建設業にVEが導入されて10数年になる。建設のVEが企業活動にいかに貢献してきたかは,ここであえて述べるまでもない。
建設VEの対象は,一般的に図-1のように考えられている。建設VEは仮設等の生産設備を主な対象として発展してきたが,ここ数年の傾向をみると,一般管理も含め生産手段等の物以外(ソフトウェア)の適用事例が増えてきている。生産手段の中の工法・作業手順へのVE手法と,その適用の重要性については,いくつかの論文でもとり上げられている。特に建設業においては,工期短縮を対象としたVE適用手法の開発は,受注競争を背景として非常に重要な課題である。
当論文では,建設工事の工期短縮をより効果的に行うためのVEの適用方法について述べる。
VEを推進する企業として,特にVE適用局面の拡大については,計画的に,これを実施していくことが必要である。当社においても,今まで,作業所VE・設計VE並びに管理部門としてのソフトVEなど,多くの分野に挑戦し,それなりの成果をあげてきた。また,トータルVEを,一層,効果的に実施するため,種々の戦略も投じてきた。VEは,無限の資産であり,われわれは,一層の効果を期待して,今回,更に,その適用分野の拡大をはかるべく,従来,実施されていなかった見積時におけるVEの積極的導入をはかるために,手順の要点をまとめることとなった。設計事務所など,他社が設計した建築物に対し,施工を請け負うという建設業の特異性のもとでは,見積時点は営業活動と相ともなって,仕事の流れとして最も川上に当るものであり,そのVE効果は,はかり知れないものが期待される。本論文では,前述のごとき,建設業特異の見積時の業務の進め方と,その問題点を分析し,この時点でのVEを効果的に導入するためのジョブプランを作成し,「今まで,実施困難とされていた見積業務へのVEの導入」を可能にした。以下に,要点を発表するものである。
企業が,今後予想される厳しい経営環境の中で,存続していくためには,顧客の要求している機能/コストを実現する以外にない。
従って,これからのVE活動は,企業の存続という点から,より一層重要となり,従来に増して全力を傾注すべき課題である。
本論文は,VE活動において,新たに追求すべき企業の枠を越えた"共同VE"の重要性と,効率的な展開方法についてまとめたものである。
すなわち,より高い価値ある製品と価値ある仕事をもたらすために,企業内のVE活動は,あらゆる分野において,強力に推進しているが,取引関係にある両企業が一体となって,仕事の価値向上あるいは取引関係の中にある問題点(発注ロット,納期,取引業務)も含めた共同VE活動については,必ずしも充分ではなかった。
そこで"共同VE"の重要性を明確にすると同時に,従来,なぜ活動が充分できなかったのかという原因も追求し,これから効率的に展開するためには,どうすべきかについてまとめたものである。
建設業を取巻く環境は,年々きびしくなり,コスト競争の激化,顧客の低コスト追求などの中で,工事益を確保し,経営を安定させるためには,より一層の企業としての努力が必要となってくる。
従来も,それに対処するための普段の努力をしているが,上記の現状を踏まえ,最大限の効果をあげるべく,より一層,企業では本支店の組織をフルに活用し,その"ちえ"を結集する時であると言える。
建設業は,他の製造業等と異なり,個別受注産業であり,多くは一品生産型である。
1件1件の工事についての目標値を設定し,それの達成のための小さな努力の積上げが,結果として企業の工事益となり,それが企業を経営していくための糧となる。
従って,各工事の工事益の目標設定に対するVEによる工事益の確保のために,最大のウェイトをかけることが望まれるゆえんである。
当社では,昭和43年,VE手法の導入以来,その推進・普及につとめ,特に工事部門ではVE計画会議と3時間VE(VE会議)等の形で作業所に定着し,その活動を活発にすすめている。(VE計画会議と3時間VEについてはVE全国大会で論文として発表ずみ。)
工事部門のVE活動方針として,作業所VEの実践による工事益の確保が大きく打ち出されているが,それと同時に,その手法を活用し,目標設定とそのフォローに組織的な展開を行い,かつ,業務能率の向上をめざし効果をあげつつある。
以下に目標設定へのVEアプローチと,具体的な展開について述べる。
企業は,永続的繁栄をはかるために,業務水準の維持,改善に開発を行い,そのために,さまざまな管理手法を使い分け,今日に至っている。
当社もVE導入後6年を経て,数多くの成果を生み出し,企業発展に寄与してきた。
しかし,その展開結果を別の視点からみるとき,必ずしも,VEの特徴が十分活かされてきたとはいいきれず,時間的なものや,手順上の問題が残されている。
改善活動において,完全に一つの管理技術に依存するということは,むしろ例外的であり,時と場合に応じた使い分け,応用が必要である。
こうした考えにたち,建設プロジェクト業務での原価低減活動に対し,その特殊性を考慮しながら,当社なりの工夫改善を重ね,VEをベースとした短時間原価低減手法の開発を試み,実用化をはかった。
本論は,これらの問題解決をはかるために試みた手法開発の経緯と,その内容を詳述するものである。
当社のVE活動の歴史は,今年で14年を数えるが,この間のVEによる成果が,企業活動にいかに貢献してきたかは,はかり知れないところである。当社は,これまで建設業という業種の特異性をあえて容認し,短時間VEなどの手法を開発して,VEに積極的に取り組んできたことは,過去に何度も紹介されてきたことであるが,これは,こうした当社流ともいうべきVEのやり方が,いかに作業所中心的に展開されてきたかを証明しているのである。ここ数年,全社的運動への広がりを求めて全社,全部門でトータルVEへの取り組みを実施しているが,これらの成果を,ある程度期待できるにせよ,今後とも,これまでの作業所中心的な活動方式は変わらないものと思われる。しかしながら,日進月歩する建築生産技術の変遷にともなって,VEの成果も徐々に変化しているのも事実である。このあたりで,過去10余年にわたって蓄積された成果を振り返って,今後のVE活動の方向性を展望するとともに,その課題解決へのアプローチを実例を掲げて紹介する。
近年,東京を中心に,ホテルの新設が相つぎ,第3次ホテル戦争の様相を呈している。
しかし,今後,東京が国際都市として発展を続ける限り,まだまだ質の高いホテルの需要はなくならないものの,低成長時代といわれるこのごろ,コストは限定され,合せて機能の充実をはかることが,ますます,われわれ建設業に携わるものに要求される。
標準的な設計手法で,発注者の要求事項を,すべて満足するように計画すると,予算を超過してしまい,実現不可能な設計になってしまうことが多い。そのために,発注者の要求事項を,いかにしてコストの中に組み込んでいくかは,重要な課題となってくる。当社では,このように発注者の要求事項を機能に変換し,それを補足する2次機能との関連を追求して,限定されたコストの中で,いかにして機能を組合せて,無駄を省いていくかを研究してきた。
われわれは,研究の課題で,バイザウェイが開発したFunctional Analysis,System,Technique (FAST)ダイヤグラムへの展開による機能追求手法の導入を検討した。
FAST技法は,日本VE協会発行「VE資料24」にも述べられているように,教科書レベルでは,その有効性を説きながらも,実践面では,ほとんど活用されていないといわれている。
本レポートでは,建築設計で,発注者の要求事項を機能変換し,機能の整理を行うとともに,VEとして重要な情報収集を効果的に行う手法に結びつけていく方法を説明し,今後の活用の端緒とする。
われわれの工場では,エアコンを過去20数年間にわたり生産してきたが,その間,第1次・第2次のオイルショック,冷夏による減産,あるいは省エネ規制にともなうイニシャルコスト等のアップ要因を,企業独自に改善できる手段として,VE技法を導入し,改善をはかってきた。
導入初期は,セカンドルックVEが中心であり,やがて,設計段階におけるファーストルック,さらには,商品企画段階におけるバリューデザイン(VD)と上流段階でのVE適用に移行し,試行錯誤や多くの実践経験を重ねながら,企業経営指標に密着して,VE活動を展開してきた。
市場におけるエアコンは,常に最新技術を導入したコストパフォーマンスの高い商品,顧客ニーズに合った商品,あるいはライフサイクルコストの優れた商品が求められている。この市場ニーズを満たすために,最新のエレクトロニクス技術を駆使した商品,あるいは省エネルギーと快適さの機能を持った商品開発に,しのぎをけずっている。
エアコンの基本を構成する機能部品は,開発日限,開発費用,あるいは設備費用に多額な資金を必要とする関係から,仕様の見直し程度か,または,市場にある標準品をエアコン用の仕様に見直した程度で対応し,抜本的な改善をはかる機会が少ない。また信頼性確保のために,確認ステップを,長期にわたって実行し,事故を未然に防ぐことが重要である。しかし,機能部品の大幅な価値向上がはかれた場合には,エアコン全体に波及し,その効果は,非常に大きなものとなる。
そこで,機能部品の機能分野におけるコストの度合を把握して,(1)機能分野ごとに方式選定によるVE効果を狙うか,(2)機能部品のVE効果を狙うか,または,(1),(2)の両方を狙うか,狙いを明確にした上で,目標割りつけを行う方法を採用した。この方法によれば,改善の狙いが明確であるから,やわらかい改善額が把握でき,また,これらに関連する情報は集めやすい利点がある。
多くの企業がVEを企業の最重点施策として,多大の成果をあげていることは,周知の事実である。しかし,その内容をみると,製品を対象としたものがほとんどで,サービスいわゆるソフトウェアを対象としたものは,大きな成果を生み出すに至っていない。製品対象のVEも,実施段階で製品・部品の標準化と品質保証を確実に行わないと,間接経費はかえって増加し,トータルコストでは採算にのらない場合が生じてくる。
かかる背景より,ここ数年来,ソフトVEの重要性が注目され,多くの企業が力を入れてきているが,まだ実践的に使える手法が確立されていないのが,実状であろう。
製品VEが物を対象とした機能分析とすれば,ソフトVEは,究極的に人を対象とした機能分析となるので,ソフトVEの場合,基本的に,テーマの内容や性格,さらには個々の企業のニーズによって,アプローチのやり方やステップのすすめ方を,むしろ変えるべきであり,また,いろいろのやり方があってしかるべきと考える。
この実践ソフトVEは,いろいろ考え得るソフトVEのうちで,「誰にでも取り組み易い,実践に役立つソフトVE手法」のーつとしての展開を試みた。
本論文は,1977年,当社が本大会で「小集団活動を推進するためのVE手法」として発表した「問題反転VE」の論理を起点としている。「問題反転VE」は,その後,実用的ということを理由に,各社で大いに活用されているが,私自身,特に管理・間接部門において,社内外100回にわたる実践テーマによるWSS,TEPに適用した結果,大きな成果をおさめている。
本論文は,実践より得た体験をもとに,その思考展開を理論的に裏づけると共に,各ステップの留意点を整理したものである。実際の指導は,40枚程度のOHPによる視覚教育で行い,専らVEの体得に重点を置いているが,本論文は,VE rとして具体問題を解決する場合,少なくとも,これだけは心得ておくと得策であろうということを意図し,前半をソフトVEを進めるための理論的背景,後半をこれを実践するための実務的な留意点という形でとりまとめた。
需要低迷の続くなかで人件費,原材料が上昇しており,企業経営は一段と苦しくなっている。このため,各社とも低成長時代を生き抜くために,コストダウン対策に本腰を入れているのは,周知のところである。VEの適用範囲もハードウェアのセカンドルックVEから,ファーストルックVE,さらには0ルックVEへと拡大され,ソフトウェアについても,ムダな経費の節約だけではなく,歩留りの向上,省力化,特に最近では省エネルギー,省資源対策と,幅広い活動が全社運動として進められている。
当社の場合も,48年秋の石油危機以来,いろいろの対策を実施してきたが,ハードウェアを中心としたVE入門研修会の概要については,すでにVE研究論文集Vol.9にて報告しているので省略することにし,本稿においては,その後の活動のうち,特にソフトウェアVEによる「改善活動のVE」に的を絞って述べてみたい。