建設産業におけるVEの適用

論文

近年,社会経済の変動は,一段とその激しさを加え,国内外を問わず,荒波に直面している。建設産業においても,労働力の払底と労賃の高騰,生産性の遅れに加えて,金融事情の悪化などにより,企業収益の減退が余儀なくされている現状である。一見,はなばなしく感じられる建設産業も,他の装置産業(自動車,電気等見込み生産を行なっている産業)に比べると,企業の近代化は,非常な遅れを見せ,技術の改革は遅々として進んでいなかった。

体質改警にあたり,科学的な管理技法の導入も,いくつか試みてはいるものの,業態の特殊性にさえぎられ,他産業に見られる程,定着しているものは少ない。企業の経営効率を高める1つの手段としてVEが登場し,建設業に,その適用面を見出したのも,数年前にすぎない。

建設企業が過去の因習を打ち破り,企業改革に乗り出したのは,まだ新らしい事実であり,その息吹きは大きくなりつつある。生産面に技術革新を展開することと,経営面において体質改善を行なうことは,必須の急務であり,業界あげて必死の努力を続けている。

ここに産業能率短期大学のご指導を受け,建設業の問題として導入以来,諸方面にわたってコストダウンの効果が大きいことを知り,米国キングスコット社のA・J・デリソーラ氏の実践活動を結び合わせ,われわれなりに,適応性を求めて手法を展開している。

今回は,これらの実績をもとに,建設業での適用と今後のあり方について述べたいと思う。

目次

  • 1. はじめに
  • 2. 建設業の業態の特色
  • 3. 建設業のVEのあり方
  • 4. VEの適用とその展開
  • 5. 建築工事における実施例の概要
  • 6. 結論

発行年

1971年 VE研究論文集 Vol.2

著者

フジタ工業株式会社
技術開発センター 技術指導部
松原芳明

カテゴリー

  • VE導入と定着化

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