論文
VEは,機能定義段階におけるFASTダイヤグラムや機能系統図の作成とか,機能評価段階におけるFD法やDAREシステムの応用,あるいはDTCといったマネジメント・システムによって,管理技術としての形態を整え,世界的な発展を続けている。
しかし,これらの技法を正しく理解し,完全に実践するには相当長期間の年月を要し,専門のバリュー・エンジニアでなければ活用しにくい面がある。
また,FD法などの機能評価法によって,コスト意識の低い設計者などへの動機づけをしようとするやり方は,表面的な形だけのVEになったり,逆に,意識の高い設計者からは客観性がないと,VE技法に疑念が持たれる結果になりやすい。
そのために,せっかくのすぐれたVE技法の真価が発揮されず,VE活動の拡大・定着化のネックとなっている場合も,多く見受けられるが,これらはVE思想や技法の本質と適用方法を誤っているからである。
さらに,今日のVEは,開発日程の短縮,過大な改善目標,対象プロジェクト数の増大など,非常に困難な条件のもとでの活動が要請されているのに,それに対応し得る技法の開発が遅れている感がある。
このような観点から,ここに体系化した「実践的VE技法」は,
①VEの本質は,顧客の考え方と同じ立場での価値判断に基づく「創造技法」であることを再認識し,
②特別に習熟したバリュー・エンジニアのための技法ではなく,設計者の誰もが「容易に実践できる効果的で効率的なVE技法」をシステム化し,
③専任のタスクフォースプロジェクトではなく,コストマネジメントとの融合による「日常組織主体のVE活動」を展開する。
ことにより,
厳しい経営環境を克服するために全員参加型の,いわば,QCサークル活動のVE版としてのプログラムである。
そして,その特長は,
①日常組織での企業集団ぐるみの推進体制により,VE技法の有効性を高めながら容易化が図られている。
②機能的なダイヤグラムの「コスト構成図」により,VEの原点である機能やコストが把握・比較しやすい。
③創造的機能を案出しやすい「要求機能の洗練化」により,製品差別化による付加価値向上がはかりやすい。
④体系化された「技巧的な機能評価技法」により,改善の極限を追求するためにVEの真価が発揮しやすい。
⑤ 「簡易VEワークシート」や,「VEチェックリスト」,「アイデアバンク」,「コストテーブル」などのVEデータとか,コストマネジメントシステムとの融合による効率化がはかられている。
ということができる。
目次
- 1. はじめに
- 2. 技法開発の背景
- 3. VEの本質
- 4. 実践的VE技法の解説
- 4-1 VEジョブプランとその概要
- 4-2 VEチームの編成方法
- 4-3 機能定義とその方法
- 4-4 機能評価とその方法
- 5. おわりに
発行年
1984年 VE研究論文集 Vol.15著者
- シャープ株式会社
本社資材部VE推進担当 - 平田章
カテゴリー
- VEテクニック
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