VEリーダー(VEL)の資格を取得しVEに関する基本的な考え方や進め方は理解しているものの、これを実務に活用できない者が少なくない。そこで本論文は、VELの実践能力不足を解決あるいは補助するため、コンピテンシーモデル(Competency Model)を作成しこれを活用する方法を提案するものである。
コンピテンシーは、高業績を上げている人達にみられる共通の行動特性や思考特性のことである。それはその人が保有している知的能力だけではなく、それに加えて具体的な行動として現れた能力のことである。
このコンピテンシーを、高業績者のノウハウ的な行動特性としてモデル化し、その活用による人材能力の向上(仕事のできる人をつくる)と企業の発展(業績を向上させる)を目的に欧米で導入が広まっている。わが国でも人材マネジメント全般へ人材能力向上に活用する研究が始められている。本論文は、この方法を応用してVELの実践能力の向上を図るものである。
当社ではVEリーダー認定試験合格者などを対象に、建設VEの理解を深めるために、Off-JT教育として社内で建設セミナーを筆者が講師として開催している。このセミナーにおいて建設VEについての、いろいろな問題が提起される。例えば、機能系統図からの機能本位のアイデア発想がVE改善とは言いがたい場面が見受けられる。このことから、受講者にVEで最も重要とされている、機能分析について理解されないことがある。これらが障害となり「教育の執りかかり」で受講者がVEに対する関心をなくしてしまう恐れがあることもある。このため、本論文では機能系統図を建設VEセミナーで、どう生かすかの検証を行った。その結果、VEテーマの問題点を検討、整理することによって、施工者側と顧客側からの観点を変えた、二種類の機能系統図を作成することにより、効果的なVE改善の提案をすることが可能となった。これにより、受講者にとって機能系統図作成の意義を理解することができ、分りやすい建設セミナーになると思われる。
VEは実践工学であり経験工学であるといわれている。しかしながら、実践に寄与するVErを育てるために、数多くのVE実践活動を経験することによって実践力が身につくのを待っていたのでは、今日のような変化の時代のスピードについていけるものではない。加えて、組織のフラット化は一層の個の力量の強化を必要とし、商品競争力を向上させるためのVE技術をいかに早く広め実践に寄与するかが重要な課題のーつとなってきている。とりわけ、VE教育におけるVEマインドの移植成果は、その後の実践の場での戦力力量に大いに影響をもたらすものであり、従来のVE教育における課題を社内VEセミナーの実績データをもとに解析し、『実践的VE教育のすすめ』として提案する。
当社は,昭和47年に産業能率短期大学教育事業部のご協力を得て,VE実践セミナーを開催以来,現在にいたるまで,VE活動による経営体質の強化をねらいに,種々のVE活動を展開してきております。その間,VE活動の発展に伴い,対象者層の拡大およびVEを取巻く環境の変化に対応して,VE教育のあり方を検討・実施してまいりました。この間に育成した2,000名余のVErは,現在の当社VE活動の中核として重要な役割を担い,VE活動の原動力として,全社的な位置づけがなされております。
当社では,現相談役が「貴社では何を(どのような製品)作っていますか?」という質問に対して,「私共では『人』を作っています。」という解答をしたことが一つのエピソードとして伝承されており,経営の判る人づくりに対する強力な取組み姿勢が,当社の一つの特徴であります。反面,VEの基本的な考えである(アウトプット/インプット)の追求をおろそかにするものではなく,「教育」というインプットに対する明確なアウトプットを求めております。すなわち,教育を経費としてではなく,短期・長期の「投資」であると考えております。特にVEについては,当然のことではあるが,VEの進め方そのものも「VE的」でなければならないとの考え方が重要であり,VE活動の発展に伴いVE教育のねらい・進め方も,変化させていかなければなりません。
以下,VE導入期~拡大期に至るまでに,どのようなVE教育活動を展開するべきであるかについて論じてみたい。
石油ショック以来,低迷を続けるわが国経済は,最近の為替相場の激変と相重なって,強烈な打撃を受け,今世紀最大の危機状態に陥ったといえよう。
当社に置いても,不況の波を諸に受け,受注量の激減,販売の伸び悩み,等々,暗い材料がうっ積し,重大な危機状態に陥ったことが,身にひしひと感じられる昨今の状況である。この激動の時代にこそ,「物の機能の本質にもどって見よう」とするVEの原点に帰り,多くの職場で多くの人々によって,限りある資源,大切な物や労力の価値を高め,ひいては日本経済の発展につとめる必要がある。
そのためには,"バリューエンジニア人口の増大"は不可欠の条件であり,当社では,その一環として,VE入門研修会を開催してきた。
本論文では,このVE入門研修会の考え方と進め方を紹介するとともに,今後の問題点などについて述べるので,ご批判,ご叱正を頂きたい。
監督者にVEを理解させることについて,現在でも疑問を持つ向きが多い。かってQC,ICがスタッフの独占物であった時代と同じ考えである。しかし現在は,QCサークルの活発化により,製造現場でQCが十分に役立ち,大きな成果をあげている事実は否定できない。さてVEについてはどうであろうか。もし,監督者としてVEが理解できないとすれば,教え方が良くないのであり,理解させる工夫が足りないと考えるべきである。このような考え方で,製造現場にVEを導入する工夫が,先進的な企業で始められつつある。
たまたまVE協会関西支部において「製造VE研究会」が持たれ,製造現場にVEを理解しやすい形で導入するための研究が始められたので,これに参加し,当所に導入するための準備をした。この関西支部の研究会を通じ,内容の掘り下げと教育のやり方を研究するとともに,ようやく所内の機運も熟してきたので,昭和49年に実験的に監督者VEセミナーを3回に分けて開催した。"短期実践的"をモットーにしたこのセミナーは,ほぼ予想どおりの成果を収めることができたので,その後も連続してセミナーの開催と,活動の浸透を図っている。
以下,セミナー開催のねらい,内容,評価などを中心に実施状況を述べるので,ご批判,ご叱声を頂だきたい。
人間はどうあるべきか。
企業はどうあるべきか,を歴史的な事実としてとらえ,環境を知り,自社の長所短所を客観的に評価し,急所と思われる難問を摘出してそれをシステム的に,生態学的に,インターデシプリナリ的に解決するような,ユニークな教育訓練であることが望ましいのである。しかも啓蒙的教育により一人一人のヤル気,働き甲斐,生き甲斐を高場するものでなければならない。
この高邁なビジョンを達成するため,行動科学を活用した独特なプロセスを順を追って解説する。
WSSは,オリエンテーション,合宿研修の準備作業,および合宿研修会の,3つのカリキュラムから構成されている。