論文
IEは衆知のごとく,テーラーの科学的管理法にはじまる伝統的管理技法であり,わが国に導入されてから久しいが,近年,賃金の高騰,人手不足による省力化の必要性から,ふたたび見直されてきた。
また,VEを進めていく過程で,すでにIEの基盤のあるところは別として,一般に標準時間の未確立によるコストデータの不備が改めて認識され,遅ればせながら,IEの導入に踏み切った企業も少なくない。
以前,わが国が,まだ人手不足の経済でなかった時代には,IEのニーズはあまりなく,むしろQC,VEを重点的に採り入れた企業のほうが多かったようである。
全社的に,ただ1つの管理技法に努力を集中している時は,問題にならなかったが,途中から別の管理技法を併行して導入するとなると,企業によっては,それらの間の関係をどのように位置づけ,理解,統合したら良いか混乱することも十分にあり得る。とくに親企業から種々の管理技法の導入を勧告されても,中小規模の協力企業では人材も少なく,なおさら上記のような事態がみられるのではあるまいか。
この問題は,IEをどのように定義するかによっても,取上け方が違ってくる。VEをはじめ,多くの管理技法は,広義のIEにふくまれてしまうが,それでは主題の解決にはならないので,ここではIEを,狭義のIEすなわち,作業研究に限定し,VEとの関係を取扱うことにする。
どのような管理技法にしても,時代とともに,適用の場所,対象,時期,要求に応じ得る範囲を拡大し,それぞれ精緻な手法も漸次,開発されて内容が豊富になり,往々にして,あたかも1つの管理技法のみで,あらゆる経営管理上の問題が解決できるかのように信じられることがある。
しかし,管理技法は,あくまで手段であり,それ自身は目的たり得ず,また,1つの管理技法のみでは限界があることも否定できない。すなわち,それぞれの管理技法が相補関係にあることを理解し,各技法の利点を良く認識し,企業目的のためにうまく統合活用してこそ,はじめて意義がある。
この論文では,プロジェクトワークを中心にして,IEとVEの特徴を考察し,とくにIEの場合,問題定式化のフェーズが重要であることを指摘した。そして問題解決のジョブプランを基本とし,これに手法を組み合わせたWSS方式による教育訓練プログラムを開発,実施したところ効果が認められたので,統合のあり方を方向づける一例として,その内容を提示する
目次
- 1. はじめに
- 2. IE. VEの相異点
- 2.1 適用対象
- 2.2 プロジェクトの選定
- 2.3 実施手順
- 2.4 接近方法
- 2.5 システム概念
- 2.6 手法
- 3. 考察
- 4. 問題の定式化
- 5. IEワークショップセミナー
- 6. まとめ
- 7. おわりに
発行年
1970年 VE研究論文集 Vol.1著者
- 産業能率短期大学
経営管理研究所 - 高橋正三
カテゴリー
- マネジメントとVE
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