当工場の製品群の特徴は,多品種少量,ハイテク製品である。近年,高度技術の具現化を図りつつ開発期間の短縮が要求され,顧客ニーズに立脚した製品開発の効率的推進が,より重要な課題となってきている。
本論文は,開発VEジョブプランの各ステップに対応して,必要情報が得られる開発VEサポートシステム(情報バンク)を構築し,これを活用することによって,顧客ニーズに適合した新製品をタイミング良く開発していく一手法である。これまでに成功した例のうち,走査形電子顕微鏡を事例として示す。
通常のVEジョブ・プランでは,装置産業の製品を対象として活動開始した場合,工程でのみ利用される物(例えば,原材料を溶解させるための水や有機溶剤,触媒等)は機能系統図に表わしにくく,製品の生産のために使用するすべての原材料をコストダウンの検討対象とすることは困難であった。
本論文では前記問題点を,工程毎に機能系統図を作ること<機能系統図の立体化>により解決した。
その結果,機能別コスト分析も工程毎(立体的)に行うことになったが,その際の構成要素に原材料の他,経費に関する項目を追加した。
こうすることで,極めて簡単な方法で,原材料,経費両面にわたる大きなコストダウン成果が期待できる。
建築工事における作業所管理には,職員不足等多くの問題が生じてきた。
そこで,昭和62年6月より,少人数でかつ短時間で工事費全体にわたり,VE検討を行い,又バランスのとれた工事計画を立案するシステムを展開してきた。
ここでは,そのVE計画,テーマの選定,重点VEの指定,VE報告の簡素化等VE展開の流れと,そのツールとしてのVEチェックリストおよびVEヒント集について報告する。
建設企業の営業には,工事受注高を拡大する営業目標がある。この目標を効率的に達成するため,有効な営業戦略を立案し,営業活動を展開することが必要となる。
この営業戦略には,次の3つの戦略目標があると考える。何れも終局は,工事受注を目指すものであるが,その戦略構成は段階的に少しずつ異なる。
1. 『工事を受注する』ための戦略は,複雑な戦略の構成になる。
2. 『受注対象の新規顧客を獲得する』ための戦略は,かなり限定された戦略の構成になる。
3. 『受注確度を高め,将来に期待をつなぐ』ための戦略は,前述の中間的,平準な戦略の構成になる。
これらのことから,『工事を受注する』複雑な戦略立案の方法を重点に,営業VE手法について述べるものである。
商品寿命の長い製品に対しては,2nd Look VE活動が有効であるが,ビデオディスクやビデオ・オーディオテープのように全世界共通の規格にて設計内容が厳しく標準化されている製品では,VE適用上の問題により充分な成果が得られないことが多い。
本論文ではこの原因を分析し,VE適用対象の取り上げ方,VE対象の機能と制約条件との関係分析などに工夫を加え,上記製品に対する有効な手法として,「制約条件-機能系統図」を考案し,新しい2nd Look VEの適用方法を研究した。
「コスト(原価)の80%は開発設計で決まる」と言われるように,コスト生成プロセスの大半を担う設計者に対するコスト・モチベーションとも言うべきものは非常に重要である。しかし「コストは変動するもの」という言葉通り,不確定な原価を明確に設計者にイメージづけるのは意外と難しい。
コストトレンドとは製品の誕生前から終息までをスルーしたコスト推移曲線を指す。
昭和57年からの取組みの結果,コストトレンドはその形成の課程で,コスト管理機能を充分に果たすことが明らかになった。また従来機種のコストトレンド群はそのドキュメント性をもって,これからの機種のVE活動のポイントを示唆してくれ,商品企画への応用にも有用であることが実証された。本論はこのコストトレンドによるコスト管理の実際とその活用を報告するものである。
誤差の設計は,設計段階では,いつも後回しにされ,試作後に,対症療法が取られるのが一般的である。
その原因は,計算が複雑な上,最近では,部品構成が益々複雑になってきており,一部品の誤差変更が,製品のあらゆる,部位に影響を与えるため,これを一元的に把握して対応するのが,極めて困難なためである。
この論文で取り上げるのは,当社における住宅部品の設計に当たり,部品誤差を決定するために開発した手法であり,実際には,生産設備,施工精度を併せて検討を行い,比較的簡単に最経済的な誤差対策を立てるために役立ったものである。ここでは本システムに関する理論の概要と,結果を導くために必要となる,マトリクスシートの簡単な計算法について述べる。
ユーザーニーズ,設計アプローチがますます多様化する機能部品を一例に,すべての種類を把握分析し,それらの持っている機能にポイントづけすることにより,コストの順位づけをすることができた。このVE情報を設計部門に提供することによって大きなコストダウン成果を得た。この手法は,機能ごとにコストの重みづけを与えることにより種々の機能部品に適用可能であり,幅広い情報をキャッチできる立場にある資材部門のVE参画のための有力な道具となることを提示したい。
人は「あっ,そうか」とか「むっ,あれだな」とか,突然にヒラメクことがある。理屈では割り切れない人脳の特徴である。
一般に着想とかヒントは,発想者本人が意識しないだけで,大なり小なり"ヒラメキ"が起点となっている。
本論文では,このヒラメキをより効果的に確保するための方法について触れる。具体的には,ヒラメキが大変気まぐれであるという観点から,VE手順とそれを記録に残す態勢の工夫,およびヒラメキ誘発に効果的な発想技法を駆使することに焦点を当てている。
VEプロジェクトを成功させるうえで,実現性の高いアイデアを沢山出すことは,必要不可欠である。しかし,今までVEの基本ステップの中のアイデア発想において,いかに具体化して行くかという手法については,非常に重要なテーマであるにもかかわらず,あまり基本的な進め方がなく,バリューエンジニアがそれぞれ個人の経験にもとづき推進してきた。
今回,効率の良いアイデア発想をするための方法として,フェイズを三段階に分け,それぞれに対応してアイデア発想,問題点の摘出,評価,等を行い推進する技法を開発した。またこれは,ニーズに基づくアイデア発想(Want)とそれを実現するための問題点(Must)を対応させて進める手法を基本的にとっているため,WAMA法(ワーマー法)と名付けた。
(Want And Must Approach)
ハードVEに比べて,ソフトVE活動は困難な面が多い。VEでは機能中心に分析を進めるが,人の動きそのものが機能であるソフトVEにおいて,機能を特定することが難しいことに起因している。
この論文では,ソフトVEの中でも職場で業務上発生する日常問題の改善というケースを,いかに容易に分析すればよいかを考える。
そのようなケースの機能評価について,より職場の実態に即した方法を提示しようと思う。
ソフトVE活動を効果的にすすめるには,対象テーマに応じたVEステップの適用が必要である。マネジメント領域などの業務フローが明確でない問題に対しては,テーマに合わせた作業の過程を模索しながら活動をすすめているのが実状である。VE活動の基礎となる機能定義についても適切な技法が確立されていない。
この論文は,経営戦略の実行段階とVE適用局面から問題の特性と適用技法を考察し,新しい基準や理想をめざす未知の問題へアプローチする技法を報告する。
成熟した冷蔵庫などの家電製品の機能は製品固有の利便性を提供する基本機能と顧客ニーズの変化に応えて付ける付加機能(メリット機能とも称す)に分けて考察できる。
この付加機能は製品のセールスポイントになっており極めて重要である。したがって,顧客ニーズを捉えた新しい高価値の付加機能を付与した製品をタイミング良く,市場に提供していかなければ事業の発展はない。
本論文は,付加機能の価値評価法に関するものであり,付加機能の機能評価と原価を求めて価値評価を行い,自社製品の問題点を明確にして,これを改善する高価値の付加機能を選択することによって商品力の強い商品コンセプトを構築するものである。
物流業は顧客の付加価値製品を移動させることによって,場所的効用(利益)を生む業体であり,消費者(エンドユーザー)の価値観の変化や,メーカーの販売戦略の変化の影響を受けやすい業種である。
この様なことから顧客のニーズの変化を幅広く,的確にとらえ,高度化社会にマッチした高付加価値物流システムを,タイムリーに開発・提供していくのが企業の使命であり,これに応えるのが価値創造VECの推進である。本論文では,これらの要請に応えるべく,
①顧客ニーズの価値向上要素(VALUE UP要素)への変換法
②顧客ニーズの機能変換法
③顧客ニーズの計数的評価法
…等の研究を進め,顧客ニーズの把握から具体化までの実践的なVEC推進ステップを確立し,価値創造VECの推進を可能にしたので,報告する。