生産においても、自動化が求められ、最適かつ効率的な設備投資をする必要がある。また、製品の市場価値のサイクルが短くなってきており、製品と設備を同時に製作することが重要である。VEにおいて製品の価値を向上することが多いが、今回は生産価値の向上も含めたVEを実施した。
本論文ではACサーボモータを駆動するサーボアンプの製品開発VEと製造工程VEを同時に行うコンカレントVEで、生産価値の向上及び開発期間の短縮をした実践事例を挙げる。
★キーワード
製造工程のVE 、組立サイクル、省人化、生産価値の向上、コンカレントVE
X パーキングエリア(以下X_PA)という狭隘かつ老朽化した社会インフラ施設更新に際し、その将来の在り方について、SWOT 分析やマルチスクリーンマトリックスなどの他のビジネス技法で得られた結果を『近未来予測シナリオ』としてまとめた。これを「潜在化した顧客要求事項」として『開発設計VE』のジョブプランにインプットする検討プロセスにより、限られた空間を最大限に活用する建築計画を実施、以て求められる機能と適正なコスト算出に基づく投資計画を導いた。対象はライフサイクルが比較的長い公共建築の更新である。未来のニーズを先取りと同時に、計画案の「検討プロセスの見える化」による円滑な社内合意形成が図られるとともに、投資判断等の意思決定に寄与した。あらゆる財・サービスに対する、効果的な検討手法としての有効性が示唆された。
顧客要求の複雑・多様化や製品のライフサイクルの短縮化が進んでいる今、機会損失を防ぎ、効率的に価値ある製品やサービスを市場に提供することが求 められる。そのため、製品開発プロセスの中心活動である開発・設計業務においては、従来にはない機能や構造を有した製品やサービスをより安価でより短納期 で創造していくことが必要になる。その実現を可能にするのが機能的アプローチであり、VEである。
一方、設計案に対して確実な機能の達成を 実現するためには、設計過程において設計案が有する潜在的な不具合因子を漏れなく抽出・克服し、技術性評価においてもその達成を漏れなく評価しなければな らない。そのためには活動メンバーの固有技術のみならず、組織内に蓄積されている過去の経験・知識を有効活用する必要がある。
本論文では、組織内に蓄積されている過去の不具合情報を、未然防止に役立てられるように設計知識として機能ベースで構造化して整理するモデルを提案するとともに、設計段階のVEにおける活用とその有効性を証明することを試みた。
日本における価値工学は、昭和30年代、40年代の「部品VE」「製品VE」に始まり、現在では「マーケティングVE」「マネジメントVE」など、調達、加工といった段階から発展・発達し、効果の高い上流段階へのVE適用へと歩んできた。
公共事業におけるVEも、その他業種同様に、上流段階であればあるほど効果が高いと考えられるが、実績の多くは下流段階に限られている。
より効果的に設計VEを定着させるためには、発注者との「認識の関」「文化の関」「感情の関」を取り除く努力が必要である。
本論文では、道路整備の中でも上流段階である道路概略設計を例において検証し、①発注者が持つ設計VEに対する誤解②設計VEシステム上の課題③評価手法の課題の3つの問題点を明らかにした上で、「設計VEシステム導入ガイドライン」「価値を基準とした地域間を越えた評価比較手法」等の提案を行った。
新製品開発の成功の要は製品企画段階にあると言えるが、真に顧客満足の高い製品を実現するには単純に顧客要求を把握するだけでは不十分であり、製品化技術の今後の発展を長期的な視野で見抜く力も問われる時代になっている。そこで、本論文では、最近注目されているTRIZの技術進化のパターン等を活用して、次世代製品の近未来の姿を社会の変遷と技術の発展という観点から予測し、その予測結果を企画VEに反映させるアプローチを提案するものである。予測結果のアウトプットは、純粋に対象製品の近未来を描写したシナリオ(文章形式)を想定しており、このシナリオが製品化コンテンツのコアとして企画書に反映されることになる。なお最近、筆者はこのような革新的なシナリオライティングメソッドに対して『FUN Method(ファン・メソッド)(Future Navigation Method』と命名した。本論文では、本メソッドの中で活用する主な技術進化の未来予測テクニックを小事例に基づいて紹介するつもりである。
本論文は、自動車部品を対象とし、納入先との共同開発を行い厳しい目標製造コストを達成していく開発設計段階のVE(以降では開発VEと呼ぶ)の効果的な進め方を提案し、その有効性を明らかにするものである。すなわち、従来の自動車部品メーカーで多用されている開発VEの進め方の問題点を明確にし、この問題点を解決する方法を考案して、これを開発VEのジョブプランのステップの中に取り入れVE活動を効率化したものである。具体的には重要な基本機能を果たすためのおおまかな方式・構造案を決定した上で、それ以降の機能の定義・整理・評価やアイデア発想をしていくという新しいステップを取り入れた開発VEを進めるものであり、その結果、従来の開発VEより短時間で効果的な成果が得られることを示したものである。
本論文は、日本の製造業の諸課題に関する調査結果の考察を通して、企画VE活動へTRIZ手法を導入する可能性について論じるものである。
今回の調査結果によって、日本の製造業の多くが、自社事業を既に成熟期から衰退期に入っていると認識していることが判明しており、商品企画が今後の大きな課題になっている。そこで本論文の後半部では、調査結果の考察結果を踏まえて、商品企画を充実させる手段として、商品(技術)の発展イメージ(未来のあるべき姿)の形成を支援するTRIZ手法として"技術システム進化のパターン"を企画VEの活動プロセスに導入することを提案するものである。
より具体的に言えば、企画VE活動の中で、TRIZの1つの手法である"技術システム進化のパターン"を活用して新商品に関する将来シナリオを作成し、次段階の開発VEの進むべき方向性を確立する方法について言及するものである。
本論文は、1997年より国内で実施してきた橋梁予備設計VEの10回の事例から導いた手法についてまとめたものである。特にワークショップの実施手順に関する理想的なパターンを研究することが主目的である。
橋梁予備設計VEの手順は、機能定義、機能評価、代替案作成を基本に22のステップに分解し、実施してきたが、そのうち特に情報収集、情報整理分析、要素分解、アイデアの具体化、技術検証、提案等について具体的な実施手法の詳細提案を行った。
製品開発活動は企業経営の要であり、常に顧客満足の高い製品をタイミングよく市場に提供していかなければならない。そのためには特に価値向上が望める製品企画案を立案する合理的アプローチが必要になってくる。そこで本論文ではマーケティング的思考が比較的強い従来の企画・開発VEに対して、最近注目されている「TRIZ(トゥリーズと呼称:旧ソ連で誕生した過去の特許データ分析から帰納的に導いた創造原理等をベースにした一連の革新的問題解決の方法論)」を活用した「新タイプの企画・開発VE」を提案することにする。
なお、本論文で提案する企画・開発VEの最大の特徴は、次世代製品の企画シナリオをTRIZの1手法である「技術進化のパターン(技術システムに関する複数の進化パターンで構成)」を活用して作成する点にある。さらに製品コンセプトを検討する創造段階においても、従来のBS法)ブレイン・ストーミング法)に加えて「コンテンポラリーTRIZ(TRIZソフトウエア)」を活用し、創造プロセスの合理化を目指している点も大きな特徴である。
本論文は公共事業プロセスの要とも言える設計段階で機能向上を図りながら、従来より少ない投資で合理的な土木構造物を求め、VE手法の土木設計への応用方法を探り、VE効果を明らかにするものである。その結果、複雑かつ保守的な土木設計プロセスにVE手法を適切に応用することにより機能向上をはかりながらセービングコストが全工事費の10%、20%に達していることが実証できた。
公共事業においても設計時に適切なVEを導入すれば、かなりの効果があがることは明らかであり、今後、公共事業とりわけ土木事業におけるVE役割が大きいと確信している。