論文
建設VEの技法は設計,施工(作業所),運搬,協力企業へのアプローチなど,日本VE協会からも多くの資料が発表されている。これらは,いずれも諸先輩が,いかに建設業の中にVEをうまく導入していくかを真剣に研究してきた貴重な資料である。
そこで建設業の特徴となる要求をあげてみると
①個別受注産業であり,個々の設計により生産されている。
②ー商品の寸法が大きい。
③一商品の金額が高価である。
④ー商品のライフサイクルが長い。
⑤工場ともいえる生産現場が,一商品毎に変り,一定していない。従って生産設備に該当する仮設物の構築,撤去もー商品毎に行われる。
⑥屋外作業が多く,労働環境は必ずしも良くない。
⑦商品の構成材料が極めて多い。
⑧アッセンブリー産業である。
⑨設計図書が与えられ,生産だけを受注するものが多い。
以上のような事情が組み合わされている点が,建設業の特徴であるということができる。
すでに発表されている建設VE資料は,いずれも建設業特有の問題点の追求が多く,システム産業として実務を遂行する場合には,これらの技法を,いかにアレンジして効果をあげていくかが重要である。
われわれ建設業に従事する者は,担当セクション単独で行うVEの他に,建設物を作る過程で,各技術者グループ相互の横のつながりにより行われる,いわゆる横断VE(トータルVE)を実施してきた。われわれは,更にすすめて企画設計から施工までの縦の流れを,組織的段階に実施する縦続VEを導入し,これらをジョイントさせ,二次元的にVEを展開していくことにより,VE効果を飛躍的に向上させるVE推進方法を,ここでは,特に"ジョイントVE(JVE)"と称し述べる。
設計施工工事における上記のような横断VEと縦の流れを行う継続VEとは,一つのVEをまとめあげる過程で,VEメンバーの果す役割りに明らかな違いがあり,あえて,これを用語の上でも区別し,その定義を明らかにしている。
建設VEは,一品生産であり1つのVE改善は一つの商品のみに適用され,量産品のような反復効果は,あまり期待できない。そこでVEによる改善内容はベストよりもベターを選び,その分,少しでも多くのVEテーマに挑戦し,改善をはかることが重要である。
そこで一つの工事で,多くのVEテーマを効果的に推進して行く方法として,JVEを提案する。発注者から与えられた条件をもとに,一つ一つのテーマをJVEの考え方により展開拡大させ,より良い製品を作るということは,極めて効果的なことであり,大いに推進すべきである。
以上をまとめると,次のようになる。
TVE(トータルVE):一つのテーマを広い範囲で実施するVE。
JVE(ジョイントVE):一つの製品を作る過程で多くのVEテーマに取り組むVEの推進方法。
目次
- 1. はじめに
- 2. 建築設備における設計と施工
- 3. JVEの提案
- 4. JVEの展開
- 5. JVEの実施例
- 6. あとがき
発行年
1982年 VE研究論文集 Vol.13著者
- フジタ工業株式会社
関東支店建築部設備課 - 森原暉雄
- フジタ工業株式会社
関東支店建築部設備課 - 中島寛
- フジタ工業株式会社
関東支店建築部設備課 - 金川要一
- フジタ工業株式会社
関東支店建築部設備課 - 佐々木保雄
- フジタ工業株式会社
関東支店建築部設備課 - 石毛敏幸
カテゴリー
- マネジメントとVE
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