論文発行年度: 2020年 VE研究論文集 Vol.51

VEの適用が製品やサービスの価値向上に成果をあげていることは様々な事例から示されている。さらには、機能とコストの大部分が決まってしまう開発の上流段階でVEを適用することにより、その成果は拡大する。したがって原価企画活動の目標達成には開発上流でのVE適用が有効である。
VE活動を次に示すとおりフェーズ1、2と段階的に活動の仕組みを改善し、原価企画活動における開発上流でのVE適用比率向上を図り、原価企画の目標原価達成比率100%継続と活動対象機種の売上高比率向上により、経営に貢献した。
(1)フェーズ1:推進事務局が主体で活動し、活動体制と仕組みを構築した。
(2)フェーズ2:フェーズ1で構築した仕組みを活用し、設計部門主体の活動への移行により開発上流段階におけるVE適用の仕組みを定着化させた。

グローバルなコスト競争が一層激化する中、Tier1(完成車メーカーに直接製品を供給するメーカー)のお客様では製品の開発期間の短縮、円滑な立上を目的とする量試一貫活動が進められている。これは、試作から量産までを同一の仕入先で検討する活動である 。図面完成後の後追い的な原価改善では、限界がある。開発の早い時期から参画出来れば、形状から材質など改善範囲は広がる。更には、上流の企画・構想段階からならば、機能に合わせた提案も可能となる。源流段階からのVE・原価企画活動による競争力のあるコストの作り込みが重要になっている。
樹脂成形品における「源流原価企画活動」についての考え方や具体的な進め方について成功事例を基に解説する。

「機能定義は、機能的研究の基礎でありVE活動の成果と効果に影響を与える重要なステップである。」 1) これは、VE研究論文「機能定義についての考察」のはじめに記されている一文である。また、この論文の終わりに「機能定義用語の選択と標準化に(中略)ついて今後いっそう実践活動にむすびついた研究を進める必要がある」1)と記されている。
このように、機能定義に使用する用語、特に動詞の選択は、VE活動を効率的に実施するためのポイントであるため、『新・VEの基本』3)や米国VE協会(SAVE)出版の『Value Methodology』4)(以下、「日米のVEの教本」という)にも標準化(注1)された動詞がリストとして示されている。しかし、VE適用対象や適用段階により機能定義で選択すべき動詞が変わるため、当社の製造VEプロジェクト活動(以下、製造VE活動という)(注2)では「日米のVEの教本」で標準化された動詞のリストを活用していなかった。そこで、当社にて過去10年間に実践した製造VE活動の機能定義用語を調査、整理して、製造VE活動で使用された動詞を抽出し、「日米のVEの教本」の標準化された動詞と比較することで、製造VE活動の機能定義に用いる最適な動詞について分析した。その結果に基づき、 製造VE活動に特化した標準化された動詞のリストを作成した。

注1:同一同容を表す言葉をまとめることによって用語を集約すること。1)
注2:社内プロジェクト体制にて実施する本格的な製造VEのこと。3.1 1)項参照

医療において、診療の品質・効率の向上は 不可欠である。そして、それらを向上するには、一般に業務プロセスの標準化が有効である。標準化が図れれば、不適合や作業ミスの防止、作業の効率化、改善のための基盤形成といったメリットを生かせる。歯科の治療法は確立されているが、患者ごとに口腔内の環境は異なるため、画一的ではない患者に合わせた治療が求められている。しかし、患者にどのように合わせるべきか明確に示されていない。本稿 では、歯科医院の業務における可視化、標準化を行うための方法論を示す。業務標準化の一般的な方法論は、QC (品質管理)の手法の1つとしてある。VEが価値向上を目指す改善手法に対し、QCは品質の安定維持をはかる手法であり、製造業をはじめ、多くの企業が品質管理を行う際に、QC手法を取り入れているだろう。QCストーリーと呼ばれる問題解決のステップの1つに業務標準化を進めるための方法が示してあるが、実施者が目的思考でない限りQCのみでは不足だと感じている。そこで、業務標準化を実施する際に、VEを取り入れた活用方法を提案する。

多店舗経営企業は、チェーンストア理論の良さである仕入れ低減や効率化を活かしながら、国民大衆の豊かな生活を支えることを目指し、全国各地へ出店を行ってきた。
しかしながら、21世紀に入り、時代の変化は更に激しさを増し、それらの企業は次第に顧客満足が得られなくなってきている。
本部が効率化を強く推し進めれば、店舗は指示命令を実行するだけの受け身の営業姿勢となり、たちまち手段が目的化する。そうなることで、顧客が本来求めている機能が満たされず、サービスの価値が下がり、顧客離れを引き起こす結果となる。
そのような問題を解決するため、多店舗経営 企業における効果的なVEの適用について、機能的分析から得られた 優れたVEの適用方法を提案する。そして、その実践事例を交え、本部による効率化やブランド一貫性を図りながらも、店舗の労働意欲を高め、主体的な営業活動に繋がる効果性を示す。

首都高速道路が積雪により通行止めとなった場合、社会に与える影響は大きく、速やかな除排雪作業を行い可能な限り短時間での交通開放が望まれる。しかし、平成30年1月22日~23日にかけた降雪においては、都市部で23cm の積雪があり、全線の通行止め解除までに約5日間を要した。本検討では、その反省をふまえ、従来の除排雪作業からより効率的な作業方法の検討を行い、通行止め期間の短縮が図れる除排雪作業方法を提案したものである。