論文カテゴリー: VEの適用局面 118件

建設各社が,いろいろな管理技法を導入して,経営の効率化をはかる動きは,近年とくに目立つ傾向にある。

「労働集約」,「一品受注生産」,「重層下請」といった特質をもつ建設業界にも,各社なりに工夫を凝らして管理技法の導入,展開が行われて,最近の競争激化への対応がなされている。

わが社は,建設業界では,はじめてVEを導入して,12年以上経過した。その間の社内蓄積にもとづき,この報告文は,建設工事における効率的なVEアプローチについての考察を行い,問題解決への実務手法としての展開を試みたものである。

当社にVEが導入されて以来,約13年を導入期,普及期,展開期,発展期,結実期と分けて振り返ってみると,そのいずれもが,まさに"草の根運動"の連続であった。

その成果や活動の状況については,今までの大会でも多数発表したところであり,それらを含めて,これまでの経過を,概略年表式に一覧化すると,表-1のとおりである。この小論は,これらの経験を通じて,今後の一層の発展を期してまとめたものであり,建設工事におけるVE活動の問題点,建設工事の中のVEの位置づけ,そしてそれらVE活動を踏まえた今後の方向に対する提案について述べるものである。

当社でVEを導入して13年になる。現在,設計積算はもとより,事務部門においてもVE活動を行っている。しかし総合建設業(ゼネコン)である当社にとって,VE活動の核となり,また初期より一貫して取り組み発展させてきたのは"作業所VE"である。建築工事の一角を担うわれわれ設備部門においても,昭和40年後期よりVEを本格的に導入している。当初は,VEの浸透を主眼とし建築部門同様に,施工上の諸問題を解決する技法として導入をはかっていた。その後,ゼネコンにおける設備工事管理の場合の特殊性から,施工上すなわち生産面でのVEの活用に加えて,建物をシステム集約の製品としてとらえた場合の,製品面に対するVE導入が重要性をおび,その結果業務遂行過程で発生する諸問題を,効率良く解決する技法としてのVEが定着し,現在に至っている。製品面に対するVEの導入が,ゼネコンの設備工事管理にどのような効果を発揮するか,その意義と成果の一端をここに発表する。

昨今の経済は,原油高騰に端を発した価格の変動が著しく,企業収益が大きく,これに左右され,一歩対応を誤ると,直ちに業績の大幅な低下をもたらす危険が周囲に満ち溢れている。

こうした環境下では,VA活動を一層活発化すベく,企業幹部自らが,これを参画推進して,VAを真に日常の業務として定着化させると共に,活動の領域を広げ,底辺を拡大させねば,生き残ることが難しいことはいうまでもない。

このような背景の下に,当工場ではVA活動の範囲,参加メンバーの選定,活動の対象,活動期間,活動の責任と権限範囲の設定,一般ライン組織との関連などを明確化しつつ,毎期のVA予算の達成に邁進し,目標完遂に全工場あげて取り組んできた。

TFP活動は,毎期,製品VA,製造VA,物流VA等に区分されて展開されているが,その中でも,とりわけ経済情勢,すなわち物価動向,需給動向との関連において,成果が大きく変動しがちな分野に,部品VAがある。

過去,部品VA活動を続けてきた結果,こうした傾向に気づき,これを何とか打破して,外部の変動に左右されない部品VA成果をあげるため,いろいろと工夫をしてきたが,今回は,その過程について報告するものである。

コンピュータは,現在から次代にかけての花形製品として脚光を浴びているが,その環境条件は,技術革新の速さからくる厳しさが存在する。

性能の大幅な向上と同時に,急激な価格低落があり,そのためにコストパフォーマンスの改善スピードは大きい。

一方,コンピュータ製品の大型化と使用範囲の拡大から,その信頼性に対する期待も無限に大きくなりつつある。

つまるところ,高品質を維持しながら,如何にして原価低減をなし遂げるかという普遍的なVAテーマに到達するわけである。

高度経済成長がもはや,期待できない現状では,限られた市場のなかで,自社製品のシェアを,いかに伸ばすかがポイントとなり,VA活動の重要性が一段とクローズアップされてきた。

したがって,VA活動は,製品,製造,物流と,漸次その対象を拡大し,単に,ハード面ばかりでなく,ソフト業務にいたるまで,あらゆる分野にわたって適用されようとしている。

VAに従事するわれわれにとっても,単に製品知識ばかりでなく,多岐にわたった能力が必要とされているが,個人の能力のみに依存していたのでは,もはや限界に達し,また,効果も小さいことから,当事業所では,対象プロジェクトについてチームを編成し,総力を挙げて推進する,TFP (TASK FORCE PROJECT)活動を主体としたVAを推進している。

しかしながら,このTFP-VAにおいては,各関係部署の専門家を動員して,一定期間専従させるため,いかにして効率的なVAを推進するかが,最も大きな課題となってきている。

本報告は,この課題に対処するため,われわれが実際に採用してきた手法について紹介するものである。

当佐和工場は,スタータ,気化器,カー・エアコン等を製作する自動車機器専門工場として,昭和43年に設立されて以来,顧客第ーをモットーに,全従業員の頭脳を結集したVA/VE活動を展開してきた。

しかし,昨今の国際情勢をみるとき,原油の高騰に呼応した省資源・省資材VA努力をより一層強化し,この難局を打破しなければならない。

すなわち,原材料を輸入に依存するわが国の企業において,国際競争に打ち克ち,収益を確保してゆくには,輸入資源を最大限に有効活用することが,今や,国家的重要課題となっている。

このような中で,使用素材量削減VAも,軽量化・薄肉化……等の手段は,既に設計段階で行われる当然の業務レベルとなっている。

今回,使用素材量削減VAとして,「スクラップ・リサイクリング」に着目し,スクラップの有効活用をはかったリサイクリングVA手法を開発した。本手法は,スクラップの発生情報を的確に把えるため,コンピューターへ登録し,効率的な活用につながるための「スクラップ活用情報システム」の開発によって,実用化が可能となったものである。この情報を,設計・開発時点に適用することにより,大幅な省資源・省資材がはかれるものである。

以下,その内容を紹介する。

昭和48年のオイルショック時における,石油関連資材の調達難は,当社もその例にもれなかった。特に,家電品を担当する当工場においては,量産工場であるがゆえに資材物量の確保難,及び材料価格の大巾値上り等,かなりの影響を被ったのも記憶に新しい。

更に,昨年のイランの政情不安をきっかけに生じた,OPEC(石油輸出国機構)の再々にわたる値上げ攻勢(第2次石油危機)の行きつくところは,原油価格20$/1BL以上は必須という状況下にあり,54年度を迎えて原油動向は物量,価格とも増々混迷の度を強めているといえる。

我々は,この稀少資源である石油関連資材を,いかに効率よく有効活用するかを最大テーマと考え,これにチャレンジするVA活動を「省資源VA」と名づけて展開した。

以下,具体的アプローチ内容について報告する。

利益指向にもとづいた目的的情報活動と,その最大限の活用により,現状打破へのシステム的VEアプローチは如何になすべきか。

利益の基本要因は,原価,売価,販売量であるが,これは(hard ware VE)と(soft ware VE)の総合システムVEで達成されるべきものである。

総合システムVEは,組織的な努力と運営により成果をみるものであるが,更に,トップの戦略決断に待つものが多い。

VEの定義では「VEとは,最低の総コストで必要な機能を確実に果たすために製品とかサービスの機能分析と改善に注ぐ組織的な努力である」と唱えて,事務の分野にもVEが適用できるとしている。しかしながら,製品などのハードな対象と比べて,事務に対する適用例は少なく,手法上の問題点の解明についても,十分になされているとはいえない。

事務のVEに対する重要性が認識されてきているにもかかわらず,一般には,経費節減運動に見られるような長距離電話の規制とか,コピー用紙の節約などの節約ムードの醸成を促すといった一時的なコスト低減策がとられているケースが多い。

フジタ工業においては,組織の拡大と情報量の増大に伴なって事務及び手続きの複雑化が進行している。一方,事務・技術を問わず,全社員に対してFVE実践コース(2日間の研修)が実施されたことと相俟って,特に事務部門からも,VE適用範囲の拡大が要請されてきた。

今までにとり上げられたものは,作業所事務の軽減に関するもの,各種事務及び手続の改善に関するもの,組織に関する提言などであるが,本論文では,事務手続の改善について,特に手法の展開の仕方を中心として試案を提起したい。