論文
70年代は物質的充実時代であった。80年代は精神的充実の時代であるといわれている。消費者が60年代・70年代を通じて,追い求めてきたのは,商品の使用機能が主対象であった。これからの80年代は,必需品を中心とした実用的商品群と,生活を楽しみ,豊かにする一連の商品群との二極分化の時代である。後者にあっては,従来の使用機能を中心としたコンセプト作りだけでは,顧客の要求を満足させる事が困難になりつつあると思われる。
また,最近の商品のライフサイクルの短縮化傾向は著しく,特に,生活を楽しみ豊かにするといった商品分野においては,顕著であり,原価構成上の開発コストの比率は,増大の傾向にある。
従って,商品企画段階におけるコンセプトの適否が,市場占有率の増加と収益の向上を大きく左右することになる。
当事業部の主力製品であるヘッドホンにおいては,基本的な使用機を達成する技術的なレベルは,既に高度な領域に達しており,この面での技術向上の抜本的な期待度は低い。むしろ貴重機能や付加機能の適否が,販売高に大きく影響を与えており,コストに占める貴重機能コストの比率は,年々増加している。近年,アウトドア使用の製品が出現して以降,市場は一変して,一段と企業間競争は激化し,新製品の開発ラッシュとなり,製品のライフサイクルは著しく短かくなっている。
このような背景にあって,商品企画段階におけるVE適用(0 Look VE)の確立を目指し,検討,実践した内容について,以降,述べる。
目次
- 1. はじめに
- 2. 0 Look とは
- 3. アナロジーを活用した取組み
- 3-1 アナロジーとは
- 3-2 アナロジーによるコンセプトづくり
- 3-3 アナロジーの効果
- 3-4 具体的アプローチ
- 1) キーワードの抽出
- 2) アナロジーの抽出
- 3) アナロジーの選定
- 4) コンセプトの発想
- 5) 技術シーズの抽出・収集
- 6) アイデア構成
- 4. おわりに
発行年
1981年 VE研究論文集 Vol.12著者
- 松下電子部品株式会社
スピーカ事業部音響機器工場 - 稲垣道雄
カテゴリー
- 開発設計とVE
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