論文
近年,電子化製品の急増により,製造原価に占める電子回路のコストウェイトが高まっている。企業経営の収益改善にとって,電子回路のVEアプローチが重要となってきた。
本論文は,電子回路のVEの展開について研究したものであり,説明を容易にするために計量機器の具体例をとりあげて記述する。そのため,本論に入る前に,計量機器の電子化移行について説明しておく。
計量機器は,その長い歴史のなかで,これまで機械的な方法(回転力を利用したもの等)によって,その機能を達成しているものであったが,新しい要求に対応して,電子的な方法によって,その機能を達成するものへと着実に移行している。これは,電子回路が,機械につきものの摩擦抵抗を持たないことと,機械系では困難な判断機能を容易に持たせることができるなど,高精度化や多機能化に適しているからである。
しかしながら,単機能の計量機器では,依然として機械式のものがコスト面で優位さを保っているのも事実である。これは,機械式が長期にわたって,その時代にマッチした方法でのコスト改善努力が払われてきたのに対し,電子式は,機能の拡充に力点がおかれてきたためである。
計量機器の生産にたずさわる者は,この事実に目を向けて,VEの成果によって無限の可能性を持つ電子式の優位性を最大限に活かした計量機器を提供するという大きな責任を背負っている。
そのためには,VEの成果を事業戦略に結びつけることであり,VEは,回路技術者の技術談議に終始することなく,企業の利益計画,商品企画に沿って推進することが必要である。VEは,また異なる分野の専門家の集団によって,見方を変えた角度からの発想が必要である。
本技法は,このような観点より,製品戦略に立脚した電子回路のVEアプローチの方法を体系的にまとめたものであり,回路網の機能に対応した最適な方式を生み出すことを目指している。また,機能定義に回路ブロック図を活用したこと,アイデア発想を促す電子回路特有のVE質問を盛り込んだこと,およびアイデアの評価方法を具体化したことが特徴である。そのため回路技術者と他のメンバーが一体となって,VEに取り組みやすい技法となっている。
目次
- はじめに
- 1. 計量機器の電子回路の特徴
- 2. VEのステップ
- 3. VEの展開
- 3-1 情報の収集
- 3-2 目標設定
- 3-3 機能定義
- 3-4 機能設計
- 3-5 アイデアの評価
- 3-6 代替案作成
- むすび
発行年
1985年 VE研究論文集 Vol.16著者
- 株式会社東芝
柳町工場計器部IE担当 - 石川藤雄
カテゴリー
- VEテクニック
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