製品多様化と部品少数化の二律背反を克服するために、次の10の活動ステップからなるモジュラー・デザイン方法論を開発した。
(i)製品システム構成確立、(ii)モジュール数およびその使い方確立、(iii)目標設定・実行計画策定、(iv)製品ミックス整備、(v)設計・製造連携VE、(vi)生産構造要件書運用、(vii)設計のモジュール化、(viii)編集開発、(ix)MD効果の実現、(x)MD視点、デザイン・レビュー
また、製品のモジュール化を阻害する要因を解明し、それにもとづいて製品のモジュラー型/擦り合わせ型を判別するモジュール化難易度指数の算出法と製品をモジュール化しやすくする7つの技術方策を提示した。
公共事業は、経済活動と国民生活を支える社会的使命を担っている。しかし、限られた財源と長い事業期間は、大きな課題となっている。コストを削減する技術は多くが提案されてきたが、整備を早める技術があまり提案されていない。
そこで、公共事業の整備に関わる各段階において、それぞれに実践的対策法を提案する。すなわち、合意形成を早める実践的対策法、工期を評価する実践的対策法、機能発現を早める実践的対策法である。
合意形成を早める実践的対策法では、3つの共同VEの提案を行っている。工期を評価する実践的対策法では、コストと工期を同時に評価できる多指標評価法の活用を提案している。そして、機能発現を早める実践的対策法では、段階整備の考え方と各段階における価値分析を判断するプロセスコントロール図法を提案している。
これらのテクニックが全ての公共事業に活用され、国民、県民の満足度の高い社会資本が適切なタイミングで提供されていくことを願っている。
VE活動において抜本的なアイデアを得るためには、VEを専門的に実施する専門家よりも、実務を一定期間経験し業務に精通した者がVEを正しく理解し活用した方が効果的である。弊社でも、各部門がVE活動を自立的に実施できるVE活動の成熟期に向けて、VE教育を行うとともに、VE活動の指導や自立に向けた働きかけを継続しているが、自ら自立的に適切なVE活動を実施できる人材が増えていない。
そこで、本論文ではVE活動を自らの実践力で自立的に実施できる人材を育成するプログラムを提案するものである。これにより、VEの技術を駆使して課題を解決し企業の利益創出に貢献できる人材を育成し、その人が次の世代を育成して自立させることで、企業体質を改善することが狙いである。
本育成プログラムの適用により育成対象者のVE活動の実践力は着実に向上しており、期待される効果は得られたものと考える。
政府、地方自治体では財政面での逼迫を受けて、公共事業のコスト縮減施策や価値向上対策の一環としてVEの取り組みが活発な動きをみせている。公共VEは事業予算の有効活用と納税者、利用者に満足感を与える画期的な手法であるが、成果を生み出すためには運営体制の確実な整備と個別プロジェクト単位での推進マネジメントが重要な鍵となる。本論文では、地方自治体でのVE導入と個別プロジェクトの本格的なVEワークショップでの活動実績を踏まえ、公共VEが成果をあげるための課題を明らかにし、その解決策を示す。
土木事業への導入はまだ模索の時期と言っても過言ではないと思われる。VE導入の基本であるVE教育は課題が残ったまま推進している状態になっていると考えられる。
土木事業の構図は他業界より複雑であり、事業内容も不明確な点が多く潜んでいることは否めない事実である。これらの特徴を汲み上げながら土木事業にVEを植えつけるには事業にマッチしたVE教育が求められていると思われる。
本論文は土木分野のVE教育について事業者教育を中心に言及し、過去7年間にVE教育を受けた土木事業関係者の反応を分析する。さらに土木分野の各階層のVEに対する認識をもとに土木事業におけるVE教育について考察する。
社内のWSSにおいて約100チームが発想したアイデアを分析することで、機能表現の抽象化との関連性や有効性の確認をおこなった。取上げたテーマは「外部排水溝工事」で、機能表現としては「水を流す」とそれを抽象化した表現の「水を処理する」から、発想されたアイデアを比較検討してみた。その結果、ユニークなアイデアの出現率やアイデアの着眼点およびアイデア発想数などで顕著な差異が認められたため、建設のVE検討においても機能表現を抽象化することがアイデアの拡大に寄与することが判明した。
これまで公共事業では、社会経済の高度成長期にあって、整備目標に向かって求められる施設を早く大量に作ることが求められてきた。そして高度成長期が終わり、多くの公共施設が整備された今、求められているものは「良い公共施設から得られる良いサービスの維持」である。また、豊かになった社会は多様なニーズを生み、公共施設には新しい価値が求められている。
このような価値観の変化に柔軟に対応しサービスを維持しつづけるために、公共事業ではこれまでの施設の維持管理システムを見直し、新たな施設の維持管理システムを構築することが緊喫の課題となっている。
本稿は、公共施設の維持管理システムを構築するうえでVEを適用することが有効であることを明らかにするものである。そして、システムを構築するうえで重要な視点となる「整備水準の設定」「VEを適用した資産価値の評価」「ワークショップによる維持管理システムの構築手法」について示し、これらにVEを適用することにより得られる効果について具体的に述べる。
戦略としてVE活動を行おうとする場合、経験豊富なVEL資格取得者がおり推進体制があるにも関わらず、最適にVE活動が行われない場合が見受けられる。この事象は戦略を実行に移すための仕組みであるマネジメントコントロールシステムの不備が原因であると考えられる。
組織が求めている適切なVE活動が行われている状態をE=1、VE活動を行うために必要な資格や経験などの能力と体制がある状態をC=1、VE活動メンバーや関係者にとって、VE活動を自ら進んで行いたいと思う状態をW=1、VE活動を行わねばならない状態をS=1として、それぞれの状態の関係をE=C∩(W∪S)とする。この式を事例に当てはめ、マネジメントコントロールシステムの視点からVE活動の阻害要因を分析し、対処法を検討した。このような、マネジメントコントロールシステムを活用した効果的なVE管理をVEコントローラーシップと呼ぶことにし、本論文ではE=C∩(W∪S)のうち、S=1を作り出すことで効果的にE=1とするVE管理について一般化することを試みた。
製品の機能を損なわずにその製造コストを低減すれば製品価値は向上する。あるいは製造コストを上昇させずに機能を上げることができれば同様に価値が向上する。このような製品の価値を向上させるために新規製品の設計・製造を検討したり、既存の製品の見直しを行うVE活動において、通常は製品が設計・製造され実際に販売され収益を上げることができれば一応の活動終了となる。しかしながら消費される製品は別として、ある程度の期間使用される製品は、物理的には減少することは少ないが、故障・劣化するなどしてその製品の持つ機能が低下もしくは欠落して使用価値が減少するものが多い。この価値低下を防ぐこともVE活動として捉えていく必要がある。
特に製品がまた次の製品を生み出すもの、つまり生産設備のようなものは、購入当初の価値もさることながら、長期間使用されるものゆえ、その価値の維持が非常に大切である。それが生み出す製品の価値をも下げてしまう危険性があるからである。そのため設備の機能の中には「各機能を低下させない機能」が含まれるべきであり、例えば劣化を防ぐ機能が盛り込まれた製品は、それがない製品よりも高い価値を持つと考える。そして製品が使用されている段階においても、機能を低下させない維持活動を管理することで価値は維持され、改良改善による性能向上は設備の価値を高めることにつながる。
従来のVEとして製品の機能を高めることで価値を向上させるという観点に加えて、製品の機能を維持することが結果的に製品の価値を向上させることにつながるというのが本論分の主張であり、主として生産設備を取り上げ、その価値の維持・向上のための管理方法について論じていく。
近年は、VEチーム活動を後戻りさせることなく長期的かつ確実に改善し続けるVEチーム活動のレベルアップ(以下単にVEチーム活動レベルアップと言う)が企業または経営上に必要となってきた。この背景には、人から人へVEノウハウを伝えることが多く、IT(Information Technology)などを単に活用するだけではVEチーム活動レベルアップの効果が低く長年VEを実施していても必ずしも活動がレベルアップできていない現状があった。そこで本論は、ナレッジマネジメント(Knowledge Management以下KMと言う)の基礎理論を活用した長期的かつ確実なVEチーム活動レベルアップを実施する手段として以下の特徴を有する具体策を提案する。
本論の最大の特徴は、KM活用による①VE実施手順を中心とした新しいワークスタイルを作り、②新たな知識・ノウハウを抽出・活用しVE実施手順各ステップの活動内容をVE適用対象や段階に応じて改善し続けることにある。具体策概要として、①コミュニティ性のある電子的に共有化されたVE実施手順を用意し、②この実施手順を起点にVEチーム活動を行う、③活動に効果的な新たな知識・ノウハウを抽出・活用し、④実施手順各ステップにおける活動内容の継続的改善を行う、ことを提案する。