バブル崩壊以後、税収の落込み、バブル期に建設した施設の経営困難、建築工事費の内外価格差等を背景に、公共建築の調達に様々な改革が実施されている。本論文は、近年、建築設計段階に導入されているVEについて、導入の経緯、現状を概観し、今後、建築設計VEを普及させるための課題を整理した。分析対象としたのは、建設省官庁営繕部、郵政省大臣官房施設部、東京都等地方公共団体が発行しているマニュアル、ガイドライン、実施報告と、(社)日本バリュー・エンジニアリング協会による「建築設計VEマニュアル」、およびその検討、作成段階の議論である。VEは主に製造業を対象に開発され、また国内の建築分野への導入は施工段階が中心であったため、設計段階でそれを有効なものとするためには、VEを適用すべきプロジェクトの選定問題、VEの実施時期の問題、VEチームの編成の問題、VEの手法の問題等が存在することを指摘した。
建設のVEは、過去に様々な展開の仕方が発表されている。それらは建設の特殊性を踏まえつつ、建設物のライフ・サイクルにおける一局面を取り上げて研究したものがほとんどであった。しかし、社会環境の変化と21世紀に向けて、建設のVEをどのように受け止め、適用していくべきか、再度考えておかなければならない。
本論文では、建設物のライフ・サイクルにおいてVEをどのように考え、適用すべきか、その実施形態と特徴を述べる。要点は、設計段階、施工段階などいずれの段階でもVE適用方法は同じ形態、手法で可能であり、違いは、構成要素の捉え方、分割の仕方である。そして、建設のVEを社会や大衆に解りやすいものにしていくことが大事であると考える。
なお、VEを活用するには、VEの基本をしっかりと習熟することが肝心である。その上で業種・業態に合ったVEの展開を考えるべきであることを強調しておきたい。
機器の購入価格の実績データ数が少ないので、購入品の価格見積りに統計的手法が使いにくい場合に、制約付回帰分析の技法を活用することにより、購入価格の予測モデル式を設定することができる。これを使用することにより、限られた実績から新規案件の機器の購入品の価格見積を簡便・迅速に一定の正確さのもとで行うことができる。
本研究はプラントの構成機器を対象として、まず、購入品の価格予測モデル式を作成するものである。次いで、購入品の価格予測モデル式の各項のウエイトは、各設計特性値が購入品の価格にどれくらい影響があるかを示しているので、各設計特性値を変化させることにより、購入品の価格変動についてのシミュレーションを行うことができる。最後に、設計者が企画・設計段階において設計特性値を適切に組み合せることで、コストミニマムとなる仕様の選択を行うツールとしても広く活用ができる。
さらに、代表的なプラントの高額な機器を対象に機能分析を実施し、機能分野ごとの「機能評価値とコスト」との関係を把握し、価値改善の対象分野と改善目標値を明らかにした。
技術レベルの高い専門分野の新製品開発は、常に未知の分野への挑戦であり、創造性が要求され、開発者個人の能力に依存するところが大きい。したがって、この分野の新製品開発を一般の開発や作業と同じように進捗管理することは、本来なじまないものとされてきた。
本研究ではここにメスを入れ、高度な専門的スキルを持たなくても新製品開発の進捗管理を行えるひとつの方法を提案し、開発効率の向上に役立てようとするものである。
本研究では、新製品開発の進捗管理を対話式で行い、発生した問題、あるいは発生するであろう問題の本質を効率的に捉える方法を示すとともに、問題を解決して到達すべき目標を機能的表現で捉え、その解決策(アイデア)追求を機能的かつ効率的に行う方法を示す。さらに、考え出した解決策を、機能とコストの関連から総合的に評価する方法も示す。これらは、従来のやり方に比べ問題解決能力にすぐれ、その効果は過去の実績が示すものである。
製品を対象にVEを行う場合、コスト低減と機能向上がその目的となる。このコスト低減を考える上で、従来のように部品コストだけを対象にしていては不十分である。
昨今の企業を取り巻く環境は技術革新のスピードが速く製品の寿命はますます短いものとなってきているので、相対的に総生産量が縮小しているからである。
したがって、型と部品をトータルで見たVE活動指針が重要となり、この活動指針を作るための諸条件についてまとめた。
建設産業、特に公共工事の一部において設計VEの導入が始まった。しかしながら、現状の設計VE導入に際しては、VEについての基本的な理解がなされぬまま、まず形から入ることが多い。その結果期待したほどの成果が上げられず、設計VEそのものに対する誤った評価がなされることもある。これまでの設計VEへの参加経験から、公共工事設計VEにおいては、特にチームリーダーが結果に非常に大きな影響を与えることを痛感した。
本研究では、設計VEのもつ問題点を整理した上で、VEスタディを円滑に実施し、より大きな成果を上げるためには、チームリーダーとしてどのような考え方や行動がポイントとなるかを中心に論述した。
VE活動は日常業務として定着している。各種の技法などによる取り組みや運用・展開などはいろいろな場面で行っており、各分野において独自になされている。そのため本論文は建物の計画から施工まで一連のVE活動に対しての考察を行うものである。その主な内容は、建物の機能性などの情報を共有化して、顧客や利用者のニーズを満足させるVEの展開をするものである。
企業経営の基盤の強化や経営資源の有効化を図るためには、これらを構成する組織や従業員等が保有する技術を総合的に発揮しなければならない。特に人の集合である組織に対して重要な要素である。
VEワークショップセミナー、VEジョブプランを適用する過程において個の集合体である組織に対してどのように作用して、どのように影響していくかを研究することによってVE技法の導入、普及を迅速化できると同時に、職場の組織に活力を与えることができると考え、VEを実践すると同時にこのメカニズムを研究したので、ここに発表する。
新製品開発は企業にとっての生命線であり、良い製品を安くタイミングよく市場に投入し、常に顧客要求に応える努力をしなければならない。そこで本論文では、VEをベースにした効率的な新製品開発プロセスを設計することによって、顧客満足の高い新製品を極めて高い確率で実現していく方法を提案するものである。具体的には、まずVEの問題解決プロセスを開発設計業務の標準プロセスとして昇華させ、プロジェクト方式で製品開発を行いながらデザイン・レビューも有効に取入れてコンカレント・エンジニアリングの効果を引出す。
そして本論文で提案する機能分析等に関わる応用テクニックも製品開発の標準ツールとして装備することによって、ムリ・ムラ・ムダのないいわゆるリーン・エンジニアリング(一貫性のある新製品開発体制)を構築しようという試みである。
この論文では、施工段階でのVE事例を分析することにより、VE技法による改善アイデアが、他のプロジェクトでも利用されることが多いということに注目し、改善アイデアが、どのように展開しているかを追求する。改善アイデアの展開を考察することにより、新しいVEステップを提案する。
さらに、改善案の評価方法について提案する。提案する手法を適用した改善事例を評価することにより、提案手法の有効性の確認を行う。そして、単なるコストダウン案や改善案との違いを明確にする。