コスト競争力の強い新製品をつくるためには、「原価企画活動を主体的に進める開発設計者だけでなく、この活動を支援し、開発設計者と共同推進する部門とり わけ原価企画を行う部門の強化が必要である。その役割は、対象製品に関連するメンバーを選定し、目標原価達成に向けた方向性を示し、確実に目標原価達成に 導くことである。すなわち、この部門が原価企画を効果的に支援し共同推進できる力(以下、原価企画支援力、略して原企支援力と呼ぶ)を持ち、個々の原価企 画対象製品に対して原企支援力が十分に発揮され目標原価達成に向けて効果的に活動ができていることが最も良い姿である。そこで本論文では、次の2点につい て述べる。第一は、原企支援力の評価基準を作成し、現在どの程度の支援力があるのかを把握する方法である。具体的には、原企支援力に対して評価対象を決 め、そこから評価項目を決定していき、評価方法を確立し、それに従って基準を作成する。そして、その基準に基づき評価指標(以下、原企力指標と呼ぶ)を作 成することである。第二は、原企力指標の向上施策を立案し実行することにより、個々の原価企画活動を高度のレベルで実施できるようにすることである。この 指標を自動車部品業界の原価企画活動に活用してその有効性を述べる。
VEリーダー(VEL)の資格を取得したものの、実務に活用できていない者が少なく
ない。そこで、本論文はVELの実践能力を向上するため、成人教育理論を活用した全員参画型のフォローアップ教育プログラムの構築方法を提案するものである。
成人教育理論では、成人を「社会生活を営む上で生じる課題・問題に対処するため学習する存在」と捉え、子どもの学習とは異なるアプローチでより効果的な学習支援ができると考える。
こ の理論を活用してVELの実践能力を向上するための教育プログラム構築手順を考案し、例として機能系統図作成の応用手法に関するフォローアップ教育プログ ラムを実施した。他の教育形態との比較、受講後のレポート・アンケートの結果、実務へのVE適用状況から教育効果を評価し、VELの実践能力を向上する教 育プログラムが構築できたことを確認した。
不具合事象の対策には、①不具合事象の把握、②要因解析、③改善策立案という原因追求型の問題解決プロセスがとられることが多い。いわゆるQC的問題解決プロセスである。
こ のプロセスの中心的な活動は、不具合の発生原因を想定し、それが真の原因かどうかを確認するという仮説・検証プロセスであり、この要因解析プロセスをいか に迅速かつ確実に実行できるかがポイントになる。つまり、設計時に気づかなかったような原因が仮説・検証されてこそ効果的な改善案の立案ができるわけであ り、そのためにはメンバーの思考を変革する必要がある。
一方、組織としての設計力を継続的に向上させていくためには、発生した不具合事象や その発生メカニズムの論理構造、およびその具体的対策方法などを設計知識として組織内に蓄積し、今後の設計やクレーム対策に役立てられるよう伝承していく 必要がある。いわゆる技術蓄積・技術伝承である。効果的に技術を伝承していくには、やみくもに情報を残せばいいというものではなく、再利用性に優れた形で 体系的に蓄積していく必要がある。
そこで本論文では、機能面からの視座を加えることによる原因追求の多観点化と、機能系統図上に整理された設計知識の再利用性に着目し、不具合対策プロセスに機能本位の思考を取り入れることで、
① 具体化過程で発生した不具合事象の迅速かつ確実な改善案立案
② 不具合知識の機能系統図上への蓄積
を実現する不具合対策プロセスを提案する。
顧客の要求する製品を生み出すためには、その製品に求められる機能、品質を達成するために基本となる固有技術と、価格、納期などの管理技術を併せた 総合技術力が不可欠であることは言うまでもない。しかしながら昨今の企業環境をみると、団塊世代(ベテラン)が去り、急激な増産対応へ新人投入するも教育 不足がたたるなど技術レベルの低下による品質の維持・向上が難しい状況に陥っているのが実態である。
本論文ではその対応策として、専門の知 識を持つ技術者のプロジェクト活動によって、対象とする製品の果たすべき機能、機能分野、その制約条件を明らかにし、それらの達成手段である構成要素(機 構・部品)を関連付け、さらに技術性の評価との対応関係を把握できる機能デザインマトリックス法を提案する。
機能デザインマトリックスは、 製品の広義の機能と、製品の構成要素、製品の技術性の評価の関連をデザインした機能的研究であり、製品に関する固有技術情報の集大成である。これを活用す ることで、競争力のある製品設計、固有技術の確実な伝承、新たなVE活動への貢献、設計・製造変更での検証漏れ防止など、製品品質の維持・向上に貢献する ことを示した。
建築工事のVE検討においては、実施設計図をVE検討の対象とするのが一般的である。しかし実施設計図だけでは発注者ニーズを的確に把握できないために、充分なVE検討成果を得られないことがしばしばあった。
今回は施工者の立場で、シナリオライティング法と機能系統図を用いて潜在的な発注者ニーズを把握する方法を考案した。
さらに、把握した発注者ニーズに基づいて、効果的なVE検討を行う方法と、機能系統図を利用してVE提案内容を効果的に発注者へ説明する方法を考案したので紹介する。
収益が見込めるコストで、市場にタイミングよく、安定した品質のソフトウェアを提供するには、安定した開発プロセスの確立と、継続的なプロセスの改 善が欠かせない。その改善のアプローチとして、ソフトウェア業界のなかで広く導入されてきたのが、CMM/CMMIに代表される「能力成熟度モデル」を ベースとした改善アプローチである。
能力熟成度モデルをベースとした改善アプローチは、成功したプロジェクトが備えるプロセスをモデル化し、モデルとのギャップを埋めることで、プロセスの改善を図ろうとする方法である。この方法は広く受け入れられ、効果を上げてきた。
しかし、この能力成熟度モデルによるアプローチは、「コストと時間がかかりすぎる」「現場の主体的な取り組みになりにくい」「手段の目的化」などの課題が挙げられている。
そこで本論では、プロセス改善に機能的研究法を持ち込み、機能の視点に立ったプロセス改善のアプローチと技法について提案するものである。