これまでの社会を築いてきた資本主義は、今後徐々に衰退すると予測されている。そして、次の時代の経済パラダイムとして「共有型経済(シェアリングエコノミー)」が主役になるといわれている。生産活動は大幅に減少し、物・サービス・場所などを多くの人と共有・交換して利用する社会が訪れる。
消費行動はモノからコトへとシフトし、全ての企業がサービス業になるといわれる時代には、新たなサービス創出に取り組むことが重要となる。本稿ではサービスの創出をテーマとして新たなVE検討手順を提案するものである。まず、検討の入り口として困り事を抽出し、それを深掘りすることによって、サービス創出の切掛けを発見する。従来の検討手順のようにモノだけに着目するのではなく、ヒトとモノとの関係に加えて、さらに社会環境の変化にも着目する。時間、空間、社会的環境などが常に変化し続けていることである。
ヒトとモノはその影響を受けるために、モノの機能が全く働かなくなることが考えられる。その対応策として、モノの更新に多大な資源とエネルギーを投入するのか、新たなシステムの構築で対応するか、その選択が迫られる。本稿では、後者の方法について提案するものである。
製品は、その製品に作り込まれた機能がその目的を果たすが、当社の保守サービスという商品は,そこに働く人がその目的(目標)とする機能を果たしていくことに特徴がある。この所期の目標を達成していくには、各職場の人が目標を認識し、働きによって成果をあげていかねばならない。
目標達成に必要な機能は、動機づけをする機能、運用を図る機能、評価をする機能および支援をする機能の4つを具体的に伝え、行動する機能である。これら4つの機能を幹部、VE推進センターおよび各職場が実践した結果、定量的成果として目標値を達成し、定性的成果として経営効率の向上を目指す礎となる新しい企業文化、風土を築くことができる。
市場では、ソリューションサービスについての必要性が叫ばれており、これへの対処として、各企業はいろいろな方策を検討しつつある。
本研究もこのための1つのアプローチとして、この分野にVEを適用してみた。それは、提案営業の一環として、問題点がモヤモヤして具体的に提示できないお客様に対して、お客様の価値を指標化して定量的に定義・把握し、お客様の潜在的問題点を抽出する。そしてそれをベースに、改善策を創造し、提言していくための手法である。
当社は情報処理会社であるが、本手法により、お客様の問題解決のために、適切な情報技術を効果的に提案し、提供することができ、お客様が期待するソリユーションサービスが実現しつつある。
ソフトVEの機能定義方法について、簡易で、BPR(ビジネスプロセス・リエンジニアリング)への拡張性のある方法を提案する。それは、業務規定から、目的・手段の機能をセットで抽出するという方法である。この方法によれば、機能分野の判定が容易、かつ、機能の定義も、制定の目的の項から簡単に抽出できる。規定には、品質マニュアルで示すべき、標準と、その具体的作業手順や記録のとりかたが、示されている。従って、この機能系統図を品質作り込みフローの段階毎のアウトプットについて作成すれば、品質マニュアルを基礎とした標準化が実現できることになる。さらに、各機能の手段の妥当性・価値を検討し、VEを進めれば、手段の合理化、すなわち、BPRが、可能となる。
時代とともに顧客のニーズが高度化・多様化している。それに応えるためには、従来の調達方法では対応が難しくなってきた。従来の調達業務では、主に作業所からの資材、労務および外注の購入依頼により商談し契約を行ったが、顧客および社会のニーズに応えるには、事業の流れの各段階で、営業・設計段階まで川上にさかのぼり、顧客のニーズ情報を収集、分析をしてVE手法を用いて改善し提案する方法を取り入れる必要がある。
特徴としては、従来の機能系統図と調達業務より作成した機能系統図を重ねて活用する方法を取り入れている。後者の機能系統図を調達機能ツリー図と名付けた。この調達機能ツリー図を用いて改善対象機能を決めたり、機能評価およびアイデアの評価に活用する方法を取っている。
また、提案方法では顧客に改善案を納得していただきやすい方法を取っている。その活動結果を情報として蓄積し、他の工事物件で資料として活用が出来るようにしている。
以上をVEステップに盛り込み適用したところ数多くの良い効果が得られた。今回、論文にまとめ報告する。
ハードVEに比べて,ソフトVE活動は困難な面が多い。VEでは機能中心に分析を進めるが,人の動きそのものが機能であるソフトVEにおいて,機能を特定することが難しいことに起因している。
この論文では,ソフトVEの中でも職場で業務上発生する日常問題の改善というケースを,いかに容易に分析すればよいかを考える。
そのようなケースの機能評価について,より職場の実態に即した方法を提示しようと思う。
ソフトVE活動を効果的にすすめるには,対象テーマに応じたVEステップの適用が必要である。マネジメント領域などの業務フローが明確でない問題に対しては,テーマに合わせた作業の過程を模索しながら活動をすすめているのが実状である。VE活動の基礎となる機能定義についても適切な技法が確立されていない。
この論文は,経営戦略の実行段階とVE適用局面から問題の特性と適用技法を考察し,新しい基準や理想をめざす未知の問題へアプローチする技法を報告する。
機能定義はVE活動の基礎となる重要なステップであるが,なかなかうまくいかないことも事実である。特にソフトVEの機能定義はハードのVEにくらべ,技法としての整備がおくれているといえる。
この論文はソフトVEの機能定義用語の現状を調査した結果に基づいて,意志決定と情報の流れの面から機能定義用語を整理した内容を報告する。
ソフトVEの機能定義の効率化と普及に役立てようとするものである。
ソフトVEの領域は広範囲に渡るので,ワンパターンの展開はできない。そこでテーマや条件の特殊性をにらみ合わせて様々な展開の方法を工夫しながらVEプロジェクトを進めている。本論文では業務改善のためのVEジョブプランに的を絞り,従来の問題点を分析し,その問題に対応した,効率的かつ,実用的な展開のしかたを提示する。新しい展開方法の主な特徴は,ビジュアル化された機能分析(機能ツリー図と名付ける)と効率的なアイデア発想の方法(IPOアイデア発想シートと名付けたワークシートの利用)の2点がある。
建設作業所のVE活動は,従来の量的拡大から質的向上へと変化を迫られている。そこでその変化に対応するため,これまで各企業において多くのVE手法の研究開発がなされてきた。当初ハードVEを中心に取り組んできた作業所VEももはや単純なVEステップのみでは,工事ソフト的な対象テーマの問題解決は難しくなってきた。そこで本論文では,これまでの作業所VEの経験を踏まえVE手法の研究を進めてきたが,これを「簡略工事ソフトVE」手法として確立,多くの作業所で実践した結果,その有効性が認められたので新VE手法として発表する。