昨今の経済は,原油高騰に端を発した価格の変動が著しく,企業収益が大きく,これに左右され,一歩対応を誤ると,直ちに業績の大幅な低下をもたらす危険が周囲に満ち溢れている。
こうした環境下では,VA活動を一層活発化すベく,企業幹部自らが,これを参画推進して,VAを真に日常の業務として定着化させると共に,活動の領域を広げ,底辺を拡大させねば,生き残ることが難しいことはいうまでもない。
このような背景の下に,当工場ではVA活動の範囲,参加メンバーの選定,活動の対象,活動期間,活動の責任と権限範囲の設定,一般ライン組織との関連などを明確化しつつ,毎期のVA予算の達成に邁進し,目標完遂に全工場あげて取り組んできた。
TFP活動は,毎期,製品VA,製造VA,物流VA等に区分されて展開されているが,その中でも,とりわけ経済情勢,すなわち物価動向,需給動向との関連において,成果が大きく変動しがちな分野に,部品VAがある。
過去,部品VA活動を続けてきた結果,こうした傾向に気づき,これを何とか打破して,外部の変動に左右されない部品VA成果をあげるため,いろいろと工夫をしてきたが,今回は,その過程について報告するものである。
当社は,昭和47年に産業能率短期大学教育事業部のご協力を得て,VE実践セミナーを開催以来,現在にいたるまで,VE活動による経営体質の強化をねらいに,種々のVE活動を展開してきております。その間,VE活動の発展に伴い,対象者層の拡大およびVEを取巻く環境の変化に対応して,VE教育のあり方を検討・実施してまいりました。この間に育成した2,000名余のVErは,現在の当社VE活動の中核として重要な役割を担い,VE活動の原動力として,全社的な位置づけがなされております。
当社では,現相談役が「貴社では何を(どのような製品)作っていますか?」という質問に対して,「私共では『人』を作っています。」という解答をしたことが一つのエピソードとして伝承されており,経営の判る人づくりに対する強力な取組み姿勢が,当社の一つの特徴であります。反面,VEの基本的な考えである(アウトプット/インプット)の追求をおろそかにするものではなく,「教育」というインプットに対する明確なアウトプットを求めております。すなわち,教育を経費としてではなく,短期・長期の「投資」であると考えております。特にVEについては,当然のことではあるが,VEの進め方そのものも「VE的」でなければならないとの考え方が重要であり,VE活動の発展に伴いVE教育のねらい・進め方も,変化させていかなければなりません。
以下,VE導入期~拡大期に至るまでに,どのようなVE教育活動を展開するべきであるかについて論じてみたい。
企業の利益計画におけるVEの役割は,ますます大きくなり,その活動に投入する資源も増大の一途をたどりつつある。しかし,一時期としてとらえると,企業の人的資源には,おのずと限界があり,これを越えると,大きな混乱が生じる。また,VE活動には,企業の宿命として,できるだけ短い期間で,目的を達成し,機会損失を少なくすることが,常に要求される。これらのことから,最近では,バリュー・マネジャー及びバリュー・エンジニアに課せられた大きな課題として,VE活動の効率化および迅速化の問題が大きくクローズアップされてきた。
本論文は,製品を対象とした数多くのプロジェクトの実践活動による資料をもとに,基本機能から補助機能(または二次機能)への展開およびアイデアの発想につなぐステップをとらえ,これらステップのアプローチを容易にするために,補助機能の性質を統計的に分析,明確化すると共に,発想のしやすい機能定義用語を抽出,体系化したものである。
これによると,機能のコスト順位において,上位の5つの機能で,全体コストの84%(平均値)を占め,また全体コストの80%を占める上位コストの構成品が,これら5つの機能に,何らかの役割を持っていること,同様に,上位6つの機能で,全体コストの90%(平均値)を占めていることがわかった。また,機能そのものについては,ここで取扱った173の機能のうち,いろいろな表現形式をとっている同義語および同類語をまとめると,例えば,「電流を流す」,「絶縁を保つ」,「○○を固定する」等の機能は,それぞれ13あり,これらのものをパターン化することによって,発想のための機能定義用語の体系化が可能となった。
なお,本論文は,当社の性質から「電気製品」を中心としたものであるが,他業界の製品にも,これらの考え方は,充分,敷延することが可能であると思われる。
従来の価値工学の分野では,思考の幅を広げるために機能定義と機能系統図の方法が使われてきた。
しかし,これらの方法は,いずれも使ってみると,有効ではあるが,なにかあいまいなところ,ぎこちないところが残っており,それを取り除く技法の開発が各国で望まれてきた。
この論文は,そのあいまいなところ,ぎこちないところを取り除くため,日常なにげなくやっている思考のメカニズムを,新しい目で再分析・再組立し,それの手順化を試みたもので,次のような結果を得たものである。
(1) 「最も適切な基本機能の表現」をとらえる簡単な手順を確立し,そのメカニズムを明らかにした。(機能定義の方法の改善)
(2) 従来の作業分割構成WSSの考え方を一般化し,それを機能系統図の上に重ね合わせることにより,両方の考え方の改善をした。(機能系統図の改善)
(3) 価値の高い案を手ばやく合理的に創り出し選択するプロセスを再確認し,それを手順の中に含めた。
FBSテクニックとは,その手順につけた名称である。
低経済成長下の企業経営にとって,VEに寄せる期待は大きい。また,多くの企業で,VEは着実に成果を上げてきている。VE適用分野についても,現製品VEから新製品VEへ,さらに,ハードVEからソフト面のVEへと,拡大してきている。
VE手法面の開発,改善についても,業種あるいは企業にマッチした形で進んでいるように見うけられる。
一方,VE投資効率の観点から,VE活動体制はどうか,VE対象の取り上げ方は適切か,という反省もある。
当社では,建設業の特性を生かし,作業所中心のVE活動を長年にわたり,一貫して展開してきた。
現在,設計VE,設備VE,あるいは事務VEと適用範囲は拡大しているが,経営の基盤を作業所におく建設業にとって,今後もVE活動の中軸を作業所におくことはまちがいない。
建設現場の汗と英知を結集して実施されたVE事例は,数多く収集されている。こうしたVE情報は整備され,新しい工事に際して繰返しVEや,改善のヒントに供するよう,組織的な展開をはかっていることは,第11回論文(工事管理におけるVEのシステム的展開)で述べたところである。
近年,VE事例は飛躍的に増大しているが,その最大の要因は,作業所VE活動における「VE計画」の徹底によるものである。
本論文では,作業所におけるVE計画の重要性を述べ,ついで,VE計画をいかに行うか,VE対象の選定をいかにするか,について述べるものである。
日立電子(株)におけるVAは,テレビ放送装置・ビデオ関連装置・無線通信装置等の製品VAや製造VAが,ほとんどであった。今回,ビジコンの製造VAを行うにあたり
1. 工程が28工程にも分かれており,しかも大半の工程がクリーンルーム内の作業である。
2. 半導体の前工程と同様の微細加工を伴い,各工程毎に歩留りがあり,この歩留りが全体の歩留りに大きく影響を与えている。
などで,従来のVAとは趣を異にしていることがわかった。
本VAでは,工程の流れ・つなぎの改善に重点をおく必要があったので,種々,検討を加え,以下に述べるプロセスVA手法を開発適用して,好結果を得ることができた。
私達,企業を取巻く現在の経済環境は,数年前と大幅に異なり,製品の多様化が進み,かつ量の増大があまり期待できない低成長時代になってきている。このような状況は,図-1のようなディーゼルエシジシを生産する当小山工場においても同様で,従来通りの業務の進め方および手法では,思うようなコスト低減が困難になってきた。
そこで,今後は,このような状況の変化に対応した現状打破の手法が必要になった。
そして今回,発想を転換しVE手法を活用した工程設計および改善活動を,エンジンのメインパーツであるシリシダーブロックの加工ラインにおいて試行した。
また,このステップの標準化も検討したので,その内容について以下で述べる。
激動する経済環境の中で,企業は体質改善と新規発展のため,いろいろの努力を行っているが,その中で,近年とくに成果をあげてきたのがVE技法である。
購買部門からスタートしたVE技法が,現在では,本流の設計部門や製造部門で活用され,さらに営業・業務などの間接部門にまで展開されている。
このように,対象部門や対象テーマが多様化してくると,VE技法にもいくつかの問題点が生じてくる。これに対して各社各様の改善手法が発表されているのは,大いに結構であるが,価値工学としての基本的理念が不透明のまま,手順や手法にたよりすぎる場合も見受けられる。
VEの発展と向上のためには,一つには,多くの企業で多くの人に理解されやすく,使いやすい方法として改善してゆかねばならぬが,その反面では,価値工学としての基本理念が,多くの対象テーマの問題解決に適用できよう。技法レベルの向上に努力する必要がある。
本文では,後者の立場から価値工学の向上のための問題点と,その解決法を述べる。
高度経済成長がもはや,期待できない現状では,限られた市場のなかで,自社製品のシェアを,いかに伸ばすかがポイントとなり,VA活動の重要性が一段とクローズアップされてきた。
したがって,VA活動は,製品,製造,物流と,漸次その対象を拡大し,単に,ハード面ばかりでなく,ソフト業務にいたるまで,あらゆる分野にわたって適用されようとしている。
VAに従事するわれわれにとっても,単に製品知識ばかりでなく,多岐にわたった能力が必要とされているが,個人の能力のみに依存していたのでは,もはや限界に達し,また,効果も小さいことから,当事業所では,対象プロジェクトについてチームを編成し,総力を挙げて推進する,TFP (TASK FORCE PROJECT)活動を主体としたVAを推進している。
しかしながら,このTFP-VAにおいては,各関係部署の専門家を動員して,一定期間専従させるため,いかにして効率的なVAを推進するかが,最も大きな課題となってきている。
本報告は,この課題に対処するため,われわれが実際に採用してきた手法について紹介するものである。
当佐和工場は,スタータ,気化器,カー・エアコン等を製作する自動車機器専門工場として,昭和43年に設立されて以来,顧客第ーをモットーに,全従業員の頭脳を結集したVA/VE活動を展開してきた。
しかし,昨今の国際情勢をみるとき,原油の高騰に呼応した省資源・省資材VA努力をより一層強化し,この難局を打破しなければならない。
すなわち,原材料を輸入に依存するわが国の企業において,国際競争に打ち克ち,収益を確保してゆくには,輸入資源を最大限に有効活用することが,今や,国家的重要課題となっている。
このような中で,使用素材量削減VAも,軽量化・薄肉化……等の手段は,既に設計段階で行われる当然の業務レベルとなっている。
今回,使用素材量削減VAとして,「スクラップ・リサイクリング」に着目し,スクラップの有効活用をはかったリサイクリングVA手法を開発した。本手法は,スクラップの発生情報を的確に把えるため,コンピューターへ登録し,効率的な活用につながるための「スクラップ活用情報システム」の開発によって,実用化が可能となったものである。この情報を,設計・開発時点に適用することにより,大幅な省資源・省資材がはかれるものである。
以下,その内容を紹介する。
高度成長経済,低成長時代に続く80年代は"格差の時代"とでも呼んだものだろうか。高度成長から低成長への変化を,減量経営によって乗りきった各企業は,今また大きな試練の場に立たされようとしている。同じ時に,同じ土俵で,同じように企業活動をしながら,大きく格差のついてしまう厳しい時代の到来といえよう。この格差の要因こそ,われわれが真剣に取組まねばならないVE活動のターゲットであろうかと考える。
当事業部においては,昭和47年からVEの本格的活動に着手し,多くの成果をあげてきたが,さらに厳しい環境が予想される80年代においても"企業業績の飛躍的な向上"を実現すべく意欲的に進められている。
本論文において紹介しようとする『0.5 Look VE』は,"コスト低減が困難な状況下で業績向上を達成するためには,売上増加をダイレクトに実現する飛躍的な機能向上をなしとげる必要がある"という骨子にそって展開されている。80年代前半におけるわれわれのVE努力は,この方向に傾注されつつあることを述べながら,『0.5 Look VE』の考え方について紹介し,諸氏の賛同が得られればと思う。
なお,本論文においてはイラストを意欲的に取入れたので,内容把握の一助にしていただければ幸いに思う。
VA活動も定着し,現製品の改善から,市場調査を含めた製品企画段階から総合力を結集し,体系的アプローチでもって製品企画を行い,価値ある製品を造る開発VAに焦点が移行している。豊かさからくる消費者の個性の主張と,自分の好みから選択したいという気風が強くなると同時に,伸びの少ない市場をめぐって製品競争が激しくなる。これは製品企画の競争であり,他社製品との差別化を進め,より購買意欲を高め,選択の探索を高めさせるポイントづくりが決め手となる。一方,マーケットセグメントをはかり,個々の消費者の要求に応えるきめ細かな製品企画が求められている。なお,1980年代の世界経済は不安定で,複雑で不透明な時代であるといわれている。特に,戦争がいつ勃発するか不安な中東状勢,サウジアラビアおよびイランが西側より離脱,1985年以降のソ連は海外からの石油輸入依存等により石油の問題は益々複雑になってきている。従って,企業経営においては,単に固定的で消極的な減量経営で対応するのではなく,弾力的に人,金,物,技術を組合わせ,活力と,ゆとりをもたせることが必要である。つまり,生産体制や間接業務の合理化による余剰人員の戦略的重点投入をはかり,顧客ニーズの追求,材料動向に対する情報収集に力を入れ,顧客が要求する"価値を最低コストで達成する一価値の創造"に組織的な努力でもってアプローチし,上記情報を十分に活用し,省資源,省エネルギー化を考慮した製品を開発していかなければならない。従って,省資源,省エネルギーに寄与する製品開発のアプローチと題して,体系的な製品企画のアプローチ,および省資源,省エネルギーを含めた機能評価のあり方について述べてみたい。
商品企画は,その商品のライフサイクルでの位置づけにより,展開のしかたに多少の相違はあろうが,違わないことは,その商品ができるだけ多くの顧客に受け入れられ,かつ企業として,さらに多くの利益を確保することである。商品企画は市場動向,顧客のニーズ,社会的ニーズ,マーケティング,技術開発力,製造能力等,多角的に最大の努力で検討されるであろう。また同業他社との競合のために仕様,コストダウンの検討が,企画段階で行われるのは当然のことであろう。ただ忘れてはならないことは,短期的な利益追求だけではなく,その商品のライフサイクルの長期化,すなわち衰退期を先に伸ばすような商品延命策を意識的にはかり,長期にわたる利益確保を行うことである。
売れる商品,商品延命のための適切な商品企画を目指す最大のポイントは,顧客の潜在的なニーズは何か,マーケット拡大の要素になる新しい顧客はだれかを導き出すことであろう。本論文では,このポイントに焦点をあて,VE思考によりアプローチする方法を述べる。
周知の通り,石油エネルギーの需給バランス,人工構成の急激な変動等,さまざまな環境下の今日,とりわけ技術立国をめざす日本にとって,知識労働力の生産性向上は必要不可欠であり,設計部門においても,より効率の高い仕事が要求されている。特に売れる商品を創り出す事は,効率の高い仕事をする重要な側面である。これ等は現情勢下においては,What to design-何を創るかという商品企画の優劣に負うところが極めて大きい。
しかも,それをどんな方式で具現化するかが成否の大きな鍵をにぎっているといっても過言ではない。以上の観点より,客先要求事項分析に基づき,方式を選択する企画設計段階のVEについて,何をどんな方式で設計するかを中心に紹介したいと思う。
日立製作所のVAは,本社VAセンターを基軸にして,工場毎にそれぞれの体質に合わせた活動をしているのが,一つの特徴である。
当工場は,総合電機メーカーである日立の中にあって,ポンプ,コンプレッサーなどの大型産業機械を受注生産しており,VA活動としては,開発VAを中心とした総合VAを活動の基本方針としている。
一般に開発VAは,成果が大きい反面,具体化上のリスクも大きく,そのVA効率(成果/投入費用)を,提案成果でなく,実質成果で評価すると,必ずしも満足すべきものになっていない。
この問題に対処するため,当工場では開発VA以降のVAのあり方として,単なるフォローアップの域を超えたVA技法を開発し,一連の総合VAシステムとして確立し,戦略的に展開することにより,VA効率の向上をはかってきた。
以下その考え方,実践方法について述べる。
本論は,VE導入が遅れているといわれた総合建設業の当社が,VEを導入している先行同業他社に学びながら,特に1st Look VEの実施を試みた経験をもとに,われわれの業界にVEを導入し,日常的に活用するための,組織の運営の方法について考察を加えたものである。
当社は,常々,建築の設計と施工,建築と設備の総合的請負の優位性を主張してきたが,巨大な商品である建築にVEを導入することで,この一貫した請負・生産体制のメリットが,一層明確になったと考えている。
導入は,他の事例に照らしても,いささか特異な経過をたどっている。本論では,この特殊な経験と,そこに現われた状況の中から,できるだけ普遍的な方法論を導き出すことを心掛けた。