論文発行年度: 1997年 VE研究論文集 Vol.28

市場における競争優位性を確保するためなどで製品差別化を行うにあたって、重要な役割を果たすのが付加機能である。本研究では、付加機能に対する顧客の曖昧で、しかも、顧客間でバラツキのある評価額を統合して顧客評価額の代表的価格を算出すると共に、この代表的価格の増減に伴う需要量の変化を予測する方法を提案し、この手法を活用してその付加機能の戦略的価格設定や開発設計段階における製造原価目標の設定などが合理的に行えるようにするものである。

さらに、本研究で提案した方法を家庭用電話機の付加機能の価格設定に適用することによって、この方法の有効性を明らかにする。

VE活動は日常業務として定着している。各種の技法などによる取り組みや運用・展開などはいろいろな場面で行っており、各分野において独自になされている。そのため本論文は建物の計画から施工まで一連のVE活動に対しての考察を行うものである。その主な内容は、建物の機能性などの情報を共有化して、顧客や利用者のニーズを満足させるVEの展開をするものである。

企業経営の基盤の強化や経営資源の有効化を図るためには、これらを構成する組織や従業員等が保有する技術を総合的に発揮しなければならない。特に人の集合である組織に対して重要な要素である。

VEワークショップセミナー、VEジョブプランを適用する過程において個の集合体である組織に対してどのように作用して、どのように影響していくかを研究することによってVE技法の導入、普及を迅速化できると同時に、職場の組織に活力を与えることができると考え、VEを実践すると同時にこのメカニズムを研究したので、ここに発表する。

社会は人間の倫理観と美意識からなる価値観により変化する。企業はこの変化に対応し、価値の高い商品やサービスを市場に提供することで、社会に貢献し、存続をしている。

VEでは機能を「使用することを目的とする使用機能」と「色彩や形状などの顧客の欲求を刺激する貴重機能」に大別してきた。近年は顧客の欲求の対象が「物中心」から「人中心」へと大きく変わり、利便性、快適性、嗜好性、安全性などのような「人間の感性に関わる機能」が重要視されるようになってきている。

本論文は使用機能、貴重機能と重なり合う、人間の感性に関わる「感性機能」の存在と感性機能の機能定義に形容詞類を使用する方法を提案するものである。

新製品開発は企業にとっての生命線であり、良い製品を安くタイミングよく市場に投入し、常に顧客要求に応える努力をしなければならない。そこで本論文では、VEをベースにした効率的な新製品開発プロセスを設計することによって、顧客満足の高い新製品を極めて高い確率で実現していく方法を提案するものである。具体的には、まずVEの問題解決プロセスを開発設計業務の標準プロセスとして昇華させ、プロジェクト方式で製品開発を行いながらデザイン・レビューも有効に取入れてコンカレント・エンジニアリングの効果を引出す。

そして本論文で提案する機能分析等に関わる応用テクニックも製品開発の標準ツールとして装備することによって、ムリ・ムラ・ムダのないいわゆるリーン・エンジニアリング(一貫性のある新製品開発体制)を構築しようという試みである。

目的を確実に達成する機能をもつ「オブジェクト」という抽象的概念を取り入れることにより、建築を構成する「商品」・「サービス」を「抽象的な階層化されたツリー状の構造をもつ、オブジェクトの集合体」としてとらえることができる。この集合体の目的を実現する手段としてのオブジェクトをシステム的手法で抽出し、段階的に細分化、詳細化・具体化する。その過程で、その構成品の改善案を順次抽出し再構成する。その再構成されたものが、「商品」・「サービス」の、より価値の高い代替案となる。この代替案の選択を通じて、集合体としての建築の価値の向上を図ることができる。この考えに基づく手法を「オブジェクト指向によるVE展開手法」と命名する。

本論文で、オブジェクトの定義、その構造、および、その手法の展開手順を示すとともに、工法改善VEへの適用事例を示して、本手法の有用性を明らかにする。

一般的によくいわれることだが、不況時にはコストダウンの管理技術としてVEは重要視され、好況時には忘れられることが多いので、なかなかVEの本質であり、基本である機能定義を正しく理解し、活用している企業は少ないようである。

当社においても、VE概念やVE活動は一応定着しているが、VEの基本である機能定義は難解なこともあり敬遠されがちである。

本論文は、機能定義の中でも重要であり、その入口でもある使用者機能および基本機能に的を絞り、初心者でも簡単にこの両者を定義でき、また、一定の基準に基づいて機能レベルを自己評価できることをネライとして、機能定義用ワークシートおよび機能レベルチェックシートを開発した論拠と、その有用性を示すものである。

この機能定義用ワークシートおよび機能レベルチェックシートを使用することによる効果としては、VE教育や活動の場での機能定義の理解力向上、VE事務局のスキルアップとローテーションへの対応等により、一層のVE活動の活性化が期待できる。

なお、当社ではVAという呼称が定着しているので、以後VEをVAと表現する。

この論文では、施工段階でのVE事例を分析することにより、VE技法による改善アイデアが、他のプロジェクトでも利用されることが多いということに注目し、改善アイデアが、どのように展開しているかを追求する。改善アイデアの展開を考察することにより、新しいVEステップを提案する。

さらに、改善案の評価方法について提案する。提案する手法を適用した改善事例を評価することにより、提案手法の有効性の確認を行う。そして、単なるコストダウン案や改善案との違いを明確にする。

物が溢れる今日、消費者から見れば同じような商品が数多くのメーカーから世の中に送り出されている。これらはメーカ一間の技術力が均衡し、商品そのものの基本機能にも大差がないために、消費者から見るとどれも特徴をつかめず、同じような商品にうつってしまう。このような状況下において、メーカーとしてはどこに顧客の満足度をみいだし、いかにしてヒット商品を作り出すかが、重要な課題となる。

本研究では、このテーマに対して、VEの基本的な考え方であるV=F/Cの公式をベースに、商品の基本機能と顧客の満足度を知る上で重要度の高い人の感性の組み合わせから、機能Fの定量的な評価式を、さらには、商品の販売台数の実績から価値Vの評価方法を導き出した。そして、事業活動の中でこの評価方法を活用したVEの管理システムを紹介し、VEを管理する部門において有効性のある価値Vを考慮した企画・開発段階におけるコスト割付けの手法を確立してきたので、新しいVEの管理手法として提案する。