論文
VEが長い歴史の中で着実に発展し,企業経営における収益改善の大きな柱として位置づけられるようになったことは,まことに喜ばしい限りである。
しかし,この事実は,とりも直さず,VEに携わる人が企業の利益計画に結びついたVE目標の必達という大きな責任を背負っていることを意味するものである。
一方,企業の利益計画に必要なVEの成果を,長期間にわたり継続的に確保することは,なかなか困難なことである。
VEの成果を継続的に得るためには,次の3つのことが大切である。
まず第1は,「この製品のVEはもう限界にきた」という心理的障壁の克服である。同一製品,または同一機種の繰返しVEにおいては,枯れた製品,すなわちVEのタネ切れという図式が無意識のうちに心の中に障壁となって形成されるからである。
しかしVE努力を傾注してきた製品の製造原価は,着実な歩みをもって低減の軌跡を描き続けている。この事実は,製品は決して枯れるものではなく,顧客の要求に対応し,強い生命力をもって変化していることを物語っている。
心理的障壁の克服には,VE活動の実績成果という事実を通して「製品は決して枯れるものではなく,枯れるのは,その製品をとり巻く人間の頭の方である」ということに気づくことが必要である。
第2は,新しい角度からのVEアイテムの発掘である。従来のアプローチ方法を繰返すマンネリVEでは,必要な目標利益の達成は難しい。
継続的にVEの成果を得るためには,VEアイテムを発掘する新しい技法の開発が必要である。
第3は,VEに必要な新しい知恵と情報の調達範囲を,更に拡大することである。
VE技法をよく理解している人達ばかりでVE活動を実施すれば,非常に能率的ではあるが,情報の質の量が,かなり限定される。日常業務においては,VE技法にあまりなじみがない,より広い分野の人達がもつ知恵と情報を,VEアイテムに結びつけるためには,これに適したやさしい発想技法の確立が必要である。
本論文は,新しい観点,視点または角度からVEアイテムを発掘する方法,しかも,それがVEの初心者にも容易に活用できる方法の確立を目的として研究したものである。
この結果,われわれ日本人が常に使用している左脳の漢字を補助的なキーワードとして使用し,機能中心に右脳に,いろいろなイメージを描き,有効なVEアイテムにつながるようなヒントをつかむ方法を考案した。
本技法の大きな特徴は,発想の観点,視点または角度として単一漢字をキーワードとしていること,及びこの漢字と機能定義の動詞を併用し,2つのキーワードによって大脳の記憶情報を検索することの2点にある。
目次
- はじめに
- 1. 漢字発想法の発想メカニズム
- 2. 漢字キーワード
- むすび
発行年
1984年 VE研究論文集 Vol.15著者
- 株式会社東芝
本社資材部 - 小川政夫
カテゴリー
- VEテクニック
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