論文
建設作業所におけるVE活動は,さまざまの制約条件のもとにあり,これを一つひとつ克服していくことは,建設業の特色を生かしたVEを生み出すことになる。建設作業所は全国に散在し,一品受注であり,ーつとして同一条件のものはない。また移動性があり,工期も6ヵ月とか1年という比較的短期間のものが大部分である。編成メンバーも1人から数名と少人数であり,その都度,編成替えが行なわれる。工事管理,原価管理はもとより,作業所経営の大部分は,作業所長に委ねられている。このような条件でVEを実施するためには,ベストをねらうより,ベターなものを数多く取り上げるのがよい。この考え方に基づいて,当社では「3時間VE」手法及び,VE対象選定のための「VE計画会議」を作業所において実践していることは,第6回および7回のVE全国大会で発表したとおりである。
現在,新しい作業所においては,次々とVE改善が行なわれ,その実施例はVE部門に報告されたもののみで,およそ,2,000件に達している。これらは,定期的に評価され,よいものは「VEスポット」にまとめられ,全作業所に配布されている。しかし,「VEスポット」はVE実施例のごく一部分であり,これらを含めたVE実施例は,今後も増え続けていくものである。
以上のような特色と実績を踏まえて,作業所VE活動をさらに実のあるものにし,質的にも転換をはかるためには,この莫大な実績データとしてのVE実施例を,縦横無尽に使い切ることが,きわめて重大な課題となる。VE情報としての手持ちVE実施例を,システム的に活用することは,今後の作業所における工事管理に欠かせないことになると思われる。また,とくに少人数作業所において,従来の「3時間VE」を補完する手法としての「担当者VE」を活用することも有効である。以下に,主としてVE情報側面から作業所VE活動の現状と問題点を述べ,その解決策と要点を工事管理に即したVEの展開として詳述する。
目次
- はじめに
- §1. 作業所を中心としたVE活動の現状
- 1. VE計画会議
- 2. VE会議(3時間VE)
- 3. 改善案の実施とフィードバック
- §2. 作業所VE活動の問題点
- 1. 作業所VE推進上の問題点
- 2. VE計画会議の問題点
- 3. VE会議の問題点
- 4. 改善案の実施とフィードバックについての問題点
- §3 工事管理に即したVEの展開
- 1. 問題点の具体化と改善ヒントの重視
- 2. 他の作業所のVE実施例の活用
- 3. 目標額の設定
- 4. 担当者VE
- 5. VE担当者の作業所巡回
- おわりに
発行年
1978年 VE研究論文集 Vol.9著者
- フジタ工業株式会社
技術本部 建築統括部VE課 - 岩崎武俊
- フジタ工業株式会社
技術本部 土木統括部VE課 - 小田勤
カテゴリー
- マネジメントとVE
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