論文
本論文の主眼とするところは,次の3つである。
ひとつは機能系統図についてである。VEでは機能系統図が,本来,非常に重要な役割を持っていると考えられるにもかかわらず,単に形式的なものにとどまったり,あるいは,せっかく時間をかけて作っても,後の代替案との結びつけが明確でないという現象が見受けられるが,これは機能系統図の作成の仕方に一因があると考えられる。
VEにおける機能定義,機能整理のひとつの大きな目的は,それによって,物事の本質を考え直すことにある。すなわち物事の原理原則を,しっかり認識することが,真の独創力を導くことになるからである。従って機能系統図も,その趣旨にそっての検討がしやすく,かつ,そのプロセスを明確に出米るものが望ましい。
そこで機能系統図を目的,手段の関係で追求して作成することには変りないが,その機能分野を基本的な原理にかかわる本質的機能分野と,機能の形への転換に関わる形態的機能分野,さらに,その形態的機能分野で,ある特定の手段,構造をとったがために派生的に発生した付帯的機能分野という形でとらえる方法を提唱し,その考え方,VEをすすめる際の注意などを,ひとつの事例をもとに,具体的に述べている。
第2番目は,製品を構成する各種の材料,部品が,以上の機能系統図のどの機能分野に,どの程度関与し,またその時のコストとの関係はどうかということ,かつ,その状況からVEによって,改善すべき方向,あるいはVEの結果,それらが,どう改善されたかをvisibleにとらえるため,新たにバリューベクトル及びバリューベクトル図という考えを導入し,展開した。なお価値標準というのは,このバリューベクトルでいえば,そのコンポーネントを作ることに相当すると考える事が出来る。
第3番目はバリューベクトル図とコストテーブルの関連について述べている。バリューベクトル図による機能の材料,部品への割りつけ変更の検討,コストテーブルによるその可能性の追及は,前者の定性的機能の後者によるその定量化という面において,この両者の結びつけは,VEにとって非常に重要であると思う。
では,以上の骨子に従って論をすすめることにする。
目次
- 1. まえがき
- 2. 基本原理と機能系統図の関連
- 2-1 基本原理にさかのぼる
- 2-2 本質的機能分野
- 2-3 機能の定量化と達成手段
- 2-4 形態的機能分野
- 2-5 付帯的機能分野
- 2-6 制約条件の追及
- 3. 機能とコストの追求とバリューベクトル図
- 3-1 機能とコストの追求
- 3-2 バリューベクトルとバリューベクトル図
- 4. バリューベクトル図とコストテーブル
- 5. むすび
発行年
1977年 VE研究論文集 Vol.8著者
- 株式会社安川電機製作所
VE推進室 - 吉原晴男
- 株式会社佐尾電機工業所
- 藤井五成
カテゴリー
- VEテクニック
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