オイルショック以後,高度成長経済から低成長経済に大きく転換し,企業経営の体質改善を余儀なくされてきた。また,企業をとりまく環境は,かって経験したことのない状態『モデルなき時代』に突入しており,真に厳しい情勢となっている。
これらの対応策の一環として,内部努力により利益改善の達成(コストダウン)が企業トップにおいてますます認識され,重要視されており,その最適手段としてVE活動の一層の充実展開が押し進められている。
このような厳しい情勢の中,中期計画を前提としたVE活動の一考察について述べる。
当社は東京に本社を置き,東京・神奈川に6事業所,全国に約10の地方工場を有し,通信・コンピューター・電子部品及び家電を4本柱にして,それらの装置及び部品を製造,販売するメーカーである。
当エレクトロメカニカルディバイス事業部は,東京三田事業所に属し,主に交換機及び通信用の電磁リレー,封入リレー,コネクター並びに情報端末機器を製造し,それを日本電信電話公社,一般民需,輸出向けに販売を行なっている。
当社におけるVEは,昭和36年に購買を中心にしたコストダウン技法として全社に普及し,昭和38年に,VE委員会制度が発足し,全社的にVE活動が展開され,現在は,日本電気コストコンサルティング(株)の指導のもとに,VI技法により年々大きな効果を上げている。しかし昭和48年の石油ショック,物価狂乱を契機として,これまでの高度成長志向型から安定成長適応型への企業の体質転換をすみやかに行なうことが必要になった。このような状況下において,量的な拡大を前提とした省力化,生産性の向上という従来のコストダウン技法は封じられ,この手詰りを打開する方策として,VEの新展開が不可欠となって来た。
すなわち,限られた人員,資材,資源を最も有効に活用工夫するために,製品別を基準とした,営業,技術,製造を結んだタテ糸の改善,また,各部門の効率化という視点からのヨコ糸を通した改善,すなわちヨコとタテとがおりなすマトリックスの総合的な改善を行なうべくトータルVE活動が開始された。
以下,この活動について概要を述べる。
当社における管理技術は,昭和35年以降,これまで製造を基点として営業まで,その総称を「品質管理」の名のもとに,導入と推進をはかってきたが,その柱は,QCであり,IEであった。その間,市況の変動により,社内の緊急政策の実施等により,推進の濃淡はあったにしろ,長期的にみれば,着実に,その定着が,はかられてきた。
ところが,ご存知のごとく,昭和48年の石油ショック以後,特に消費構造の変化により,その対応のため社内における政策も急転換が始まり,当然,管理技術の推進も転換がせまられた。その一つは高品質低価格商品の造出であり,他の一つは,企業内部の効率化,いいかえれば,"贅肉取り"であった。前者については,表現をかえれば,お客さまのニーズをとり入れ,もっと次元をあげれば,お答さまの潜在需要までも,開発し,しかも,お容さまが,安く感じる"値ごろ"商品を開発することであり,後者については,いかなる不況といえども「赤字を出すことは,罪悪」であり,当然,商品個々について,最適利潤を確保することが,必定とあれば,商品個々のコストを下げることに,全力をつくすと共に,社内組織の効率化をはかり,単なる社内経費の引きしめのみならず,全社員の効率的活動による,企業内部のトータルコストの低減が,必要であった。
当社においては,昭和46年より,ワークショップセミナーが開始され,VEエンジニアが,事業部,協力会社で,主としてハードのVEを中心に活動をしておったので,幸いにも,石油ショック後の急激なコストダウンの要請には,何とか答えられたものの,企業内トータルコストの低減については,新企画が必要であった。それまでにも,社内において商品個々のVEの進展にともない,製造工程設計のVE,生産管理業務のVE,新商品開発へのVE等が,必要にせまられて,研究されつつあったが,いろいろの問題があり,苦労している時でもあった。しかし,今度は,会社トップからの要請であり,全社あげて取りくむテーマであるだけに,全社活動としてのVEのとらえ方を真剣に検討した結果,ソフトVEとしての展開をはかることを決心した。そして既に述べたごとく,事業部には,ハードのVEが思想的にも,手法的にも定着しつつあったので,一層の推進を考えるとしても,その焦点は,当然,会社の中枢である本社業務諸部門と営業部門であった。
当時の周辺の状況は,すでに市況の急激な変動にともない,"発想の転換をはかれ!!" "原点にかえって考えよ!!"と,さけばれている時であっただけに,トップの「今までの高度成長時のままの,会社体質(=考え方)では,非常に危険であり,その転換をはかれ!!」という強い要請は,全社員に良く理解されていたものの,では,具体的に,どう転換するかについては,精神的理解にとどまっている時でもあった。そこで,われわれ推進担当部として,転換の方法は,何も一つに限ったことではないが,われわれとしては,せっかく導入し,浸透しつつあるVEの幅を広げ,レベルアップをはかるため,VEの本質にたちかえり,その思想の展開と活用の徹底を,全社に拡大することにより,トップの要請に答えようとし,その結果,まとまったものが,ソフトVEによる推進であった。
「高度成長時代から低成長時代へ」と,経済の構造的変動に伴い,企業は経営体質の強化を迫られている。このような状勢下にあって,VEの果している役割は大きく,より広範なVE活動の要望がなされている。この要望に応えるためには,企業内のVE活動を,さらに定着化し,普遍,発展させていく必要がある。
当社では,その一環として,"利益の宝庫"である製造現場にVEを導入することにより,沈滞ムード気味の小集団活動をRefleshし,経営体質の強化の一担い手として,VE小集団活動を推進してきた。(われわれは,このVE小集団を「VE New Power」と称している)
本論文では,このVE小集団活動を推進するための新しいVE手法を紹介するとともに,VE小集団組織,フォロ一体制およびVE小集団活動の今後の問題点などについて述べている。
VAが企業経営活動の一環として,極めて重要な役割をはたすようになり,各企業において,VA (VE)センターと呼ばれる組織VAを推進する専任部門を有するところが多い。これらVA専任部門の持つ機能は何か,何をすべきかを明確にすることが,VAがより効果的な活動となり得るか否かの鍵であろう。
VA活動そのものを,専任部門の専有物だと考えるとしたら,そこには,生きたVAは育たないであろう。VAとは,1つの行動によって生まれる価値を,より高めるための手段であり,行動とは,大げさにいえば,企業人すべての各自の職場における業務そのものである。つまり,日常の個々人の業務は,その組織の目的に沿って,より効果的アウトプットを求めて行動しているし,その具体的手段として,VAを活用しなければならないと考える。
VAセンターの仕事は,各職場が持つ機能を理解し,より効果的なアウトプットを出すよう,指導することであり,VA専任者とは,VAスタッフであるといえる。
当工場においても,VAセンターと呼ぶ組織があるが,特に,工場という生産に直結した部門内において,スタッフは,どうあるべきかを,具体的活動事例を上げながら,述べてみたい。
今日の社会,経済情勢は,企業経営にとって非常に厳しいものがある。とりわけ,高度経済成長と,それに伴う建設投資の緩慢ない伸びが,企業経営にとって不可欠ともいえる建設業界は,かつてない試練の時代に突入している。このような情勢の変化は,企業努力の必要性と重要性を,ますます高めることになった。さらに,このことは,VE活動においても,何らかの転換を計るべき時期であることを意味している。
当社では,過去に大会論文等で報告しているように,建設の施工部門を中心にVE活動を展開し,成果を上げてきた。しかし,企業をとりまく外部環境の変化と,企業としての多岐多様な問題がクローズアップされつつある状況の中で,VEを,単に施工分野における管理技術としてのみ位置づけるのは得策ではない。そこで,施工分野の実績の拡大をはかりつつ,あらゆる分野のさまざまな問題に対して,VEを合理的かつ効率的に適用して行こうとする考えがなされるようになった。当社における「トータルVE戦略」は,このような背景のもとに打ち出されたものである。
トータルVEは,組織的かつ総合的に,企業利益の改善に貢献することを目的とする。そのために,VE活動の間口の拡大と成果の増大をはかる。しかし,トータルVEの本質は,単なる量的拡大ではなく,VEマネジメント及びVEテクニックの新しい考え方の導入と,その実践という質的な転換であり,この点が,この小論の主題である。
この小論は,以上のような基本的な考え方のもとに,VE活動を展開した結果,この考え方が有効であることが認められたので,紹介するものである。
VEが,各企業に導入され,効率的戦略の一環として推進されるようになってから久しい。
当社も,昭和43年にVEに着手して以来,「建設業におけるVEの適用」をテーマとしてとり組んできた。その中で,作業所において比較的短時間に行なうことができ,さらに,BETTER的改善を狙って開発された「3時間VE」に関しては,既に発表し,また,VE対象の選定方法,3時間VE会議の諸問題,VE会議から施工,完了までの手順等についてもフォローを行なってきた。
一方,そうした作業所を中心としたVE活動の推進と相まって,母店内勤事務系職員を中心にして,soft ware VE(特に事務のVE)の実践にも,近年,力を注いできた。
こういったVE事務部会では,時間的な面において,3時間VEは適用しにくい。というのは,ソフト面のVEのステップでは,情報収集,現状分析に,より大きなウエートをかけねばならないからであり,また,最終的な改善案は,ほぼBESTに近い状態でなくては実践に結びつかないからである。
このようにソフトVEを実践していく上には,種々の問題点があるが,本稿においては特に,「ソフトVEにおける問題点整理法」に的を絞って述べてみたい。
安定成長時代を迎え経営環境により厳しさが増すとともに,企業経営の質が問題となる。特に,下請中小企業においては,経営の近代化がおくれ経営効率が甚だ低い企業が多く,経常基盤が脆弱である。
高成長期では,低賃金と長時間労働の労働集約型の経営を行なうことにより,企業収益を得ていたが,受注量の減少,採算の悪化に伴って収益性が急激に低下し,分岐点の売上高を確保できず,水面下の経営をよぎなくされている下請企業が増加しつつある。
企業体質を改善し経営効率を高めるためには,その企業に適した管理技法を導入し,経営責任者がリーダーシップを発揮し,全従業員の総力を結集して問題解決にあたる必要がある。このような下請中小企業に,VEを定着させるためには,単に技法の紹介のみではなく,利用可能な管理技法を適切に組み合わせ,企業体質の改善を図りながら収益性向上に役立つことを体験させることが重要である。本論文は,企業診断とその改善指導を計画的に実施し,下請企業の経営効率化を効果的に実現させようとするもので,資材部門のVE専任者としての研究課題でもあるので,今後とも一層の努力を傾注していきたいと考えている。
VEがわが国に導入されて以来,各企業において着実な成果を上げ,個別活動から企業経営方針に基づいた組織的な活動へと発展してきた。また,VE対象範囲においては購入部品のコストダウンを狙ったVE活動から,既製品を対象にした2nd Look VE,商品の構想決定時に実施する1st Look VE,商品企画時に実施する"0" Look VEへと,商品が生れる源へとさか上ったVE活動が積極的に展開されるようになってきた。更には,ハードウェア中心からソフトウェアの分野へと,ますますVEの適用範囲が拡大しつつある。
一方,具体的問題解決においては幅広い関係部門の人々で構成し,その人々の最大能力を発揮するのに適したVEチーム活動を実施して大きな成果を上げている。しかし,対象分野が広くなると共に関係部門から集った人々によるVEチーム活動を,常に成功に導くためには,チームメンバー全員に必ず目標は達成しなければならないという"使命感"を持たせることが非常に重要なことである。
本稿は,価値ある商品づくり(ハード面)をするために,顧客ニーズとメーカーのコストを考えた価値係数を用いることによって,目標の適切なブレークダウンとVEチームのやる気,目標達成への使命感をおこさせる機能別コスト目標の求め方とその展開について,過去研究してきたことを紹介する。この進め方を開発するに当って,最も留意したことは,実践において確実に展開できるようにすることであった。
実態となった新局面
49年のオイルショック後の今日の企業環境を,ややもすると,それ以前の高度成長型時期を尺度にして異常であると思いがちである。しかし,もはやこのような考えでは,現状に対処できないばかりか,環境変化の本流を見い出すことができず,今後の事業運営の方向性を危惧せざるを得ない。従って今日の局面を今後とも,これが常態であると認識し対応する企業体質づくりを,一刻でも早く着手する必要があるといえる。
この課題の遂行に対してVEの特長(演繹的)すなわち
イ. 現行の諸条件・手段にとらわれず目的志向・本来機能志向をおこなう。
ロ. 改善対象システムに対しては上位目的との関連性を明確にする。
ハ. 投入資源と成果のバランス(効率)を追求する
等と,従来から取り入れられすすめて来たQC・IEの特長(帰納的)とを統合して活用すれば一層の効果が期待できると考え,第Ⅱ章のような推進をはかってきた。その推進の志向体系は次の如くである。(図1・1参照)
推進のやり方は,当然企業の実情(諸条件)を考慮したオリジナリティのあるVEを進める必要がある。次に当社の概要と当社流のVEの特質を述べる。
1960年代の高度成長期から1970年後半の成長期に移って,わが国企業の多くは攻めの経営から守りの経営へ転換し,その戦略も新製品開発主力製品のシェア拡大からコスト低減へと変ってきている。
このような,中で新製品の開発は企業にとって大きな問題となり,NO RISK的,防禦的となってきており,その新製品開発方針も技術革新型から市場革新・拡大型を重視するようになっている。
企業の製品をそのライフ・サイクルに従って導入・成長初期製品,成熟・安定製品,衰退製品の三つに分けると,1975年末における全売上に占める割合は,それぞれ13%80%,7%となり,1960年~70年代前半よりも導入・成長初期製品がかなり少くなり,成熟・安定製品が多くなってきている。
このような企業経営状態と低成長期とを考えあわせると,限りある資源,人材,時間をどのように有効につかって利益を上げていくか,企業体質改善をどのようにはかっていくかは,十分に考えなければならない問題であろう。
わが国企業の経営戦略は高度成長から低成長への移行に従って,その目的,手段共大きく変ってきているし,当然,その業種・規模によってとるべき戦略は異ってきている。その点,VAこそ企業戦略の基本であり,製品企画にVA手法を導入していくべきであると考える。
われわれバリューエンジニアにとって,ここで必要なのはVEすなわち機能定義・機能評価・代替案作成を行なうにあたって,市場条件・顧客の要求事項をどのようにとりあつかい,どのように製品企画において考えていくか,製品のライフ・サイクルとその市場の変化,価値観の変化をどのようにつかみ取っていくか,そして,それをどのように戦略的に製品企画に折り込んで考えていくかを実践していくことが必要であるということである。
このようなことを背景に,本論文では製品開発におけるVA展開に製品企画をかみ合わせ,VA戦略アプローチとして成功した当社の大形空調製品<カスタム・エアコン>を例にとって,いかにして成果を上げ得たかをのベ,その考え方の一端を発表する次第である。
本論文の主眼とするところは,次の3つである。
ひとつは機能系統図についてである。VEでは機能系統図が,本来,非常に重要な役割を持っていると考えられるにもかかわらず,単に形式的なものにとどまったり,あるいは,せっかく時間をかけて作っても,後の代替案との結びつけが明確でないという現象が見受けられるが,これは機能系統図の作成の仕方に一因があると考えられる。
VEにおける機能定義,機能整理のひとつの大きな目的は,それによって,物事の本質を考え直すことにある。すなわち物事の原理原則を,しっかり認識することが,真の独創力を導くことになるからである。従って機能系統図も,その趣旨にそっての検討がしやすく,かつ,そのプロセスを明確に出米るものが望ましい。
そこで機能系統図を目的,手段の関係で追求して作成することには変りないが,その機能分野を基本的な原理にかかわる本質的機能分野と,機能の形への転換に関わる形態的機能分野,さらに,その形態的機能分野で,ある特定の手段,構造をとったがために派生的に発生した付帯的機能分野という形でとらえる方法を提唱し,その考え方,VEをすすめる際の注意などを,ひとつの事例をもとに,具体的に述べている。
第2番目は,製品を構成する各種の材料,部品が,以上の機能系統図のどの機能分野に,どの程度関与し,またその時のコストとの関係はどうかということ,かつ,その状況からVEによって,改善すべき方向,あるいはVEの結果,それらが,どう改善されたかをvisibleにとらえるため,新たにバリューベクトル及びバリューベクトル図という考えを導入し,展開した。なお価値標準というのは,このバリューベクトルでいえば,そのコンポーネントを作ることに相当すると考える事が出来る。
第3番目はバリューベクトル図とコストテーブルの関連について述べている。バリューベクトル図による機能の材料,部品への割りつけ変更の検討,コストテーブルによるその可能性の追及は,前者の定性的機能の後者によるその定量化という面において,この両者の結びつけは,VEにとって非常に重要であると思う。
では,以上の骨子に従って論をすすめることにする。
開発VEについては,関西支部の主催で行なわれた「開発VE実践研究会」で,1年有余にわたり研究され,その成果報告も"新製品開発のためのVEマニュアル"として発行されている。また,既発表のVE研究論文の中にも,開発段階のVEに関するものがあり,当社においても,種々参考にさせていただいている。しかし,当社の生産形態は個別受注生産を主体とするもので,小規模ながら「システムもの」と呼ばれるようなものも,かなりの件数におよんでいるという特殊な事情があるので,開発VEの展開に当っても,当社なりの工夫が必要であった。
当社での開発的要素を含んだ設計は,主に次のような段階で行なわれている。
(1) 引合い--構想設計 見積または応札(開発要素を含む)
(2) 新規受注--開発設計--生産設計--製造
(3) 基礎研究--製品化構想--開発設計
(1),(2)の場合は,いわゆる本格的な大プロジェクトとしての開発設計とはいえないものもあるが,発生件数としては多い。したがって開発設計に際しては,
・技術的革新テンポが急速で,絶えず新技術要素を折込んだ開発設計を行なっていかなければならない。
・特殊システムものなどがあり,繰返し生産が少なく,同時に件数としては増大する。
・他律的な時間制約を受ける。
など,設計に当っては,当社なりの事情がある。
当社のVAも,定着期から発展期へと進み,過去1年余り,川上作戦としてのVAの展開を進め,開発VA重点にVA活動を行なっている。システムものの場合などでは,実際の開発設計を数チームで分担するなどの例もあり,それぞれのチームへの適切なコスト配分の方法をいかにすべきか,機能配分なり,機能区分は,どのようにするのが合理的といえるのか。これらの問題については,寡聞にして既成の手法があるのかどうかが分らず,自主開発的に各種の方策を試みている。
また開発段階のVAについて,もう1つの困難がある。このことについては,既に発表されている開発VE手法の中にもふれられているが,ファーストルックVAの場合,VA対象機器が具体的な形となっておらず,ユーザーの要求は,感覚的で定量的特性として表示されていない場合が多い。われわれは,このようなユーザーの要求について,その本質をとらえ,機能として表現し,その機能をいかにして定量化し,具体的なものとして形而化して行くか,その方法過程が,VAチームメンバーに理解されやすい簡便な方法はないかということの検討をしてみた。
本稿においては,開発段階におけるVAの中で,
・機能とコストの合理的な分配
・ファーストルックの場合の「要求機能」と「物のもつ機能」とを結びつける方法
という2つの項目について,実施例を加えて述べる。
当社では,VE普及の一環として,主に中堅社員を対象に入門議座を開いている。過去数回の開催で百数十名の終了者を出している。この講座の指導を通して「機能分析」について苦労した。
そこで,われわれは,過去何回かの経験を標準化して,機能分析の一手法として確立しようと努力して来た。
例えば,根本氏の講演中ふれておられた「透明軸ボールペン」について,3~4時間としておられたのが,本手法を一通りマスターすれば,1~2時間で出来る。
因みに,当社の経験によれば,1~3工程分の作業改善,または一部品当りの設計改善程度の機能分析であれば,従来法では,平均15~18時間に対し,本法によれば平均7~8時間程度で出来る。
低成長時代のコンシューマーの眼は,高度成長時代には想像もつかなかった程,厳しくなり,それはあたかも,VE技術者の眼のごとき様相を呈してきた。消費者団体の各方面での活動は,それらを代表するものであり,適正価格の追求,信頼性表示の要求,そして「約束された機能」の判定等,企業に対する要求は,激動する経済環境を反映してか,かなり多様なものになってきている。そうした市場環境に対応すベく,企業のVE技術者に対する要求も,少なからず変化してきたようである。激化の一途を辿る企業競争の中にあって,経営者の思考も,トータルコストの見直しへと移行してきているようであり,営業第一線から製造部門まで,その問題は多岐にわたっている。そして,それらの各方面へのVE担当者のアプローチ,アクションが期待されてきているのである。しかし,複雑多岐にわたる問題が,有機的に結びついており,それらを一元化されたデーターベースに表わすということは,甚だ容易ではなく,VEは,もはや個人,グループの技術ではなく,企業体としてのテクニックになりつつあるということである。そこで今回,トータルコストに影響する因子を,如何にして適確に把握し,かつ,それを如何に効率よく商品原価計算システムにフィードバックするかということを検討してみた。