VEは価値向上を目的とする一連の評価プロセスであるが、実際多くはコストダウンのツールとして捉えられがちである。しかし技術開発部門の立場としては、その性格としてVE本来の価値向上を目的とした評価方法がぜひ必要である。
本研究は「技術開発のねらいは価値向上を図るVEの考え方に沿うものである。」という認識から、これまで当社のVEでは評価しにくかった「技術開発のテーマ毎に異なる開発目標」を機能として評価することを試みた。また報告書式の上でもこれまでのコストダウンとしての視点から、価値指数として、価値向上そのものを示す価値向上率(U)を使い評価しようとするものである。
さらに実際の技術開発テーマにおいて、開発事業計画の初期段階で環境及び社会リスクを定量的に評価する必要性から、従来評価の対象とならなかったこのようなリスクを機能として評価することを試みた。
建設市場の発注量の低迷と、低コスト化の傾向は今なお進行しつつある。総合建設業においては今まで以上の低コストで施工する必要が生じ、総合建設業の各企業内におけるコスト低減努力だけではその限界をこえたといえる。
そのような状況下において、ここでは総合建設業における専門工事業者からのVE提案を協力業者からのVE提案と位置付け、以前にも増してVE提案が出てくるようにし、また、一般的製造業における発注者と協力業者との関係のような、固定した協力業者との関係を保ちながらさらなる低コスト化に対応するためにはどうすればよいのか、総合建設業と専門工事業者の双方にメリットがあると思われる方法のーつとして、協力業者のVE提案制度という新たなしくみを提案するものである。
現在、建設省総合技術開発プロジェクトで開発中の新建築構造体系が確立すれば、構造設計者はコストエンジニアリングの一環として、自由なアイディアで技術提案をして構造設計が可能になる。その際の技術提案の最有力候補の一つに免震構造の採用が考えられる。
しかし、これまでの免震構造はコストは多少アップするが、機能(耐震性能)を大幅に向上させることで、価値を高めてはいるが、高い耐震性能が要求される一部の用途を除き、コストアップを許容しにくい一般建物への普及にまでは至らなかったのが実状である。
そこで、本論文ではコストアップの問題点を定量的に整理した上で、従来型の耐震構造の代替案として免震構造を採用した場合の設計VEの可能性と有効性について検討を行い、その有効性を確認した。
さらに、新しいコスト評価手法として、地震に対するリスク管理を含めたライフサイクルコストの低減についても免震構造の有効性を示した。
商品の価格破壊が進むなかモノ造りの面において生産体質の強化が急務となってきた。要求されるコストダウンの目標が大きく部門ごとの個々の活動や、単一の管理技術の活用では限界がある。各種管理技術の融合を図り、実践的かつ効果的な問題解決手法の確立の必要性を痛感している。
このような背景から、本論においては「製造現場における実践的なVE活動」を考える上で、特に「科学的管理手法のIE」と「機能的アプローチ手法のVE」の利点を融合化し、製造工程における管理技術として体系づけた。
その活動ステップは次の3段階で構成されている。
① IEの基本を活用して工程を細部にわたり分析しVE手法で機能定義する
② IE手法の核となる時間のデータから各工程を製造VEの効率指数に変換する
③ 製造VEの効率指数をもとに機能的アプローチで創造的に工程の改善を行い、ロス削減に取り組む
建築産業において、特に建築施工部門では従来から建築生産が一品受注生産であるがゆえまた、施工部門がプロジェクトの業務を引継いだ時点では、生産対象(建築物)の設計図・仕様書・原価がほぼ確定しているため、生産対象の各部分・各部位を個別に取り上げ、改善案を作成し、通常業務と密着した日常的なVE活動を行ってきた。しかし、建築生産は各部位の集合体であり各部位の機能が生産過程においてまた、生産結果として相互に作用し、機能するものであるので個々の改善ではその効果・成果を十分に上げられず限定されたものとなってしまう。そこで、生産対象物をあらゆる角度から検討し、「繰り返しVE」も含め各部位の改善・VE手法を整理し組み合わせ、総合的なVEを確立する必要がある。
本稿では、実際に一つの生産物(建築物)を対象に施工部門が行った活動をとおして、大規模工事における総合的なVEのすすめ方を提案する。
再開発工事等の大型建設プロジェクトでは、地域住民・出資者から構成される施主(再開発組合等)からの将来の環境,景観,建設のコスト,工期,建物のグレード,品質等々のニーズに対して、設計者,施工者からの提案が要求される。
これらの諸要素を総合的にまとめつつ生産設計をおこない、工事を進めるには、解決しなければならない問題点が非常に多く、かつ処理する時間が少ないのが常である。
とりわけ、生産設計を早期に完成するためには、設計と施工の責任範囲を分割すべきでなく、設計部門が基本・実施設計作成する作業の中へ施工部門が参画し、多岐にわたる問題点の同時解決進行作業が必要である。
一方、このような大型プロジェクトにおいては、従来の3時間VEによる作業所VE活動では対応できないものも多くある。
本稿は具体的建築物件において、生産設計を進める中で各種問題点をトータルVEプログラムに基づき解決し、見通しを得たので提案するものである。
建設産業政策委員会が1995年4月に策定した「建設産業政策大綱」の基本目標の一番目に「エンドユーザー(国民)にトータルコストで良いものを安く提供する」と示されている。これは、われわれ建設産業に携わるものに対する社会的な要求であり、果たすべき使命でもある。
この社会的使命を果たすためには、対象プロジェクトに携わるすべての人々が従来の枠組みを乗り越え、エンドユーザーの立場に立って能力の結集を図らねばならない。
本稿は、このための有効な手段としての「公共工事における協同VE」の必要性とその進め方について提言するものである。
近年、当社の作業所における「VE計画会議」は、VE計画のためだけでなく、VE実施のための会議としても位置付けられるようになってきた。即ち、会議の内容が、VEテーマの摘出にとどまらず、多くのアイデア発想やアイデアの具体化を含むものに変化してきている。本論文は、当支店の「VE計画会議」において機能分析がどのように展開されているかを検証・分析し、それを踏まえて「新しいVE計画会議」を提案するものである。
企業が永続的に発展するためには、個々の製品がそれぞれに必要利益を確保することが重要である。本論文では、それを可能とする原価企画活動についての概念と進め方を、体系的にまとめると共に、その定着化における課題について実態を踏まえて抽出し、原価企画活動を円滑に進めるためのVE適用方法の望ましい姿を、仕組みづくり・人づくり・道具づくりの面から総合的に提案する。
VEの成果拡大を図るため、今まではあまり目を向けていなかった単体部品(構成部品を持たない単一材料や単機能部品)についてもVEを実施していかなければならない。単体部品は製品のVEの適用が難しく成果も出しにくいので、製造のVEを適用しているが、VEの活動メンバーからは手軽に使えて、より成果のあがる新VE手法が望まれている。
現在行っている製造のVEでは製品改善も考慮するようにはしているが、手法として活動の進め方が製造工程を中心にした進め方となっているため、製品の機能に対する意識が薄くなりがちで製品の改善力に欠けるといった問題点がある。
このような問題点を解決するため、誰にでも使えて成果が得られ、実戦向きで、しかも従来と同様な時間で活動できる製品・製造混成型VE手法を開発したので、これについて述べる。