外部調達品のVEによる改善は、設計情報やコスト情報を購入側では把握しきれていないため情報不足により、購入側にとっては不要な部品の削減や部品の形状・仕様変更、等による改善の推進が困難な場合が多い。そのため供給メーカーの協力がないと、そのようなVE的な改善が進まないのが現状である。
そこで本論文では、コスト解析というプロセスを通じて、購入側にて対象品の機能・コスト面での理解を深め、その結果から外部調達品のVE思想を活用した改善を促進させ、外部調達品のコスト低減、価値向上につなげる手法とその適用例を示し、有効性を明らかにするものである。
第40回VE全国大会(2007年開催)において、「VE実践力向上のための人材育成プログラム」と題したVE研究論文を発表した。この中で、VE実践力の向上を図る方法として、実課題の解決を通じた人材育成プログラムを紹介した。この育成プログラムの基本的なカリキュラムや適用事例は既に示したとおりであるが、その課題解決力・VE実践力育成の主要な要素は次の4つであると考えられる。①必要な知識の習得、②習得した知識を基に考えさせる、③VE活動の実施、④VE活動における問題点の指摘。
本論文では、これら4つの要素について、育成対象者のVE活動を実施する実践力や対象とする課題に合わせて、どのように指導すべきかなど、より具体的な対処方法に踏み込んで考察を加えると共に、実施結果からの知見も紹介する。
本人材育成プログラムの考え方を適用して、部長クラスのプロジェクト・リーダーをVE活動の効率的な進め方(プロセス)を設定でき、部下への効率的なVE活動の進め方の指導のできる人材を育成することで、部門全体のVE実践力の向上に繋がっている。
製品の外観を良くするためには、魅力機能として取り扱い、顧客要求や顧客満足度を指標に計画が進められる。一方、土木事業で扱う景観には、建造物の外観だけではなく、すでにそこに存在する自然や他の建築物の外観が含まれている。景観検討では、周辺環境との調和や強調といった概念が必要となる。
我が国では2004年に景観法(景観緑三法)が制定され、良好な景観の形成を促進するための仕組みづくりが進められてきた。しかし、具体的なアプローチ方法までは示されておらず、景観検討には担当者の感性やデザイナーの美的センスに頼らざるを得ないのが現状である。当初のイメージを具体的な形とし良い景観を創出するまでには、関係者の努力と多くの時間が投入される。
筆者は、景観検討の精度向上と効率化を目的に景観検討の手順にVEを取り入れた検討を行い、具体例によりその効果を検証した。本稿では、その手順、考え方、手法について具体例とともに示す。そして、景観検討へのVE適用の効果を明らかにするとともに、今後VEを用いた景観検討の方向性を示すものである。
個々の事業の改善から、公共経営としての取り組みの必要性が問われている。
特に、設計VEの効果が実証されている昨今に置いては、さらに進めたVM(バリュー・マネジメント)としての導入と運営が不可欠であると考える。事業をVEにより改善する時代から、社会基盤をVMによりマネジメントする時代へと移ることが大切である。
VMに必要な要素は、筆者の複数のVM導入の実績から、4つに集約された。つまり、この4つの要素さえ整えれば、VMの導入をはじめることができる。そして、そのバランスを常に保つことが、失速しない秘訣である。
さらに、VEの効果を最大限に引き出すテクニックについて、ファンクショナル・アプローチ、VEインセンティブ、ファシリテーション・スキルアップの3つを取り上げ、原点に立ち返った考え方や具体的な内容を紹介する。
土木事業へのVE導入は展開する時期にかかろうとしている。VE導入の基本であるVEの基礎つくりも年々発注者をはじめ各階層で普及されつつあると思われる。
しかし、複雑な構図を持っている土木事業は、もっと明確的なスタンスで取り組まないとVEの定着・普及が難しいことは否めない事実である。これらの特徴を汲み上げながら土木事業にVEを植えつけるには事業にマッチしたVE活用法が求められていると思われる。
本論文はまず土木事業のVE展開の基礎つくりを論ずる。つぎは土木事業のVE活用の課題を抽出する。そのつぎはVE活用課題の解決策を考察し、提案する。
本論文では、筆者が公共機関における設計VEチームリーダーとして直接関与したVEワークショップでの活動実績を踏まえ、公共VE成果をあげるためにチームリーダーが果すべき役割と課題を明らかにし、今後のリーダー育成についての方法を提起するものである。その背景事情には、政府、地方自治体では財政面での逼迫を受けて、公共事業のコスト縮減施策や価値向上対策の一環としてVEへの取り組みが活発な動きをみせているからである。公共VEは事業予算の有効活用と納税者、利用者に満足感を与える画期的な手法であるが、個別プロジェクトでVE成果を生み出すにはキーマンとなるチームリーダーの存在が鍵を握る。
近年の建設業における利益管理は、一般製造業で行われている原価企画の考え方を参考に大きく変化し、それに伴い企画から施工までの各段階でVE活動を中心とした利益創出活動が活発に行われるようになった。この利益管理を適切に行うには、利益創出活動の各段階を通じてVEデータ管理を効果的に行い、その有効利用を図る必要がある。また同時に、VE活動は主に受注前に重点が置かれるようになり、受注前のVEデータ管理の重要性が以前にも増して高くなってきた。
そこで、本稿では受注前の利益創出活動の計画、実施、統制の各段階で利用するツールにより、利益管理の基盤となるVEデータの管理を一元化した利益管理を適正化する方法を提案する。
VEの実務において、従来よりもVE活動の時間は減少しているにもかかわらず以前より良いアイデアの発想を要求され、また、VE資格は取得したものの実務に活用できない者が少なくないという現象が見られる。こうした現象から、現在のVE活動が必要としているものとして、VE実務の短縮化と新たなアイデア発想技法の開発およびVE技法の簡素化等が考えられる。この問題を解決するために、本論文ではVEとは別の方法論であるTRIZをVEの中に組み入れ、両手法の長所を生かした新たな手法を提案し現状打開の一助としたい。
本論文は、従来のVEにおいて効果的な解決が難しい部分にTRIZの概念を導入し、VEが次世代を目指した新しい手法として位置付けられるように模索したものである。