企業が,今後予想される厳しい経営環境の中で,存続していくためには,顧客の要求している機能/コストを実現する以外にない。
従って,これからのVE活動は,企業の存続という点から,より一層重要となり,従来に増して全力を傾注すべき課題である。
本論文は,VE活動において,新たに追求すべき企業の枠を越えた"共同VE"の重要性と,効率的な展開方法についてまとめたものである。
すなわち,より高い価値ある製品と価値ある仕事をもたらすために,企業内のVE活動は,あらゆる分野において,強力に推進しているが,取引関係にある両企業が一体となって,仕事の価値向上あるいは取引関係の中にある問題点(発注ロット,納期,取引業務)も含めた共同VE活動については,必ずしも充分ではなかった。
そこで"共同VE"の重要性を明確にすると同時に,従来,なぜ活動が充分できなかったのかという原因も追求し,これから効率的に展開するためには,どうすべきかについてまとめたものである。
建設業を取巻く環境は,年々きびしくなり,コスト競争の激化,顧客の低コスト追求などの中で,工事益を確保し,経営を安定させるためには,より一層の企業としての努力が必要となってくる。
従来も,それに対処するための普段の努力をしているが,上記の現状を踏まえ,最大限の効果をあげるべく,より一層,企業では本支店の組織をフルに活用し,その"ちえ"を結集する時であると言える。
建設業は,他の製造業等と異なり,個別受注産業であり,多くは一品生産型である。
1件1件の工事についての目標値を設定し,それの達成のための小さな努力の積上げが,結果として企業の工事益となり,それが企業を経営していくための糧となる。
従って,各工事の工事益の目標設定に対するVEによる工事益の確保のために,最大のウェイトをかけることが望まれるゆえんである。
当社では,昭和43年,VE手法の導入以来,その推進・普及につとめ,特に工事部門ではVE計画会議と3時間VE(VE会議)等の形で作業所に定着し,その活動を活発にすすめている。(VE計画会議と3時間VEについてはVE全国大会で論文として発表ずみ。)
工事部門のVE活動方針として,作業所VEの実践による工事益の確保が大きく打ち出されているが,それと同時に,その手法を活用し,目標設定とそのフォローに組織的な展開を行い,かつ,業務能率の向上をめざし効果をあげつつある。
以下に目標設定へのVEアプローチと,具体的な展開について述べる。
企業は,永続的繁栄をはかるために,業務水準の維持,改善に開発を行い,そのために,さまざまな管理手法を使い分け,今日に至っている。
当社もVE導入後6年を経て,数多くの成果を生み出し,企業発展に寄与してきた。
しかし,その展開結果を別の視点からみるとき,必ずしも,VEの特徴が十分活かされてきたとはいいきれず,時間的なものや,手順上の問題が残されている。
改善活動において,完全に一つの管理技術に依存するということは,むしろ例外的であり,時と場合に応じた使い分け,応用が必要である。
こうした考えにたち,建設プロジェクト業務での原価低減活動に対し,その特殊性を考慮しながら,当社なりの工夫改善を重ね,VEをベースとした短時間原価低減手法の開発を試み,実用化をはかった。
本論は,これらの問題解決をはかるために試みた手法開発の経緯と,その内容を詳述するものである。
当社のVE活動の歴史は,今年で14年を数えるが,この間のVEによる成果が,企業活動にいかに貢献してきたかは,はかり知れないところである。当社は,これまで建設業という業種の特異性をあえて容認し,短時間VEなどの手法を開発して,VEに積極的に取り組んできたことは,過去に何度も紹介されてきたことであるが,これは,こうした当社流ともいうべきVEのやり方が,いかに作業所中心的に展開されてきたかを証明しているのである。ここ数年,全社的運動への広がりを求めて全社,全部門でトータルVEへの取り組みを実施しているが,これらの成果を,ある程度期待できるにせよ,今後とも,これまでの作業所中心的な活動方式は変わらないものと思われる。しかしながら,日進月歩する建築生産技術の変遷にともなって,VEの成果も徐々に変化しているのも事実である。このあたりで,過去10余年にわたって蓄積された成果を振り返って,今後のVE活動の方向性を展望するとともに,その課題解決へのアプローチを実例を掲げて紹介する。
近年,東京を中心に,ホテルの新設が相つぎ,第3次ホテル戦争の様相を呈している。
しかし,今後,東京が国際都市として発展を続ける限り,まだまだ質の高いホテルの需要はなくならないものの,低成長時代といわれるこのごろ,コストは限定され,合せて機能の充実をはかることが,ますます,われわれ建設業に携わるものに要求される。
標準的な設計手法で,発注者の要求事項を,すべて満足するように計画すると,予算を超過してしまい,実現不可能な設計になってしまうことが多い。そのために,発注者の要求事項を,いかにしてコストの中に組み込んでいくかは,重要な課題となってくる。当社では,このように発注者の要求事項を機能に変換し,それを補足する2次機能との関連を追求して,限定されたコストの中で,いかにして機能を組合せて,無駄を省いていくかを研究してきた。
われわれは,研究の課題で,バイザウェイが開発したFunctional Analysis,System,Technique (FAST)ダイヤグラムへの展開による機能追求手法の導入を検討した。
FAST技法は,日本VE協会発行「VE資料24」にも述べられているように,教科書レベルでは,その有効性を説きながらも,実践面では,ほとんど活用されていないといわれている。
本レポートでは,建築設計で,発注者の要求事項を機能変換し,機能の整理を行うとともに,VEとして重要な情報収集を効果的に行う手法に結びつけていく方法を説明し,今後の活用の端緒とする。
近年,VAが企業活動の中で重要視されてきたのは,その成果もさることながら,経営者の理解が高まってきたことによるところが大きいと思われる。VAの特徴である。
① タスクフォース方式で展開するため,組織間の壁が打破できる。
② 顧客ニーズにそった方向で製品を判断するため,アウトプットの方向性の妥当性が強い。
③ 機能分析による大幅な方式の変更により,大きな原低効果が期待できる。
以上の主要な点が認識されてきたためであろう。
企業の中で,VAがこれからも定着するためには,この3つの主要な点に,より磨きをかけることが大切と思われる。
年々多様化してゆく市場と,企業競争の激化に対応するためのVA活動は,如何にあるべきか。
VAは,コストダウン志向の取り組みが強く,企業トップのニーズも,古くから,その傾向にあり,コストダウンのツールとして多く活用されているのが実態であると思う。これからのVA活動は,前述の企業環境からも V=F/C の意味を充分に考えて取り組むことが肝要である。
Functionを最大にし,Costを最低にして,Valueを最大にすることができて,Priceを優位に設定することができる取り組みの可能な時点は,商品企画の段階である。
いうまでもなく,顧客ニーズに適応している商品を,タイミング良く売り出すことは,企業目標の1つであるが,この命題を課せられている商品企画にVAを適用させ,VAの威力によって商品企画の効率を向上させることが,これからの企業力の大きな要素となるものである。すなわち,0-Look VAの成果が,企業力のバロメーターとなるといっても過言でないと考える。
本論文は,「開発業務の効率を向上させるために,その源流である商品企画を効率的に進める」この狙いを成功させるために,0-Look VAの取り組み方を如何にすべきかを目指したものである。また,当社で 0-LookVA を実践するにあたり,手順等を作成したので,その一部も紹介する。
一般に商品の成長パターンは,開発→成長→成熟→衰退に至るまで,図-1のように一様のパターンをたどる。新開発の商品は,開発された当初は生産量を少なく,高価であるが,ユーザ一層も多くなり,需要量が増すに従い,低価格となり,その低価格が,更にユーザ一層を増加させる。一方では,新規参入のメーカー数も増加し普及率が向上するというパターンで推移するが,このパターンが最も良く表われているのが民生用商品であろう。
産業用電子機器では,普通,需要層が限られており,民生用電子機器ほどには需要の急速な拡大が図れないという壁があり,生産量の伸びや,製品サイクルの長さ,価格の推移のしかた等が,図-2のように,かなり異なっているのが通例である。
しかしながら,最近のファクシミリやOA機器にみられるように,明らかに民生用マーケットをねらった需要が開拓され,民生用電子機器に似た傾向が出始めていることは注目に値する。
本論では,産業用電子機器の発想を転換して,いかに民生用機器のレベルに近づけていくかという民生指向の戦略的VAアプローチの一方法について述べる。
VEの成果を拡大するために,最近では,ソフトVEの領域におけるVE活動が,ますます活発化してきた。しかしソフトVEは,ハードVEに比較して,対象となる領域が極めて広く,複雑多岐にわたるため,製品を対象としたVEのように,1パターンの展開が難しい。従って,ソフトVEの場合は,テーマに応じたアプローチの方法を,その都度,考え出さないと大きな成果につながらないことがある。
本論文は,多くの活動事例をもとに,ソフトVEの領域におけるいろいろな対象テーマの構成要素と,そのメカニズムを解析し,アプローチ方法のパターン化を研究したものである。
その結果,ソフトVEの対象テーマは,仕事の処理(時間または金額の削減)と仕事の流れ(スピードアップ)に分けて考えると,単純化されることがわかった。
仕事の処理には,情報の処理と物の処理があり,これらの大部分は,ハードVEと同じような考え方とテクニックで価値の評価ができる。
一方,仕事の流れには,情報の流れと物の流れがあり,特定のテーマを対象とする場合には,スピードアップまたは迅速化として,これらの流れが重要な意味を持つことがある。しかし,仕事の流れを評価する場合には,ソフトVEとして,新しい価値の概念を導入する必要があり,これについて検討を加えた。
以上について,大きな成果につながった実際の活動事例を引用しながら,以下に述べる。
産業の発展過程が成熟段階に達してくると,トータル的な考え方,進め方が,より重視されてくる。
VEにおいても,従来の製品を対象としたハードに加えて,間接部門の業務,管理システム等を対象としたソフトVEが活発になってきているのも,その現象の顕著な例の一つである。
ソフト対象は,改善効果の大きい「残されたVE領域」である。しかし,やってみると案外難しいのである。従来の製品を中心としたハードVEとは,多少趣を異にする。
現状分析をスタートにした2nd look的なアプローチでは,あまりに複雑で長時間を要し,効果もあがりにくいのである。
効果的なアプローチをするためには,いきなり分析したり,問題の細部に入り込むのでなく,取り組み対象の基本的問題に対応する仮説を設定し,その仮説を手がかりにして「あるべき姿」を描き,あるべき姿をとおして,現実的な解決をはかることが重要である。
本文において,経験にもとづいた仮説を設定し,その仮説を手がかりに,VEの科学的プロセスによって論理的,客観的にVE対象を改善していくソフトVEアプローチについて述べる。
わが国の就業者数は,製造部門で年平均1.4%ずつ減少し,オフィス部門では,年平均2.8%ずつ増加しつつあるという。
一方,米国における投資額と生産性向上率は,図表-1に示すように,製造部門の生産性が90%向上したのに対し,オフィス部門の方は,僅かに3%しか向上しなかったと伝えられている。
このような状況から,オフィスオートメーション(0A)の必要性が叫ばれるゆえんであり,80年代に生き残るための企業戦略の重要課題のーつとして「ホワイトカラーの生産性向上」が急速に浮上してきた。
同様の背景で,企業におけるVA活動も,製品などハードウェアの分野ばかりでなく,事務・手続き・組織・帳票などソフトウェアの分野へ適用分野が拡大しつつある。しかしながら,ハードウェアと比較して,ソフトウェア分野に関するVA技法研究は数少なく,特にソフトウェア分野ではヒューマンファクターの占める割合が大きいため,機能定義を行うのが難しいという問題点があった。
この論文では,事務・管理部門の業務改善などソフトウェア分野VA(以下ソフトVAという)機能定義に適用できる「機能モジュール」技法について紹介する。
建設VEの技法は設計,施工(作業所),運搬,協力企業へのアプローチなど,日本VE協会からも多くの資料が発表されている。これらは,いずれも諸先輩が,いかに建設業の中にVEをうまく導入していくかを真剣に研究してきた貴重な資料である。
そこで建設業の特徴となる要求をあげてみると
①個別受注産業であり,個々の設計により生産されている。
②ー商品の寸法が大きい。
③一商品の金額が高価である。
④ー商品のライフサイクルが長い。
⑤工場ともいえる生産現場が,一商品毎に変り,一定していない。従って生産設備に該当する仮設物の構築,撤去もー商品毎に行われる。
⑥屋外作業が多く,労働環境は必ずしも良くない。
⑦商品の構成材料が極めて多い。
⑧アッセンブリー産業である。
⑨設計図書が与えられ,生産だけを受注するものが多い。
以上のような事情が組み合わされている点が,建設業の特徴であるということができる。
すでに発表されている建設VE資料は,いずれも建設業特有の問題点の追求が多く,システム産業として実務を遂行する場合には,これらの技法を,いかにアレンジして効果をあげていくかが重要である。
われわれ建設業に従事する者は,担当セクション単独で行うVEの他に,建設物を作る過程で,各技術者グループ相互の横のつながりにより行われる,いわゆる横断VE(トータルVE)を実施してきた。われわれは,更にすすめて企画設計から施工までの縦の流れを,組織的段階に実施する縦続VEを導入し,これらをジョイントさせ,二次元的にVEを展開していくことにより,VE効果を飛躍的に向上させるVE推進方法を,ここでは,特に"ジョイントVE(JVE)"と称し述べる。
設計施工工事における上記のような横断VEと縦の流れを行う継続VEとは,一つのVEをまとめあげる過程で,VEメンバーの果す役割りに明らかな違いがあり,あえて,これを用語の上でも区別し,その定義を明らかにしている。
建設VEは,一品生産であり1つのVE改善は一つの商品のみに適用され,量産品のような反復効果は,あまり期待できない。そこでVEによる改善内容はベストよりもベターを選び,その分,少しでも多くのVEテーマに挑戦し,改善をはかることが重要である。
そこで一つの工事で,多くのVEテーマを効果的に推進して行く方法として,JVEを提案する。発注者から与えられた条件をもとに,一つ一つのテーマをJVEの考え方により展開拡大させ,より良い製品を作るということは,極めて効果的なことであり,大いに推進すべきである。
以上をまとめると,次のようになる。
TVE(トータルVE):一つのテーマを広い範囲で実施するVE。
JVE(ジョイントVE):一つの製品を作る過程で多くのVEテーマに取り組むVEの推進方法。
現在,企業をとりまく環境は,非常に厳しいものがある。すなわち,メカトロニクスや先端技術などの急速なイノベーションの時代を迎え,また大幅な短納期要求や,小ロット化,低コスト,高信頼性など,顧客ニーズの多様化,高度化が日増しに強くなってきている。
このような,時代のニーズに迅速に対応し,企業として発展をしていくため,当工場では現在,N-MOPPS (New Market Oriented Products and Production System) 運動を展開している。この内容は
①強い新商品の早期開発
②最適生産システムの拡大充実
③仕事の質の向上
であり,工場をあげて鋭意取り組んでいる。
この中で,製造部門に課せられた重点テーマは,
①短納期や小ロット化に対応したライン作り。
②大幅な,直接加工費のコストダウンである。しかしこのような課題を確実に実現していくためには,従来,スタッフ部門主体であった製造合理化を,製造現場主体で推進できる実力を早期に養い,スタッフ部門のパワーを新商品開発,新技術開発に集中していく必要がある。
一方,より高度の合理化を推進するためには,従来の分析手法だけでは限度があり,どうしても機能追求による発想の転換や組織的な力が必要である。さらには,職場全体の合理化の活性化を計るためにも,VAの思想や手法の浸透が急務であると考えられる。
このような,工場の背景と,製造現場におけるVAの必要性を考慮し,当工場に適した製造VAの検討を行い,昭和55年度よりVIQ活動を導入し,重点合理化プロジェクトから,大衆運動まで結びつけ,当面の課題消化と,今後の合理化に対する人材育成を指向し,現在,成果をあげつつある。その組織的展開と,内容および特徴について紹介する。
われわれの工場では,エアコンを過去20数年間にわたり生産してきたが,その間,第1次・第2次のオイルショック,冷夏による減産,あるいは省エネ規制にともなうイニシャルコスト等のアップ要因を,企業独自に改善できる手段として,VE技法を導入し,改善をはかってきた。
導入初期は,セカンドルックVEが中心であり,やがて,設計段階におけるファーストルック,さらには,商品企画段階におけるバリューデザイン(VD)と上流段階でのVE適用に移行し,試行錯誤や多くの実践経験を重ねながら,企業経営指標に密着して,VE活動を展開してきた。
市場におけるエアコンは,常に最新技術を導入したコストパフォーマンスの高い商品,顧客ニーズに合った商品,あるいはライフサイクルコストの優れた商品が求められている。この市場ニーズを満たすために,最新のエレクトロニクス技術を駆使した商品,あるいは省エネルギーと快適さの機能を持った商品開発に,しのぎをけずっている。
エアコンの基本を構成する機能部品は,開発日限,開発費用,あるいは設備費用に多額な資金を必要とする関係から,仕様の見直し程度か,または,市場にある標準品をエアコン用の仕様に見直した程度で対応し,抜本的な改善をはかる機会が少ない。また信頼性確保のために,確認ステップを,長期にわたって実行し,事故を未然に防ぐことが重要である。しかし,機能部品の大幅な価値向上がはかれた場合には,エアコン全体に波及し,その効果は,非常に大きなものとなる。
そこで,機能部品の機能分野におけるコストの度合を把握して,(1)機能分野ごとに方式選定によるVE効果を狙うか,(2)機能部品のVE効果を狙うか,または,(1),(2)の両方を狙うか,狙いを明確にした上で,目標割りつけを行う方法を採用した。この方法によれば,改善の狙いが明確であるから,やわらかい改善額が把握でき,また,これらに関連する情報は集めやすい利点がある。
VE活動では,価値の高い代替案を作成することを目的とし,最初に機能分析(機能定義,機能整理,機能評価)を行う。これは,VE対象を的確に把握するためである。中でも機能整理法としての機能系統図の作成は,重要な役割を持っている。しかし,この機能系統図は,時間をかけて作成した割合には,VE活動を通して有効に利用される局面が少ないのが実状である。
従って『機能系統図をできるだけ短時間に効率よく作成する』とともに『機能系統図と代替案作成との結びつきをより明確にする』ことが望まれるところである。これを可能にするための技法として『サンドイッチ形機能系統図技法』を開発したので,その考え方と技法について,以下に説明する。
VE活動において「創造力」は不可欠であるが,持って生れた個人差がつきまとい,訓練や既存の創造技法の助けを借りても,なかなか向上しにくい資質である。
また,如何に「知識」が豊富でも,「世の中の汎例や常識の範囲の発想」にとどまる人が意外に多いのに気がつく。「創造力の優劣」は,時には,人の運命を変えたり,また,企業活動においては,製品のライフサイクルや経営数値にも影響を及ぼす。
われわれVE担当者にとっても,「業界の競争」に打ち勝つ手段として「コストダウン」や「セールスポイント」を付加するための「アイデア」を,より効率的に生みだすことは,重要課題である。
しかし「TFP(Task Force Project)活動」を通じて感じる点は,まだ構成メンバー(設計,生産技術者他)の持合せる「創造力の範囲」に,活動の成否が左右され易いことである。VE推進者は,推進手段を考えたり,創造技法を駆使してメンバーを刺激し,より有効な創造をさせるべく試みるが,既存の創造技法を通して感じるわが社の問題は,
1) 難解で理解するまでの時間がかかる。
2) 創造し易い環境作り的なものが多く,アイデアの数が出ても,質や歩留りは必ずしも良くない。
3) 直接的に「答」につながるアイデアの抽出技法は少ない。
4) 問題点を把握する「分析技法」は多く開発されているが「創造技法」の数は少ない。
等が問題としてあげられる。そして「誰もが同じレベルでアイデアを出し得る技法」を開発する必要性を感じた。
最も理想とするVE活動の形態は,商品の開発過程に携わるすべての人々がコスト,機能の考え方に立って,仕事を遂行することにあり,改めて計画的にとり入れるべきものではないのが本当だろう。
しかしながら,実際のところは,企業内教育として定期的にVErを養成したり,特別なプロジェクトとしてとり上げるほかには,ターゲットが明確になっていないとか,時間的な制約などの理由から,目標が達成できていないなど必ずしも,うまくいっていないのが実態ではないだろうか。
基礎研究段階や高度成長下の商品開発では,それぞれが多少,ランダムな方向に向いていても,全体としてあるベクトルが合っていれば,それで良かった。
ところが,今や商品開発過程で各々のセクションが,VEの考え方を充分理解し,経営に結びついた計画的,組織的な活動をしなければ,企業は生き残れなくなってきている。
当論文は,「Side Look VE」という新しい考え方により,商品開発過程を横断的に眺め,VEの環境作りや,システム作りを行い,自然と全員がVEの思想に徹し,企業体質を向上させることを狙いとするものである。
クレーン等の大型鉄骨構造物においては,重量軽減がコストダウンへの近道である。また,顧客サイドからも省エネ,省資源の見地で軽量化を求められている。
この軽量化を推進するに当り,単に製品構成要素のすべてについて,平均的に軽量化をはかるのではなく,重点ポイントを絞って取り組むことが望ましい。ウェイトリレーション法は,製品の構成要素間における重量の影響系統を分析し,また各要素のコストレベル(鉄骨構造物の場合は,一般的にトン当りコスト)を把握することにより,製品の特性をチャート上に表示させる分析手法である。
ウェイトリレーション法は,目標の割りつけ,重点ポイントの摘出に利用し,成果をあげている。以下,当事業所の製品である天井クレーンを対象例として説明する。
オーディオ業界は,今,深刻な構造変化の時期に直面している。ひとつには,輸出比率の高いこの業界は,欧米市場の長期不況のために,売り上げを低迷させていること,更に国内においても需要の一巡,個人消費の低迷などにより,昨年は,前年より1割方売り上げが減少した。ふたつめには,第3国グループなどに,低価格品はシェアを譲り渡す傾向が続いている。もうひとつは,今までのアナログ技術からデジタル技術への転換に象徴される技術革新,新素材の時代を迎えたためである。今年秋,コンピュータ技術の応用であるDAD(デジタル・オーディオ・ディスク)という新しい規格のレコードとプレーヤーを一斉に発表する。今までのアナログ式のレコードよりも,音質は良くなるが,各社ごとの音の個性は,さらになくなることが予想される。そうなると,オーディオ製品は,趣味の製品というよりも,安くて良い物を作ることの競争になって行くことが考えられる。今まで,高度成長から低成長への変化を,減量経営,軽量経営によって乗り切ってきた各企業は,今また,大きな試練に立たされているわけである。
当工場においても,昭和44年の工場独立以来,VA活動を展開,多くの成果をあげてきた。本年も,前述のような企業環境に対処するため,従来以上のVA活動の展開をはかるべく,意欲的に推進しているが,特に,VA効果実現のスピードアップおよび機会損失の撲滅に力点を置いている。
本論文で紹介する「アイデアのバリュー評価法」は,アイデアのレベルをビジュアル化し,それぞれの価値の評価を適確にすることで,VA成果の増大につながるという信念に基づいて展開しているVA活動のー技法である。
VAは資源有効活用の技法として,時代的要請を満たすものであり,各企業において積極的に取り組み,多くの成果をあげていることは事実である。
しかし,一方においては,手間暇のかかる技法であり,効率的な運用が求められている。また,VAは経験技法であり,何回もProjectを体験することによって,要領がマスターされる,いわばスポーツの技のようなものであるともいわれる。しかし,現在のVAジョブプランは,分析が主体であり,現状を機能的に理解することを強調しているが,その後の代替案作成のステップが抽象的であり,不親切であると思う。成果につながるのは,この代替案創造のステップであり,具体的指示を求めている。
私どもの企業においても
1) VA実施の効率化と
2) VA成果の質,量の拡大
を目標に"機能分析と創造性の有機的結合の研究"に取り組み,"MELCO-VA発想技法"をアウトプットしたので,その一部を紹介するので,諸兄のご批判をいただきたい。
企業におけるVA活動は,経営効率を向上させるための有効な手段として,完全に定着してきている昨今,VAの役割りは,ますます大きくなり,活動の対象とする局面,および範囲は,経営活動のあらゆる面にまで拡大してきている。
この中で,今後のVAのあり方としては"VA活動の効率化"すなわち「最小の投入費用で最大の成果を生み出す」ことが課題となってきており,このため,各種VA技法の研究,開発が盛んに行われている。
しかし,そのほとんどが,VAの実施手順における「分析段階」,「アイデア発想段階」を対象にしたものが主体であり,「評価段階」すなわち"最も効果のあるアイデアを,効率良く,適確に選択し採用する"ための「アイデアの評価」に対しての技法は,必ずしも充分でない。
近年におけるVEの企業内普及は,著しい進展をみているが,その中にあって職能区分的(設計,資材,製造など)に人員割合を考えてみると,製造関係者が圧倒的に大であることは,いうまでもなく,この製造機能にVEの思想を導入し,製造機能の価値向上をはかることは,焦眉の急といえよう。昨今の製造技術のレベル・アップは,マイコン制御,作業ロボット・NC工作機等々真に目をみはるものがあるが,それに並行して,VEによる製造部門中心の製造コスト諸元の価値向上運動の展開が,大いに期待されることは,理の当然といえる。
本論では,製品のVEについては,すでに検討済みの製品について,その製造面からのVE検討を必要とする場合を想定し,それに機能分析(機能定義,機能整理,機能評価)をなす場合の考え方,すすめ方を述べようとするものである。
低成長経済の続く昨今,家電業界は性能,特徴(付加機能)に重点を置いた高額製品と,経済性重視の低価格製品との二極分化の傾向を,ますます強めている。
これらの影響を受け最近のVE界でも,0 Look VE,0.5 Look VEなど,それぞれ趣向をこらしたアプローチをし,各企業とも懸命の努力を続けている。
他方,製品は,一般的に図-1のごとく,市場開拓期から衰退期まで4段階の経過をとるが,企業にとって成長期,成熟期を,いかに長く持続出来るかが,その企業の繁栄につながる。作れば売れる成長期から,成熟期の顧客のニーズに合ったものを,いかに長く供給出来るかが,重要なポイントとなるのである。