論文
VE実施計画における機能評価の段階は,VE活動の思考展開を特徴ずける重要な過程であると考がえられる。機能を評価することの目的は,つぎの3項に要約される。
①改善目標の設定,②低価値機能分野の確認,③改善活動への動機付け。
しかし,機能評価に対する一般的理解は,①にのみ重点がおかれ,②,③に対する理解は極めて薄い。もともと,機能評価は革新を予測することであるから,絶対的達成目標を設定することは,困難なことである。厳密にいえば,それは永久にみつからないかもしれない。なぜならば,絶対目標の設定が,機能評価によってなされるとするならば,そこには,すでに機能達成の代替となる具体的設計が裏付けされることとなり,未知への挑戦としての目標の意味が失なわれてしまうからである。したがって,機能評価による目標設定は,改善能力を,どれだけの確度で予測し得るかに期待がかけられているのである。こうした技術予測の研究は,未来学研究の一課題として盛んに思索されている。たとえば,OECD科学技術顧問,エーリッヒ・ヤンツの分類による直感的手法,フィードバック手法,探索的手法,規範的手法などがあり,ランド研究所によるデルフィ一法は,かなり有力な方法として利用されている。しかしいづれの方法も,目下のところ確度の高い,きめ手になるようなものは見当らず,いわば,あいまいな形で予測せざるを得ないのが実状である。VEにおいても,各種の方法が提示されてはいるが,同様である。それがためにVEにおいては,機能を評価すること自体,意味のないものとしてしまう傾向がある。極端にいえば,まったく省略されてしまっているともいえる。機能評価を目標の設定ということにのみ主眼をおくとするならば,それも,やむを得ぬことかもしれない。しかし,評価活動の本意は,その結果である評価値(改善達成目標の設定)そのものを得ることもさることながら,それ以外に,その過程にこそ,システム設計上の基本的姿勢が認められ,改善行動の動機を得ていくところにあるといえる。したがって,機能の評価を改善目標の設定のみ,その意義を認めるといった考がえかたは,価値保証活動推進上の大きな支障とならざるを得ない。この問題を解決するためには,機能評価活動の意図するところの正当な理解と,より現実的な評価テクニックの開発が期得される。そこで,本論では,問題解決への一手法として,機能レベルの把握による評価方式を,仕様変更の方向性の予測を交えて,これまで各企業で試行してきた結果を中心として,まとめるものである。
目次
- はじめに
- 1. 機能評価の重要性
- 2. 機能評価と改善行動の動機
- 3. 機能評価の手がかり
- 4. 機能評価の方法
- 1) 改善範囲の推定
- 2) 着想変更の設定
- 3) 基本機能と2次機能の区分
- 4) 改善目標の設定
- 5) 達成率の評価
- 5. 結論
発行年
1970年 VE研究論文集 Vol.1著者
- 産業能率短期大学
経営管理研究所 生産システム研究室 - 土屋裕
カテゴリー
- VEテクニック
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