建築工事におけるVE検討は、設計・入札・見積・調達・施工の各段階で企業にとっての受注拡大や利益確保のために実施されている。しかしながら、検討時間の制約があることとVE検討メンバーの意識高揚を促す方法が未確立のために、大胆なアイデア発想の転換ができず、総花的なCR案の提示か仕様の変更提案に終始してしまい、顧客や設計事務所から不信感を持たれる場合が散見されている。VEが目指す抜本的な代替案の提案を生み出すためには、発想の転換が図れるアイデア発想方法の開発が必要となってくる。
ここでは、施工法に関する問題点の反転置換機能を改善着眼点・目標に設定し、それら
を強制的に組み合わせてアイデア発想する新しい方法を提案する。この発想方法を試行したところ、施工フローを入れ替えるという今までにないアイデアが発想されて、大幅な省力化と工期短縮が図れたことで、高い効果が期待できるアイデア発想方法であると確信している。
社内のWSSにおいて約100チームが発想したアイデアを分析することで、機能表現の抽象化との関連性や有効性の確認をおこなった。取上げたテーマは「外部排水溝工事」で、機能表現としては「水を流す」とそれを抽象化した表現の「水を処理する」から、発想されたアイデアを比較検討してみた。その結果、ユニークなアイデアの出現率やアイデアの着眼点およびアイデア発想数などで顕著な差異が認められたため、建設のVE検討においても機能表現を抽象化することがアイデアの拡大に寄与することが判明した。
建築工事におけるVE検討は、設計・入札・見積・調達・施工の各段階で企業にとっての受注拡大や利益確保のために実施されている。しかしながら、時間的な制約や情報が未整備のために、大胆なアイデア発想の転換ができず、総花的なCR案の提示か仕様の変更提案に終始してしまい、顧客や設計事務所から不信感を持たれる場合が散見されている。VEが目指す抜本的な代替案の提案を生み出すためには、発想の転換が図れるアイデア発想ツールの開発が必要となってくる。
ここでは、既存ツールの問題点を克服し長所を統合した新アイデア発想ツールの作成法と新ツールの活用定着のためのシステム作りについて提案する。新ツールを試行したところ、利益率の向上が図れたことと更なるアイデア発想の切り口が報告されたことで、高い効果が期待できるアイデア発想ツールおよびシステムであると確信している。
建築工事におけるVE検討は、設計・見積・調達・施工の各段階において、受注拡大や利益確保のために実施されている。施工段階においては、施工方法を改善する施工VEを積極的に行うべきであるが、施工VE提案数は多くない。これは建築工事に適合する効率的な施工VE手法が確立されていないためと考えられる。また、設計仕様変更によるVE検討は広く行われているが、この手法だけではコスト低減は限界に近づき、コスト低減に有効な施工VEの手法が求められている。
ここでは建築現場の生産性向上を目指した施工VEの適用ノウハウを提案する。製造業を参考にして、共同VE、現場観測、機能系統図の効率的作成方法などを適用した。この手法を実際のプロジェクトに適用し、十分な成果を確認したので紹介する。
建築工事においてVE検討は原価低減のために計画、設計、見積、調達、施工の各ステップにわたり日常的に行われている。特に近年は顧客の機能・コストについての要求が厳しく、効果的なVE手法が求められていた。一方、建築物は構成部品が非常に多く、建築物全体を大きく捉えてVE検討対象を効率的に絞り込むことが難しかった。今回考案した手法は、短時間で建物全体を大きく捉えて価値の高い代替案を提案することを目指した。
なお、本論文は第32回VE全国大会にて柏原氏が発表した「建設VE検討におけるテーマ絞込み法」を発展させたものである。建築工事費の「工事項目の金額比率」に注目して対象分野を絞り込む方法に加えて、本論文ではさらに「①面積あたり工事項目金額」「②面積あたり数量・容量」「③設備容量あたり単価」の値に注目することにより、VE検討の対象テーマを絞り込む方法を考案した。この手法を用いて実際の物件にて検証を行った結果、手法が有効であることを確認できた。
建築工事におけるVE検討は、設計・入札・見積・調達・施工の各段階で企業にとっての受注拡大や利益確保のために実施されている。しかしながら、工事項目が多岐にわたり設計図書が多くなると、有効なVEの対象分野を選定できず、総花的なCR案の提示や仕様の変更提案に終始してしまい、顧客や設計事務所から不信感を持たれる場合も散見される。VE検討が徒労に終わらぬためには、VE検討チームは顧客・設計者の意図を的確に把握するとともに、それを満足する提案をすべきである。ここでは、設計者とVEチームが共通の基盤を持つために、設計図書の表記内容を現行の仕様規定から性能規定に変えることを提案する。そして、機能定義の段階で性能を重視し、設計図書から目標値を類推しながらアイデアを洗練化することにより、ほかの性能に対しての検討も広がり、原設計より性能が上回る仕様が具体化され、波及効果の期待できる提案であることを確証した。
当社が約25年ほど前に先行同業他社に学びながら、1st Look VEの実施を試みてVEを導入し、所期の目標をクリアーした普及期を経て、日常業務にVE活動を移行したところ、活動が潜在化・マンネリ化し、更に景気の影響を受けて混乱してしまった要因の分析をおこなった。その打開のため、VEリーダー養成講座を切り口とした、VE基盤再整備と再構築のためのアプローチ方法を提案するとともに、建設業における具体策を明示する。
その内容は、A.事前準備としては①VEリーダー養成方針の確立②部署窓口の確立③部署状況・方針の確認④重点活動テーマの抽出 B.改善・強化としては⑤VEリーダー養成講座実施方法の改善⑥ VEr.(バリュー・エンジニア)のためのスキルアップ研修の実施⑦情報周知活動の強化 など多岐に亘る。これらは、いたって一般的な事項ではあるが、ボトムアップ的な活動を展開していくためには、活動内容にも種々のアイデアが必要となり、それに応える人材とそのネットワークづくりが重要であることを示唆する。
建築工事におけるVE検討は、設計・入札・見積・調達・施工の各段階で企業にとっての受注拡大や利益確保のために実施されている。しかしながら、工事項目が多岐にわたり設計図書が多くなると、有効なVEの改善対象分野を選定できず、総花的なCR案の提示か仕様の変更提案に終始してしまい、顧客や設計事務所から不信感を持たれる場合も散見される。VEが目指す抜本的な代替案の提案を生み出すためには、対象工事のムダな部分をいかに早く見つけ出しテーマとして抽出できるかによるといっても過言でない。
ここでは、各種工事の金額比率に着目し市販の「工事原価分析情報」のデータと比較し分析することにより、早い段階で対象分野を選定しテーマとしてしぼりこむ方法をとった。その検証事例では、工事全体を分析することにより建築と設備にまたがるテーマが選定でき、高い効果が期待できるVE手法であると確信している。
建設生産の発注から施工、引渡しまでのプロセスは日本独特のもので、外国のシステムとはかけ離れたものである。海外建設業の市場参入、閉鎖社会でおきた談合問題の批判に伴う入札方法の改革など、建設業界全体が激烈なコスト競争の嵐に巻き込まれている。
どのような状況下でも、顧客の満足する価値すなわち作品を提供することは建設業者の責務である。これからは、企業内VEに取り組むだけでなく、顧客と一体になったVEを指向することで、国際競争力に耐えうる建設業へと変わって行かなければならない。建設流通システムの簡素化、建段施工の省力化(無人化)、海外の安くて良質な資材の輸入、ならびに建設生産プロセスの改善などの提案を通して、日本の建設業のかかえる問題点の解消の一助としたい。
VEの有効性が社会的に認知され、建設工事においては請負契約にVE条項を折り込む動きが見えはじめた。本論文では、民間の建設工事契約にVE条項を適用するにあたってのポイントを抽出し、変更提案の際のトラブル等を防止してVE条項を効果的に活用するための検討を加えた。
VE条項の民間工事への適用に際しては、受注者は発注者から信頼を得ることを基本に考えて、VEへの理解、契約条項への理解を得るとともに、発注者のニーズを正確に把握してVE提案することが必要である。