第49回VE全国大会(平成28年開催)において、「対極類比アプローチによる創造 手法の提案と検証」と題したVE研究論文を発表した。この中で、企画段階のVEプロセ スで顧客の潜在的要求に応えるアイデアの創造手法を提案し、その有効性を検証した。今 回、その創造手法にTRIZの発明原理を取り入れて、より普遍性の高い技術的な観点を 付与しさらに有効性を高めた。 本論文では、TRIZを活用した対極類比アプローチによる創造手法を企画段階のVE に適用することで、技術的方向性に沿った信頼性の高い革新的アイデアを創造できること を検証する。リサイクル工場の冷媒用フロンの回収技術の開発に本創造手法を適用し、国 内最高レベルのフロン回収率を実現することができた。
企業の経営環境の変化や顧客の要求に対応するために、経営層から設定されるVE活動目標の難度は高くなりつつある。VEプロジェクトチームは、難度が高く設定されたVE活動目標を達成するために、価値の高い代替案を構築する必要がある。そのためには「アイデア発想」で数多くのアイデアを発想し、アイデアを発展させることで、VE活動目標の達成に寄与するアイデアの量を増やす必要がある。
しかし、「アイデアの発想」でアイデアを多く発想した結果、アイデアの組み合わせが逆に困難となりアイデアの発展が不十分となる問題やトレードオフ関係にある機能が存在する場合に全体最適となるようにアイデアの発展が十分にできない問題により、「詳細評価」でVE活動目標が達成できずにVE活動の手戻りが発生するなどの問題が発生している。
そこで、本論文では、アイデアの発展を行いやすくする技法として「アイデア体系図を用いたアイデアの発展技法」を提案する。
国内市場の多くは成熟した、過当競争環境下にあり、正にレッドオーシャンの中に入っていると言われている。このレッドオーシャンから抜け出すには、自社の得意分野の技術力を生かし、圧倒的差別化商品を生み出し、それらをブルーオーシャン商品(2.1で解説)として育て上げる必要がある。
しかし、ブルーオーシャン商品のシナリオは簡単に生まれるものではなく、生み出す手法も必要になると考え、お客様の要求する機能から価値を創造するバリューエンジニアリング(以降、VEと呼ぶ)手法と「ハーバードビジネススクール」で開発され、企業・組織・個人の分析に活用されているSWOT分析を融合した、アイデアの具体化技法を開発した。
製造業においては、開発期間の短縮のために、営業・品質保証部門や調達先などを含めたコンカレントエンジニアリング等を取り入れている。さらに開発期間を短縮するための対応策の一手法として、機能を元にしたアイデア発想に、製造技術者と設計者が、製造技術注1)・技能を理解・共有・融合注2)し、製造VEの視点からのアイデア発想注3)を加えて、価値の高いアイデアに具体化していくことが考えられる。このことにより、設計の手戻りが少ないだけでなく、製造法の検討と開発が同時に進行できるため開発期間が短縮できる。
本論文では、製造を理解するための「5つのフレーム」と、製造技術を織り込むために、これまでの製造VEのアイデアを調査・分析して、アイデア発想の視点を抽出して整理した「69項目のチェックリスト」を活用することで、機能を元に発想したアイデアを、短時間で、技術性・経済性の高いアイデアの具体化に活かすことができる手法について、提案する。
建築工事におけるVE検討は、設計・入札・見積・調達・施工の各段階で企業にとっての受注拡大や利益確保のために実施されている。しかしながら、検討時間の制約があることとVE検討メンバーの意識高揚を促す方法が未確立のために、大胆なアイデア発想の転換ができず、総花的なCR案の提示か仕様の変更提案に終始してしまい、顧客や設計事務所から不信感を持たれる場合が散見されている。VEが目指す抜本的な代替案の提案を生み出すためには、発想の転換が図れるアイデア発想方法の開発が必要となってくる。
ここでは、施工法に関する問題点の反転置換機能を改善着眼点・目標に設定し、それら
を強制的に組み合わせてアイデア発想する新しい方法を提案する。この発想方法を試行したところ、施工フローを入れ替えるという今までにないアイデアが発想されて、大幅な省力化と工期短縮が図れたことで、高い効果が期待できるアイデア発想方法であると確信している。
顧客が受け取る価値を高める活動としてVE活動があり、企業は顧客の要求機能を確実に達成すること、顧客の納得する価格にて供給することを両立させ、加えて利益も追求するVE活動を推進する必要がある。
ほとんどの製造業では、顧客が要求する仕様、機能、価格を作りこむために直接的に掛かる費用である直接費低減をねらいとしたVE活動を行っており、間接費低減をねらいとしたVE活動はあまり盛んではないのが現状である。もちろん、間接費低減をねらいとするVE活動が価値を向上させる有効な手段であることは認識しているものの、間接費は配賦の仕方でいかようにもなり原価として正確に把握できない、直接費を管理している製造工場は間接費の構成がよく判らない、また、直接費低減をねらいとしたVE活動のみで充分な価値向上、利益確保ができていたことなどの理由から、これらが活発化していなかったと推定する。
しかし、価値を向上させる手段としてこのVE活動も重要であることの認識から、VE協会にても各種研究が行われ、最近では「VE資料 No91 管理・間接業務のVE」などの発行に至っている。しかし、これらは間接作業の時間短縮や外注作業の効率化の手法研究が多く、作業以外の間接費低減をねらいにしたものは少ない。このため、間接費低減をねらいとしたVEアイデア発想法を考案、各種シートと共に論文とした。
VEでは、5原則の1つ「機能本位の原則」に従い、機能を発想起点にすることで、大きな変革に繋がるアイデア発想が可能だとしている。しかし、企業において、製品の機能やその達成手段は長年にわたり研究され現在の方式や方法が採用されている。また、現在、スピード開発が求められている。通常の製品開発期間においてすべてに対し、機能に立ち返った研究を行うことは困難となっている。特に、上位の機能は変更の困難性が高く、製品開発日程上、アイデア発想の起点としにくい状況である。
また、設計図や試作機などがなく、設計者の頭脳内部の構想しかない製品構想初期段階や、クリーンルームを必要とする小ロット大型産業機械など、現物を目の前に置き、その機能からアイデアを発想することができないようなケースにおいても、機能だけを発想起点とする事は困難になりつつある。本研究は、このような困難に対し、事前に「言い訳(Excuse)」と「質問(Question)」を準備し、問題点や改善点を明確化し新たな発想起点を提案する事で、アイデア発想を活性化することに役立てようとするものである。
発想法には種々のものがあるが、VEジョブプランにうまくフィットするものが比較的少ない。この論文では、既存の発想法を、VEのジョブプランに適合させるため、発想の原理と共に、大脳生理学や、社会心理学上の考察を加え、考案した「3分間発想法」を紹介する。
「3分間発想法」には、「発想の間口を絞る」「発想中は発言禁止」「発想後はアイデア自慢を行う」等の10原則を設け、実施に当たっての規範とした。
また実施の結果多数の現実的アイデアが得られ、多数の特許出願等、多くの成果を得ることができた。