論文キーワード: 価値向上 4件

VE適用が製品やサービスの価値向上に成果をもたらすことは、VE全国大会等で紹介される様々な事例が示すとおりまぎれもない事実である。より大きなVE成果を得るためには代替案のもととなる優れたアイデアが不可欠であり、アイデア発想力を強化することはVE成果の拡大に直結する。
本論文では、VE適用によって得られる成果をこれまで以上に拡大するために、アイデアを闇雲に数多く発想するのではなく、価値向上に寄与する可能性のあるアイデアをはじめから多く出す方法を提案し、その効果を実際の活動で確認した。製造企業において、VE実践、VE研修、特許ミーティングというそれぞれ異なる目的のために開催される活動を融合することで、VE成果の拡大につながるアイデアの創出を促進できた。

企業も製品も進化していかなければ生き残れない。製品進化はターゲットとした顧客の満足を継続して向上させることによってなされる。この満足を向上させるには継続的・断続的価値向上と、その製品の差別化・個性化が不可欠となる。この結果が製品進化となるのである。本論文はこれら2つの要素を効果的に実現するため以下の展開をするものである。
まず第一に、機能定義の対象拡大(上位拡大と並位拡大)を図る。ここでは、VE対象(製品など)の果たすべき機能とその目的となる機能(使用目的など)を明確にし、さらに、VE対象(製品など)の機能発揮に密接に関わる「人」や「もの」が果たしている機能も明確にする。次に、これらに基づいて全体最適の思考の下に、これら三者の間の機能分担を合理的・合目的的に行うのである。この経過を経て、使用目的などを確定し、「人」や「もの」が果たしている機能をVE対象(製品など)に採り込むなどしてターゲットとした顧客に対するその製品の価値向上や差別化を図るのである。

VEは、価値向上を改善の目的とする優れた方法論である。より多くの経営者に理解され、より広い領域に適用され、より大きな効果を創造するために は、価値向上の効果を目に見える形で示したい。そのためには、定性的な表現や精神論ではなく、定量的で具体論とするべきである。特に、機能(F)の変動を 伴う価値向上時が、とりわけ困難である。

そこで、本論では、あらゆる価値向上のパターンに適用でき、その経済効果を厳密に計算する式を提案する。この式により、これまで、提案者の説明力と被提案者の理解力に依存していたものが、客観的に表現されるようになる。

さらに、価値(V)による判断を補完する新しい指標として、パワー(P)を提案する。FとCから計算されるPは、Vと共に用いることで、さらに経営判断を助けるものとなる。価値の概念がより強調され、経営の進むべき方向と力の掛け具合が明確になる。

全編をとおして、筆者が特に伝えたいことは、VEをコスト削減のためだけに使うのではなく、あらゆる価値向上に活かしていこうということである。

経営にVEを取り入れている企業は多々ある。しかし、企業は収益を上げねば成り立たない。一方、VEの狙いは顧客満足度向上である。顧客価値(顧客満足度)と企業価値は一見相反する事象に見える。つまり、顧客要求機能に傾注すると原価はあがり、企業価値を低下させる。いかにすれば顧客価値と企業価値の両立はありえるのか。V=F/Cに新たにプライスのPをパラメータとして用いることで顧客価値と企業価値の関係を明らかにするとともに顧客価値向上の両輪である価値企画活動と価値改善活動を励行することが、顧客価値、企業価値の双方の価値を高めることになることを示した。また、価値向上活動においては企業価値向上目標のみならず顧客価値向上目標を掲げた活動こそが顧客本位の活動ではないかと提案する。更に価値向上活動の全容を示すとともに、価値企画活動および価値改善活動の進め方について私見を述べた。最後に連結経営下での関連会社価値向上活動を展開するうえでの組織と戦略について一考察を付した。