公共事業に対する国民の批判や不信感は、相変わらず根強い。この原因として、地域の人々のニーズを十分にくみ取ることができないことや、計画策定手順が不透明になりやすいことなどがあげられる。
そこで「県民が何を必要としているのか」「使用者が求めているのは何か」を把握し、「公共事業が見えるようにする」ため、計画の早い段階から住民の意見を聞きながら計画を策定する県民参画が、公共事業の現場で、導入されている。
一方、国や地方公共団体で、公共事業の設計段階におけるVE(以下「設計VE」という)が導入されている。設計VEの導入目的は、地域のニーズに応じた設計、使用者の立場に立った設計など、公共事業をよりやすく、より価値の高いものとして提供していくことにある。
本論文は、「機能」という言葉で、「県民参画」と「設計VE」を結びつけ、地域住民が求めていることを事業の設計に反映する手法を紹介する。
公共事業における設計段階は長期間にわたるうえ、意志決定のプロセスが複雑であり、製造分野でのVEをそのまま適用することが困難とされてきた。また、VE対象が単品生産であり個別性が強いことから、VEを公共事業へ適用するには、個別の対象テーマに応じて検討の方法をその都度工夫することが必要とされてきた。
同一の対象テーマであっても適用の目的や適用段階が変われば、実施手順の各ステップにおける検討の方法やテクニックも柔軟に変える必要がある。しかし、多種多様な事業がある公共事業において、適切に検討の方法を選択することは容易ではない。
本稿では、検討方法の選択を容易にし、設計VEによる効果を高めることを目的に、検討の方法について定型化を提唱するものである。本文中では、この定型化した検討の方法を、スタイルと表現している。
現在、公共事業では設計VEは事業の進捗段階や事業種別に応じて分類されている。
本稿では、定型化の観点から、対象事業を改善するレベルや改善の方向性に応じて分類することが適切と考え、この考え方に基づく5つの基本スタイルを提唱する。また、改善の方向性の概念として、3つの方向性について説明する。
最後に、特に適用方法に工夫が必要となるデザイン・レビュー型、開発設計型について事例と共に留意点を詳述する。
なお、本稿では、公共事業における設計VEについて取り扱っている。よって本文で扱う設計VEとは、公共事業における設計段階に適用するVEである。
公共事業では、計画、設計の段階で事業費を算出する。そして、その事業費をもとに事業が管理される。事業の凍結や停止も、この事業費を利用している。
しかし、設計の時点で算出した事業費が、最後まで変わらないことはほとんどない。なぜ、毎回事業費の修正をしなければならないのか。その理由は、「事業費はたった1つしかない」という幻想を信じているからである。本来、まだ起こっていない未来の費用を、完璧に見積もることは不可能である。
そこで、重要なのがリスクの概念である。リスクを設計に盛り込み、より最適な改善案を引き出すための新たな手法「コスト・リスク・マネジメント」を提案する。
100年に一度と言われる世界的な大不況が企業の業績を大幅に悪化させている。各企業は生き残りをかけて企業体質を強化し業績を向上させて、この激変する外部環境に対応しなければならない。このような外部環境激変の環境下にあって、企業が業績の向上を図るためには企業内の諸活動を活性化させなくてはならない。また、この諸活動の成果を的確に測定し評価することが大変重要な課題となっている。
バランス・スコアカード(以下、BSCという)は、財務、顧客、業務プロセスおよび学習と成長の4つの視点から組織の戦略目標とこれを実現するための具体的なアクションを識別して構築できる経営ツールとして活用されている。
しかし、BSC活用面の課題として、「単なる業績評価指標の寄せ集めでしかない」や「業績評価指標の設定が容易でない」などの項目が挙げられている。
そこで本論文は、機能的研究法をBSCにおける業績評価指標の設定に活用する方法を提案するものである。
顧客ニーズの多様化や製品ライフサイクルの短期間化に対応するため、製造業各社の開発製品数は急増し、製品開発プロジェクト価値をいかに向上させるかが重要な課題となっている。そこで、多数の開発プロジェクトにおいて、プロジェクト価値向上のためにバリューマネジメントをいかに行っていくか、またいかに組織展開していくかについて提言する。VE技法とプロジェクトマネジメント技法とを融合させた新たなバリューマネジメント技法について述べる。
管理技術は固有技術をサポートする技術である。近年、固有技術は異分野や新分野間の技術融合が進みつつあり、積極的な新分野の研究推進が必要となっている。これに応じて管理技術も変革を迫られることになると考えられる。こうした現象から、今後のVEが必要としているもののーつとして、新たなVE技法の開発あるいは他の管理技術との技術融合等がある。この問題を解決するために、本論文ではVEとは別の方法論であるTRIZをVEの中で有効活用し、両手法の長所を生かした新たな手法を提案し未来に備えたい。本論文は、VEの基本思考は変化させずに実施手順の詳細ステップにTRIZの概念を導入し、VEが次世代を目指した新しい手法として活用できるように試行したものである。