論文発行年度: 1999年 VE研究論文集 Vol.30

社内のVEプロジェクトを推進している内に、それぞれのプロジェクトの成否にメンバーの心理状態がかなり影響しているように思えるようになった。そこで、VEジョブプランの各段階で「心」の状態がどう揺れ動くのかを整理し、その良好でない状態から脱するにはどうケアすべきかについて検討してきた。

大脳生理学、心理学にそれを求めた結果、とりわけ心理カウンセリング手法が有効でありVEに応用できることが実感でき、これを中心にジョブプランの各段階でその応用方法を述べる。また6年前に発表された「3分間発想法」はこの心理カウンセリング手法を上手く取り入れたものであるので、この手法の有効性を追認した。

最後に、「VEジョブプランにおける心理的方向づけ」を整理し述べた。

機器の購入価格の実績データ数が少ないので、購入品の価格見積りに統計的手法が使いにくい場合に、制約付回帰分析の技法を活用することにより、購入価格の予測モデル式を設定することができる。これを使用することにより、限られた実績から新規案件の機器の購入品の価格見積を簡便・迅速に一定の正確さのもとで行うことができる。

本研究はプラントの構成機器を対象として、まず、購入品の価格予測モデル式を作成するものである。次いで、購入品の価格予測モデル式の各項のウエイトは、各設計特性値が購入品の価格にどれくらい影響があるかを示しているので、各設計特性値を変化させることにより、購入品の価格変動についてのシミュレーションを行うことができる。最後に、設計者が企画・設計段階において設計特性値を適切に組み合せることで、コストミニマムとなる仕様の選択を行うツールとしても広く活用ができる。

さらに、代表的なプラントの高額な機器を対象に機能分析を実施し、機能分野ごとの「機能評価値とコスト」との関係を把握し、価値改善の対象分野と改善目標値を明らかにした。

本論文は公共事業プロセスの要とも言える設計段階で機能向上を図りながら、従来より少ない投資で合理的な土木構造物を求め、VE手法の土木設計への応用方法を探り、VE効果を明らかにするものである。その結果、複雑かつ保守的な土木設計プロセスにVE手法を適切に応用することにより機能向上をはかりながらセービングコストが全工事費の10%、20%に達していることが実証できた。

公共事業においても設計時に適切なVEを導入すれば、かなりの効果があがることは明らかであり、今後、公共事業とりわけ土木事業におけるVE役割が大きいと確信している。

建築工事におけるVE検討は、設計・入札・見積・調達・施工の各段階で企業にとっての受注拡大や利益確保のために実施されている。しかしながら、工事項目が多岐にわたり設計図書が多くなると、有効なVEの改善対象分野を選定できず、総花的なCR案の提示か仕様の変更提案に終始してしまい、顧客や設計事務所から不信感を持たれる場合も散見される。VEが目指す抜本的な代替案の提案を生み出すためには、対象工事のムダな部分をいかに早く見つけ出しテーマとして抽出できるかによるといっても過言でない。

ここでは、各種工事の金額比率に着目し市販の「工事原価分析情報」のデータと比較し分析することにより、早い段階で対象分野を選定しテーマとしてしぼりこむ方法をとった。その検証事例では、工事全体を分析することにより建築と設備にまたがるテーマが選定でき、高い効果が期待できるVE手法であると確信している。

技術レベルの高い専門分野の新製品開発は、常に未知の分野への挑戦であり、創造性が要求され、開発者個人の能力に依存するところが大きい。したがって、この分野の新製品開発を一般の開発や作業と同じように進捗管理することは、本来なじまないものとされてきた。

本研究ではここにメスを入れ、高度な専門的スキルを持たなくても新製品開発の進捗管理を行えるひとつの方法を提案し、開発効率の向上に役立てようとするものである。

本研究では、新製品開発の進捗管理を対話式で行い、発生した問題、あるいは発生するであろう問題の本質を効率的に捉える方法を示すとともに、問題を解決して到達すべき目標を機能的表現で捉え、その解決策(アイデア)追求を機能的かつ効率的に行う方法を示す。さらに、考え出した解決策を、機能とコストの関連から総合的に評価する方法も示す。これらは、従来のやり方に比べ問題解決能力にすぐれ、その効果は過去の実績が示すものである。

長引く景気低迷のなか、目標利益が得られない等、厳しい状況下で受注するケースが多発している。企業が永続的に発展するためには、このような状況下においても顧客満足を得ながら目標利益を確保することが不可欠である。本論文はこれらを可能にするための『建設業における原価企画システム』について提言する。原価企画システムはコストを切り口とした一連の管理活動であり、それは企画提案から施工に至る過程で体系化されたVE活動を効率的に実践しながら、確実に目標利益を得ようとするものである。これらを総合建設業の立場から展開するものである。

製品を対象にVEを行う場合、コスト低減と機能向上がその目的となる。このコスト低減を考える上で、従来のように部品コストだけを対象にしていては不十分である。

昨今の企業を取り巻く環境は技術革新のスピードが速く製品の寿命はますます短いものとなってきているので、相対的に総生産量が縮小しているからである。

したがって、型と部品をトータルで見たVE活動指針が重要となり、この活動指針を作るための諸条件についてまとめた。

製品差別化に当たって重要な役割を果たすのが付加機能である。付加機能は単独で組み込まれることは少なく、通常、複数の付加機能が同時に組み込まれる。複数の付加機能が同時に組み込まれることにより、顧客が有用であると認識する新たな機能がほとんどコストの上昇を伴うことなく生み出されることがある。本研究ではこれを機能の複合効果と呼ぶことにする。

本研究はこの複合効果に着目し、顧客指向による「機能の複合効果認識率」および「機能の複合効果額比率」という2つの新しい評価指標を提案し、これを用いて事例に基づく複合効果の分析・評価を行う。さらに、この結果に基づいて、より価値の高い新製品コンセプトづくりや売価設定に有用な情報を提供するものである。