建築設備の設計では,発注者の要求事項を機能変換し,あるべき機能を見出すことで,その建物に必要な性能を効果的に構成させることができる。われわれは,このためにFAST技法を中心に,機能変換をすることが多いが,発注者の要求していることを正しく理解する努力を怠れば,いくらステップを正確にふんだVE活動を展開しても,決して良い結果は得られない。
過去の設計においても,計画時に発注者から聞いた要求事項を図面に反映させ,建物ができた時点で発注者の話を聞くと,『間違いではないが,考えていたものと少し違う』という事例を聞くことがある。このことは,建物ばかりでなく,オーダーメイドで作る場合,よく起こることである。
そこで,今回,VEステップのうちの「情報収集」に焦点を絞り,特に注意しなければならない項目を過去の例から分析し,情報収集方法のパターンを決めた。この方法により,誰が情報収集しても,同じレベルで要求事項のより正しい把握と,発注者のニーズを満たすことが可能となり,より高いVE効果を期待できるようにしたので,ここにその要点を発表する。
最低のライフサイクルコストで必要な機能を確実に果たすべく,組織的に,機能本位のアプローチを持続的に行うVE活動は,低成長経済の定着した昨今程,各分野の企業においても重要視され,企業収益の改善に,健全な組織体づくりにと,ますます盛んにとり入れられている。
当社においても,建設業特有の特殊性を考慮して,VE計画会議の設定,3時間VEの確立といった建設業にあったVE手法開発の,研究,普及を行ってきた。
そういった時代の流れの中で,われわれは「物本位から離れて機能本位のアプローチをする」VE最大の特色ともいえる機能分析を,更にベストよりベターを狙っていく作業所VEに適合させるべく,一昨年度来,実用的機能分析法を展開してきた。
しかしながら実用的機能分析法においても,機能評価については,従来の3時間VEにおける評価法を,そのまま採用している。そこで今回は,3時間VEの特色を生かし,実用的機能分析法を,さらに作業所に適合させることを目的として機能評価の実用的方法の考察を行った。
本論文は,建設作業所におけるVE適用分野の拡大にともない,従来から使用してきた3時間VEと並行して使うことのできる,新しいVE手法の開発の過程を述べ,その結果「工事ソフトVE」を定義している。
工事ソフトVEは,機能展開において,物自体から定義される機能と,それを扱う考え方から必要となる機能の双方を入力しなければ満足のいかない作業所におけるVEテーマに適用する。
このような入力条件を機能変更する方法と留意点を述べ,最後に工事ソフトVEを施工計画に適用させる例を示し,全体像を表現する。
建設の市場は,経済成長の減速・社会資本の充実にともない,狭くなっていくのが当然ではある。しかし,企業は,そういった環境の中でも発展していかなくてはならない。むしろ,経済成長を加速し,社会資本を,さらに充実させる使命が建設産業にある。
建設業は,受注産業といわれているように,請負契約で工事を受注して,生産し,顧客に納入する形態である。つまり,顧客からの工事の発注があり,それに建設業者が応札し,受注して,はじめて工事をすることができる。こういった工事発注・受注という流れの中で,受注競争が展開されている。そして,建設業者が工事を受注する段階,逆に顧客からみれば発注する段階では,すでに顧客側の計画は定っており,設計図書・仕様書等は,でき上っていることが通常である。このような条件の中で受注競争に勝つ力は,コスト競争力になるわけである。しかし,この時期でのコスト競争による営業活動だけでは,受注が難しいのが現状である。決定済みの機能を安く作る営業活動には,自ら,手法・範囲が限られてくる。さらに,逆に顧客のニーズとは,かけ離れたものになることも多い。建設コストを下げることのみ,受注戦術とした場合,営業活動の範囲が限られ,受注のチャンスは少なくなる。
この壁を破り,顧客の求めているものに答えることが必要になってくる。具体的には,顧客の立場になって,機能アップ・価値向上をはかること,さらに顧客の新しい事業意欲を喚起して,社会資本として価値のあるものを作ることなどを,営業活動の対象にとり入れることが必要である。
そのための手段として,営業活動にもVE手法を適用し,「営業VE」と称する手法を開発した。この論文では,営業VEの内容を詳述する。
昭和35年,米国から日本に上陸したVEは,近年多くの企業で導入し,その実効果は周知の認めるところである。なお,開発された技法・手法も多く,VE論文として全国に公表・発表されているものだけでも,200編を数えようとしている。
欲しければ,直ぐにでも手の届くところに参考書がいくつもありながら,なかなか思うようにVEを実行できず,実施したとしても,単なる形式的動作に終ってしまい,VEによる真の効果創出にまで至っていないところが,未だに数少なくはないと思われる。企業間競争は熾烈度を増し,性能面,納期面,信頼性面等,各企業とも,殆ど,その格差はなくなりつつある。そこで顧客,メーカーの双方に利益をもたらすため,できる限り価値を向上させ,できる限り安く作りあげることを,必須の条件と考えなければならないし,かかる観点から,VEの実施は避けて通れない関所と認識しなければならない。利益の下降,目標原価の未達成,あるいは新製品開発および製品転換の遅延等,その原因は「成せば成る」ことを知りながら「実行しなかった」までのことである。またその源流をとさかのぼると,ただ単なる「忙しいから」,「他人どころではない」といったものであり,「上から指示された仕事が先だから」式の「錦の御旗」として,まかり通っていたのでは,企業のじり貧は当然といえよう。企業の目的は「ますます発展と社会に貢献する」ことにあるから,やはりVEは,何が何でも強い意志でやり通さなくてはならないのである。
日常業務に追われる時こそ,問題点を発見しやすいし,その時期こそVE実施の絶好の機会なのである。よって本技法は,あえて多忙時のVE実施に焦点を合わせ,記述するものである。
本論文は,マックス・ウェーバーの三つの合理性と実践的三段論法を基礎として,VEのモデルを構成し,VE理論の研究を行った。また,最近発展しつつある設計学の中の設計実験をVE理論の研究に適用し,機能概念および属性概念の関係を論じ,機能と属性を結びつける因果合理性の内容を検討した。その結果,設計カタログの有用性に言及した。VEの発想過程は,マルコフ過程であり,機能と属性の両面からの発想の必要性と,それを容易にする研究とは何かを明らかにした。
特に家電業界における機能・コスト競争は熾烈を極めており,市場での競争に勝ち残るためには,商品企画段階のVEが重要であることはいうまでもない。
こうした認識により,各社においても0.5-LooK VE,更に0-LooK VEと,その手法も変化してきた。
しかしながら,VEステップ上からは商品の差別化や価格ランクの差は考慮されず,同ージャンルの商品群は,基本的には同ーの機能系統図によって把握することになる。
数年前の商品と現在の商品の機能系統図の差,あるいは10万円の商品と20万円の商品のコスト構成が,図のように大きな差があるにもかかわらず,機能系統図の差はほとんどないといって過言ではない。従って,その商品固有の特徴を出して行くためには,もっぱらアイデア発想のやり方にゆだねられるきらいがある。
新商品を企画し,開発設計を進める段階で,VEをより一層効果的に運用するためには,VEステップの過程の中で,商品差別化が自然に検討できるようにすることが望ましい。
こうした観点からVEを見直し,機能定義・機能評価のステップをより拡大して分析していく手法を『拡大VE』と表現し,展開してみる。
VEが長い歴史の中で着実に発展し,企業経営における収益改善の大きな柱として位置づけられるようになったことは,まことに喜ばしい限りである。
しかし,この事実は,とりも直さず,VEに携わる人が企業の利益計画に結びついたVE目標の必達という大きな責任を背負っていることを意味するものである。
一方,企業の利益計画に必要なVEの成果を,長期間にわたり継続的に確保することは,なかなか困難なことである。
VEの成果を継続的に得るためには,次の3つのことが大切である。
まず第1は,「この製品のVEはもう限界にきた」という心理的障壁の克服である。同一製品,または同一機種の繰返しVEにおいては,枯れた製品,すなわちVEのタネ切れという図式が無意識のうちに心の中に障壁となって形成されるからである。
しかしVE努力を傾注してきた製品の製造原価は,着実な歩みをもって低減の軌跡を描き続けている。この事実は,製品は決して枯れるものではなく,顧客の要求に対応し,強い生命力をもって変化していることを物語っている。
心理的障壁の克服には,VE活動の実績成果という事実を通して「製品は決して枯れるものではなく,枯れるのは,その製品をとり巻く人間の頭の方である」ということに気づくことが必要である。
第2は,新しい角度からのVEアイテムの発掘である。従来のアプローチ方法を繰返すマンネリVEでは,必要な目標利益の達成は難しい。
継続的にVEの成果を得るためには,VEアイテムを発掘する新しい技法の開発が必要である。
第3は,VEに必要な新しい知恵と情報の調達範囲を,更に拡大することである。
VE技法をよく理解している人達ばかりでVE活動を実施すれば,非常に能率的ではあるが,情報の質の量が,かなり限定される。日常業務においては,VE技法にあまりなじみがない,より広い分野の人達がもつ知恵と情報を,VEアイテムに結びつけるためには,これに適したやさしい発想技法の確立が必要である。
本論文は,新しい観点,視点または角度からVEアイテムを発掘する方法,しかも,それがVEの初心者にも容易に活用できる方法の確立を目的として研究したものである。
この結果,われわれ日本人が常に使用している左脳の漢字を補助的なキーワードとして使用し,機能中心に右脳に,いろいろなイメージを描き,有効なVEアイテムにつながるようなヒントをつかむ方法を考案した。
本技法の大きな特徴は,発想の観点,視点または角度として単一漢字をキーワードとしていること,及びこの漢字と機能定義の動詞を併用し,2つのキーワードによって大脳の記憶情報を検索することの2点にある。
VEは,機能定義段階におけるFASTダイヤグラムや機能系統図の作成とか,機能評価段階におけるFD法やDAREシステムの応用,あるいはDTCといったマネジメント・システムによって,管理技術としての形態を整え,世界的な発展を続けている。
しかし,これらの技法を正しく理解し,完全に実践するには相当長期間の年月を要し,専門のバリュー・エンジニアでなければ活用しにくい面がある。
また,FD法などの機能評価法によって,コスト意識の低い設計者などへの動機づけをしようとするやり方は,表面的な形だけのVEになったり,逆に,意識の高い設計者からは客観性がないと,VE技法に疑念が持たれる結果になりやすい。
そのために,せっかくのすぐれたVE技法の真価が発揮されず,VE活動の拡大・定着化のネックとなっている場合も,多く見受けられるが,これらはVE思想や技法の本質と適用方法を誤っているからである。
さらに,今日のVEは,開発日程の短縮,過大な改善目標,対象プロジェクト数の増大など,非常に困難な条件のもとでの活動が要請されているのに,それに対応し得る技法の開発が遅れている感がある。
このような観点から,ここに体系化した「実践的VE技法」は,
①VEの本質は,顧客の考え方と同じ立場での価値判断に基づく「創造技法」であることを再認識し,
②特別に習熟したバリュー・エンジニアのための技法ではなく,設計者の誰もが「容易に実践できる効果的で効率的なVE技法」をシステム化し,
③専任のタスクフォースプロジェクトではなく,コストマネジメントとの融合による「日常組織主体のVE活動」を展開する。
ことにより,
厳しい経営環境を克服するために全員参加型の,いわば,QCサークル活動のVE版としてのプログラムである。
そして,その特長は,
①日常組織での企業集団ぐるみの推進体制により,VE技法の有効性を高めながら容易化が図られている。
②機能的なダイヤグラムの「コスト構成図」により,VEの原点である機能やコストが把握・比較しやすい。
③創造的機能を案出しやすい「要求機能の洗練化」により,製品差別化による付加価値向上がはかりやすい。
④体系化された「技巧的な機能評価技法」により,改善の極限を追求するためにVEの真価が発揮しやすい。
⑤ 「簡易VEワークシート」や,「VEチェックリスト」,「アイデアバンク」,「コストテーブル」などのVEデータとか,コストマネジメントシステムとの融合による効率化がはかられている。
ということができる。
プラント制御を目的とする産業用電気制御システムは顧客仕様にもとづき単品受注生産することが多いが,近年顧客ニーズにより制御対象範囲が拡大し,性能,保守などの面から高機能化がはかられている。また,制御装置はエレクトロニクス化の進展により,その製品ライフサイクルが短いものになってきている。
このような情勢にともない,システム計画段階から顧客に対し,長期間の技術的なコンサルティングが必要であり,また製品を工場から出荷した後も,現地での据付工事及び試運転調整に多くの時間を要しており,これらの費用の削減が急務であった。
そこで製品ライフサイクルの初期の段階で,トータルコストミニマムな製品にするため,関与者分析によりメーカーからユーザー迄の製品ライフの各関与者からみた製品のあるべき姿を追求し,魅力的な製品に仕上げ,販売の拡大をはかった。
VAを推進するに際し,大切なことは,実施した結果について,誇りと感激と生き甲斐を感ずるような活動を行うことであろう。特にVA推進ステップの中での機能分析は,製品の本質を追求するという意味で,最も重要な分析作業であり,このステップを忠実に実行することにより,少なくとも顕在化されている要求機能を確実に解明することができる。ただ,残された問題として,顧客要求機能から具体的な達成機能解明の過程において,対象製品の設計構想そのものが,どのような過程から採用され,どのような構想が,如何なる理由で不採用となったかという,いわゆる,潜在構想にもスポットを当てると,更に価値の高い真の達成機能を選択することができると考える。
今回,紹介する技法は,上述の問題点を解決するために,数々のVA活動を消化してゆく過程の中で,フト浮かんだアイデアを,苦心の末,体系化したもので,実際のシステム製品のTFP-VAに適用し,予想以上の成果を得ることができた。
以下,その概要について述べる。
家庭電化製品では,現在限界普及率に達しているものが多く,当工場における主要生産品目である冷蔵庫においても,厳しい市場環境にある。
従って,生産増による利益拡大は困難な状態にあり,VEに対する期待は,ますます大きくなっており,VE活動に多大の力をかけて,設計VE・製造VEはもちろんのこと,品質基準総点検による適切な品質確保によるVEにも着手し,製品の価値向上にチャレンジしている。
本稿は,これらのVE活動において,ともすればコストについて目がとどきにくい取扱説明書という印刷物にスポットをあて,パソコンを活用して最適機能コストを追求した技法について説明する。
当社は建設他社に先駆けVEによる管理技法を導入して以来,16年以上を経過しており,ハードVE・ソフトVEによる種々の改善活動も定着している。
なかでも,いち早く取り入れた作業所VEでの苦心談や失敗談を聴き,整理すると,うまく活動した作業所と,そうでない作業所との間には,VEテーマ選定の差,すなわち,たくさんある問題点,改善ヒントから,どれを自分たちの作業所のテーマとして選定したかによるVEテーマ選定で,活動の差が生じたのではないかと思われる。
そこで今回,当社の仙台支店で昭和55年から58年までの作業所の中から,任意に選出した建築系作業所6カ所のVEテーマを分類した結果,VEテーマ選定に能率的な手法(TS法)を考えたら,効果が認められたので提起する。
当工場は,設立以来約15年間,オーディオ製品を中心に生産してきている。
しかし,このオーディオ市場は,今日の低成長経済の中で,伸びなやみ状態となっている。その結果,図-1のCDコードプレーヤー売価推移の如く,激しい売価低下を繰り返しながら,メーカー間の競争を行っている。
これは,お客様からみれば,どんどん価値の高い商品が発売されて喜ばしい。しかし,生産者側にとっては,急激な速度で原価低減を行わなければならなく,さらにシェアを増加させようとするには,この市場のスピード以上に原価低減を行う必要があるといえる。
かかる状況に対処するには,従来,行っているブレーンストーミング法主体のアイデア発想から,さらに,より斬新なアイデアを創造する方法へと技法を向上させなければならない。(図-2参照)
本報告は,上記課題に答えるべく,アイデア発想での阻害要因を改善するとともに,機能系統図のイメージを見直すことによって,新しいアイデア発想技法を開発した経緯及び,結果についてまとめたものである。