VEの定義では「VEとは,最低の総コストで必要な機能を確実に果たすために製品とかサービスの機能分析と改善に注ぐ組織的な努力である」と唱えて,事務の分野にもVEが適用できるとしている。しかしながら,製品などのハードな対象と比べて,事務に対する適用例は少なく,手法上の問題点の解明についても,十分になされているとはいえない。
事務のVEに対する重要性が認識されてきているにもかかわらず,一般には,経費節減運動に見られるような長距離電話の規制とか,コピー用紙の節約などの節約ムードの醸成を促すといった一時的なコスト低減策がとられているケースが多い。
フジタ工業においては,組織の拡大と情報量の増大に伴なって事務及び手続きの複雑化が進行している。一方,事務・技術を問わず,全社員に対してFVE実践コース(2日間の研修)が実施されたことと相俟って,特に事務部門からも,VE適用範囲の拡大が要請されてきた。
今までにとり上げられたものは,作業所事務の軽減に関するもの,各種事務及び手続の改善に関するもの,組織に関する提言などであるが,本論文では,事務手続の改善について,特に手法の展開の仕方を中心として試案を提起したい。
当社におけるVE活動の現状については,過去数回,この大会で発表してきた。その中でも,特に最近は,BESTよりもBETTERの改善結果をねらって,作業所で数多くVE活動を実施するという方針をとってきている。すなわち,VE計画会議によって,問題点の摘出からVEテーマの選定,3時間VEを用いての改善活動,この両者の組み合わせで,着実に成果をあげてきている。
しかし,現実の問題として,少人数の作業所が数多く存在しており,メンバー不足のためVE活動ができない場合も,しばしば起っている。この解決策としては,物理的にメンバー数を増やす方法と,1人でもできるVE手法の開発と,2通りの策が考えられる。この論文では,前者について簡単に触れ,主として個人VEの考え方,その適用事例を中心に述べてみたい。
今日の過当競争の中で,企業が生き残るには,いかに利益をあげ存続するかによって決定されます。それは,製品の技術,価格,販売力等により左右されます。
特に最近の情勢は,価格競争が表面化してきていることは事実です。この価格競争に打ち勝つためにも1個1個の部品単価が深く追求され,いかにしたら,"VE,コストダウン"ができるか,そのVE活動に多くの期待が寄せられています。
しかし,製品コストは,設計段階での製品仕様,設計によって,ほぼ決定されると言って過言ではありません。
従って,設計段階のVEは,製品コストに大きく影響を与えると共に,企業の原動力の1つとして重視され,今後,一層推進していかなければなりません。
戦後,わが国の経済は,「20世紀の驚異」といわれる程の高度成長を成し遂げ,これを背景として国民の所得は急増し,消費力も旺盛となり,まさに「昭和元禄」を旺歌してきたが,オイルショックを契機とした資源不足による石油製品および関連製品のコスト高に起因する資材費の高勝を招き,そのあおりで消費者物価も狂乱的に高騰した。この結果,需要は下降の一途をたどり,政府の金融引締め策と相まって経済は縮小し,不況時代へと突入した。この物価も最近では落着きをみせてはいるが,国民は現在でも,なお逼迫した生活を余儀なくされている。
さらに,家庭内部においても,物心両面で多くの問題が潜在し,円滑な家庭生活を阻害しているのであるが,これらの問題に対し,現在,各家庭では問題発生後,応急処置的な対策を行なうのみで,抜本的な改善がなされていないのが,実態ではなかろうか。
かかる観点より「考える葦」であるわれわれ人間は,無限の頭脳を駆使して,社会の原点である家庭生活のあるべき姿をデザインし,より価値ある家庭生活を営むよう,あらゆる面で改善することが,いかに大切であるかを真剣に考える時代を迎えていると言えよう。
そこで私は,VE手法を家庭へ導入することに着眼し,「家庭のVE」と題して約2年間にわたり研究し,実施してみた結果,全支出の20パーセントの経費節減を行なうことができたばかりでなく,家庭生活のあるべき姿をデザインし,ほぼ満足する結果が得られたので,その実施内容を説明し,皆様のご批判を仰ぎたい。
最近における企業経営は,わが国の経済構造が,高度成長から低成長に移行したことにより,量的拡大から質的充実への大きな変換を迫られ,厳しさを増しているが,この中でVAの果す役割りは,ますます大きくなってきた。
今やVAは,企業収益を改善するための重要なツールとなっているが,VAの中心的役割りを演じるべき手法の一つである機能分析は,使う側での勉強不足や受入れ体制の不備はあるものの,必ずしも実践的であるとはいえない。
これらの背景から,実践ベースでの実用度の高い機能分析手法の確立を目的に,機能評価に焦点を合わせた手法の開発を行ない,有効性が確認されたので紹介する。
本手法は,現流品を対象としたものであり,この主な内容は,機能評価に必要な情報を,VA前にコンピュータにより作成し,これらの一元化されたデータより求められる比較的具体性のある期待メリットと,改善余地件数により,展開する実践的機能評価手法である。
ある人がステレオを買った。この単純と思える行動の中には,実はその人の買うという欲求心が,複雑なコンピューターのごとく動めいて,最終的意思決定がなされている。この欲求心の中でも,外観品について焦点を絞るならば,外観品を選択する動機は大きくいってその人が持つVision,Utility,Economyと考えられる。この中で非数量的なVisionは,流行,合理性,快適性や時代性,そして個人,年令,性別,地位などの社会性,技術,材質,形態,色彩などの造形性が背景にある。このようなVisionは人によって様々であるが,できる限り数量的にとらえる必要がある。
そしてVision,Utility,Economyの関係を,適格に把握するのが外観品VEを進める前提である。
われわれは,現場すなわち第1線作業所でVEを実践することを目標としてきた。
建設業の作業所は地域的に分散していてしかも移動性があり,そこで行われる業務上の判断は迅速性が要求されるので,進行管理あるいは日常決定の大部分は組織効率上母店でなされることは少なく,作業所自身にゆだねられている。人的配置も社員の80%は現場配属であり,企業の特徴は人中心主義であり,現場中心思考である。したがってVE活動においてはとくに第1線作業所で,きめのこまかい展開をする必要がある。
この観点から,どこででも,短時間ででき,しかも,BESTよりBETTERをねらうという主旨のもとに開発された「3時間VE」については既に発表したところである。あわせて,現在全社員のおよそ80%がVE基礎教育(FVEスライドと実習を中心とした2日間のFVE実践コース)を受けて,VEの考え方を理解しているので,現場で行なうVE活動は概ねスムーズにいっている。
今回は,過去2年間にわたって実際に現場で実施した3時間VEをフォローし,実践面でのテクニックとその問題点について細部にわたって検討を加えた。その結果とくに前回の論文では触れていなかったVE対象の選定方法,3時間VE会議の諸問題,VE会議後施工を完了するまでの手順を中心に,われわれが実際に推進してきた方法を体系化し報告するものである。
建設業への,VE手法の導入についての問題点,およびその具体的な手法については,筆者らによって既に発表したところであるが,今回は,その後の建設業におけるVEの実践を通じて得られた新らたな問題点,およびその解決のために考えられた手法,具体的なアプローチの例について発表する。
この論文はその第一報として,個別受註産業のなやみの一つであるVEの繰返し効果がないこと,そのために,VEは最大の努力を傾注して,最大の効果をねらうというやり方について,企業としての投資効果比率が必ずしも良くないという疑問がもたれていること,そしてこのことについての原因を考えながら,VE効率を簡単に予測出来る方法を考え,BestよりBetterをねらえという筆者らの考え方について述べることにする。
産業界でのVEの適応性は非常に高く,幅広く普及してきつつある。厳しい経済事情の中で建設業界においても,業者側の立場として利益を求めることは必然であり,より高い利益を得ようとする努力の中でVEがこれを満足する1つの手法としてクローズアップしたことは,大きな発見であった。
営利会社として企業利益をあげるためには,少人数のVErで,しかも短時間に問題解決をすることが要求され,VE効率を高めることが最大の関心事の1つである。このことは少ない投資でより高い効果を求めようとする努力であり,前編第1報で述べている。
近年,建設工事の現況は,工期が短縮される傾向にあり,受注即着工が要求されるため,VEによる検討を加える余裕時間はほとんどなく,また,企業の性質上,作業所は各地に分散し,しかもこれらの作業所に配属される職員は少人数の編成が多い。したがって作業所で発生する問題を解決しようとするとき,限られた人員で極く短時間に処理しなければならず,そのための良きリーダーに恵まれることは少ない。こうした環境でVEを進めて行かざるを得ないのが現状である。
このような状態に対処するため熟練したリーダーがいなくても「VEが短時間に効率よく展開できる方法」を研究したところ,3時間で一応の結論が出せるようなVE手順を開発して,実用化することができた。
むろん,3時間で最良の改善案が得られるとは考えられないが,企業のおかれた環境の中でVEを行うためには,BESTよりBETTERをねらうという考え方に立ってこの手法を開発した。以下に手順にしたがって説明し,続いて実践活動を報告します。
建設業へのVE手法の導入についての問題点およびその実施例については,既に発表したところであり,さらに建設業の現状に適したVEの考え方,およびVE手法も開発し実用化していることは既述のとおりである。
しかし,建設業の体質の特異性のため,実際にVEを現場に適用して企業に利益をもたらすためには,VEを現場向きに消化して,建設業に適したVEの考え方,VEの手法を考えていかなければならない。この論文では我々が実際の適用例の中から,建設業に適したVE手法を考えて開発してきたものを,実例をもとにして説明することにする。