本研究は競合製品が多々ある成熟製品を対象として、次期改良型の新製品を開発するときの製品コンセプトづくりに不可欠な顧客情報を作成し提供する新しい方法論を明示するとともに、その有効性を明らかにしたものである。それは2つの部分から構成されている。
第1は、現状の機能に対する顧客評価により、当該製品の主要な機能の改善対象を明らかにするものである。第2は、この改善対象機能を具体化した方式案を組合せて製品設計案を複数考案し、これらの案に対する顧客の選好を調査した上でコンジョイント分析を行い、得られた情報を製品コンセプトテーブルにまとめるものである。
また、製品コンセプトテーブルを顧客層別にセギュメントして複数作成し、これらの情報を活用して、顧客層別に顧客満足の高い新製品開発を行わせるものである。
VEリーダー(VEL)の資格を取得しVEに関する基本的な考え方や進め方は理解しているものの、これを実務に活用できない者が少なくない。そこで本論文は、VELの実践能力不足を解決あるいは補助するため、コンピテンシーモデル(Competency Model)を作成しこれを活用する方法を提案するものである。
コンピテンシーは、高業績を上げている人達にみられる共通の行動特性や思考特性のことである。それはその人が保有している知的能力だけではなく、それに加えて具体的な行動として現れた能力のことである。
このコンピテンシーを、高業績者のノウハウ的な行動特性としてモデル化し、その活用による人材能力の向上(仕事のできる人をつくる)と企業の発展(業績を向上させる)を目的に欧米で導入が広まっている。わが国でも人材マネジメント全般へ人材能力向上に活用する研究が始められている。本論文は、この方法を応用してVELの実践能力の向上を図るものである。
昨今、年間市場規模50兆円と言われている公共事業は改革が求められ、顕著な改善効果がなかなか本質的に現れてこない。本研究は公共事業のプロセスに焦点を当て、それぞれの段階の課題を抽出する。これらの課題の中、特に発注者側が企画を練る段階に対し、管理技術VEを適宜に応用できる手法を提案することが主目的である。また、全実施プロセスに対しても分析を行い、公共事業の全体へのVE活用の課題提起も行う。
機能系統図を作成する「機能の整理」のステップはVEの最も特徴的な部分であり、その効用は設計思想を共有化する、創造力を刺激する、コミュニケーションを改善するなど、多くの利点がある。機能の表現方法や検討対象範囲などにより、系統図もいくつかのタイプに分類されることが知られているが、いずれの場合においても、最上位機能から展開される上位レベルの機能のとらえ方が、機能分野や重点機能系列を決める上で極めて重要となる。
一方で、VE活動の目的を「価値を向上させるための質の高いアイデアを効率的に出すため」と定義するならば、多くの時間と労力を割いて作成する機能系統図は、アイデア発想において付加価値の高いものでなくてはならない。換言すれば、「機能系統図」と「アイデアの出しやすさ」との相関において、チームメンバーの誰もが機能系統図の付加価値を高いと感じるものでなくてはならない。
本研究では、アイデア発想のステップにおいても機能系統図の作成手順と同様のアプローチで発想していく方法について、『アイデアの構造化』、『"願望機能"を起点とするアイデア発想』という新しい概念と、『フレームワーク』という汎用的なビジネスツールの概念を適用した新しい方法について提案する。機能系統図の付加価値を高めることで、機能系統図の作成検討時におけるメンバーのアイデア創出の動機を高めることができ、モレのない視点で効率的に質の高いアイデアを発想していくことが可能になると考えている。また、成熟した製品・業界において、既成概念を打破し抜本的に製品構造を見直すことは困難を極めるような状況の中でも、より現実的なアイデアを効率的に出していくことが可能になる。
この論文は、地域住民が主体となって、便利で、快適で、人情味あふれる個性ある街づくりを実現するために、VEを適用し行政と住民が協働して、街づくりプランを合理的に策定する提案である。従来の我が国の都市計画は行政主導型で、その内容や手続き等は法律で細かく規定され全国画一的であった。これを欧米方式に改め、個々の市町村が各々の特徴や個性を活かし、行政と住民が協働して、『コラボレーション・デザイン』の考え方を取り入れ、都市を形成する方針に都市計画法が改正された。それは様々な考え方を持つ住民が、望ましい街づくりの未来像を描き、その構想やイメージを共有して、街づくり目標を達成するアイデア発想して街づくりプランを策定し、住民が主役の街づくりを進める。
すなわち、行政と住民が協働して創意工夫し、街づくり目的に合った良好な街環境を形成し、維持・向上させる考え方である。そのため、街づくり機能を明確にし、その機能を達成するアイデア発想して、アイデアを相互に補完させ、異なる発想を交錯させ、新たな視点を見出し調和させ総合化して、目的に合った街づくりを実現するVE論文である。
小型メカトロ装置の設計開発については、従来の高度成長期の開発装置は、ともすると設計者各人の技量が装置全体に提案され、顧客の真の要望は二次的要因であった。顧客満足度を追求した装置を開発製作するための手法として、設計者が開発段階で行うDR(デザインレビュー)とVE(バリューエンジニアリング)の仕掛け仕組を一体化し、ISO環境等をも加味し、チームデザインで行った「M-VM手法」(以下説明)を実践し、各メカトロ装置の開発をすることにより、装置全体のスキルアップと顧客の満足度向上と信頼性の向上を得ることができた。その結果、プリンターメーカーの自動化装置、公共のETC用遮断機の受注展開、駐車場システム装置への応用、半導体画像検査装置への進出、環境関連システムの受注に繋がり、その部門のスキルアップとマネジメントの構築が図れ貢献できたので、ここにメカトロ装置開発のリニューアル化とマネジメントについて述べる。
購買費用は、製造業の例でいえば、原価の約55~70%を占め、企業経営への影響度が高い。筆者は、最安値が実現でき、かつ効率的、効果的な購買テクニックの開発はますます重要であるという認識をもっており、企業経営に役立つ購買主導的な活動は何かという観点から本テーマに挑戦した。
アプローチの方法は、購買業務機能はなにか、経営に貢献できるその時代、時代の購買戦略機能は何かを再点検することを試みた。ここで明確になった機能を達成するための方法と科学的なテクニックを開発・改良して適用する。
さらに、購買業務機能、戦略機能、テクニックを有機的に組み合わせマトリックスにして、誰にでもできるようにしたものである。これらの方式は、実戦でも活用済みである。また、経営状況や市場の状況の変化に応じ、内容を見直しながら活用できる。
経営にVEを取り入れている企業は多々ある。しかし、企業は収益を上げねば成り立たない。一方、VEの狙いは顧客満足度向上である。顧客価値(顧客満足度)と企業価値は一見相反する事象に見える。つまり、顧客要求機能に傾注すると原価はあがり、企業価値を低下させる。いかにすれば顧客価値と企業価値の両立はありえるのか。V=F/Cに新たにプライスのPをパラメータとして用いることで顧客価値と企業価値の関係を明らかにするとともに顧客価値向上の両輪である価値企画活動と価値改善活動を励行することが、顧客価値、企業価値の双方の価値を高めることになることを示した。また、価値向上活動においては企業価値向上目標のみならず顧客価値向上目標を掲げた活動こそが顧客本位の活動ではないかと提案する。更に価値向上活動の全容を示すとともに、価値企画活動および価値改善活動の進め方について私見を述べた。最後に連結経営下での関連会社価値向上活動を展開するうえでの組織と戦略について一考察を付した。
新製品開発の成功の要は製品企画段階にあると言えるが、真に顧客満足の高い製品を実現するには単純に顧客要求を把握するだけでは不十分であり、製品化技術の今後の発展を長期的な視野で見抜く力も問われる時代になっている。そこで、本論文では、最近注目されているTRIZの技術進化のパターン等を活用して、次世代製品の近未来の姿を社会の変遷と技術の発展という観点から予測し、その予測結果を企画VEに反映させるアプローチを提案するものである。予測結果のアウトプットは、純粋に対象製品の近未来を描写したシナリオ(文章形式)を想定しており、このシナリオが製品化コンテンツのコアとして企画書に反映されることになる。なお最近、筆者はこのような革新的なシナリオライティングメソッドに対して『FUN Method(ファン・メソッド)(Future Navigation Method』と命名した。本論文では、本メソッドの中で活用する主な技術進化の未来予測テクニックを小事例に基づいて紹介するつもりである。
建築工事においてVE検討は原価低減のために計画、設計、見積、調達、施工の各ステップにわたり日常的に行われている。特に近年は顧客の機能・コストについての要求が厳しく、効果的なVE手法が求められていた。一方、建築物は構成部品が非常に多く、建築物全体を大きく捉えてVE検討対象を効率的に絞り込むことが難しかった。今回考案した手法は、短時間で建物全体を大きく捉えて価値の高い代替案を提案することを目指した。
なお、本論文は第32回VE全国大会にて柏原氏が発表した「建設VE検討におけるテーマ絞込み法」を発展させたものである。建築工事費の「工事項目の金額比率」に注目して対象分野を絞り込む方法に加えて、本論文ではさらに「①面積あたり工事項目金額」「②面積あたり数量・容量」「③設備容量あたり単価」の値に注目することにより、VE検討の対象テーマを絞り込む方法を考案した。この手法を用いて実際の物件にて検証を行った結果、手法が有効であることを確認できた。
一般的に、数多くある競合製品において、製品差別化のために複数の付加機能が追加されるが、これらを合理的に金額評価する研究はさほど進展していない。本研究は付加機能が複合化させることによって生じる相互効果を、相互効果額・相互効果額比・相互効果認識率の3つの指標を用いて具体的に金額評価する方法を提案し、その有用性を明らかにするものである。
これらの評価値を総合的に活用することにより、戦略的な製品コンセプトづくりや標準的売価決定の基幹となる予測売価の算出、さらには原価目標の設定などに効果的に活用できることを明らかにするものである。