産業用ロボットなどの「ものづくり」のための設備を供給する生産財メーカーにとって、製品企画活動における「新製品で実現すべき機能」、「販売価格」、「販売台数」などの設定は困難である。それは生産財メーカーの顧客は消費財を生産する消費財メーカーであり、間接的にしか市場変化を掴めないことや、質感、デザインなどの魅力機能の差別化が困難だからである。本論文は「新製品で実現すべき機能」とその決定方法について述べるものである。
とりわけ原価企画の概念を拡大し、製品企画活動及び製品企画準備活動まで範囲を拡大することにより、この「新製品で実現すべき機能」を絞り込んで決定する新しい視点を指摘し、従来の原価企画よりも総合的にとらえ展開するものである。
企業の経営環境の変化や顧客の要求に対応するために、経営層から設定されるVE活動目標の難度は高くなりつつある。VEプロジェクトチームは、難度が高く設定されたVE活動目標を達成するために、価値の高い代替案を構築する必要がある。そのためには「アイデア発想」で数多くのアイデアを発想し、アイデアを発展させることで、VE活動目標の達成に寄与するアイデアの量を増やす必要がある。
しかし、「アイデアの発想」でアイデアを多く発想した結果、アイデアの組み合わせが逆に困難となりアイデアの発展が不十分となる問題やトレードオフ関係にある機能が存在する場合に全体最適となるようにアイデアの発展が十分にできない問題により、「詳細評価」でVE活動目標が達成できずにVE活動の手戻りが発生するなどの問題が発生している。
そこで、本論文では、アイデアの発展を行いやすくする技法として「アイデア体系図を用いたアイデアの発展技法」を提案する。
VE実践活動において、基本ステップ「代替案作成」の詳細ステップ「詳細評価」については、『新・VEの基本』1)によると「技術性の詳細評価」と「経済性の詳細評価」で評価することになっている。複数案作成された提案について「技術性」と「経済性」の二面から評価することは、提案の実効性を評価する重要なステップであり、科学的な意思決定が必要とされる。しかし、VEプロジェクトの置かれた制約条件を多面的に分析し、将来のリスクを含めた適切な詳細評価をすることは、従来の詳細評価では困難であった。
そこで本論文では、『新・VEの基本』や過去のVE研究資料、VE事例等から詳細評価の内容を精査し、その改善策として従来の詳細評価に『新・管理者の判断力』2)で紹介された「ケプナー・トリゴープログラム」(以下、KT法という)を組み合せて評価する方法を提案するとともに、事例による有効性の検証結果を報告する。
VE実施手順の機能定義段階で定義した機能は、アイデア発想の起点となり、価値の高い代替案を作成する上で重要となるが、従来のVE手法では、定義された機能が正しいか、抜けが無いかを客観的に確認することは難しい。
そこで本研究は、特許という外部の知識データベースを用いることで、機能の抜けが無い機能系統図を作成することを目的とし、特許を活用した機能系統図作成の手順を提案する。製品の改善VEに本手順を適用し、有用性を確認した。
本手順を用いて、特許から達成したい機能(目的機能)を抽出し、対象テーマの機能系統図に融合させることで、果たすべき機能という視点から機能の定義を行なうことができた。さらに、機能の抜けを防ぐだけでなく、上位の機能分野を定義することができ、より価値の高い代替案を作成できる可能性があることを示した。