文を書く(5)  (ゆ)  No.244

こんにちは。公益社団法人日本バリュー・エンジニアリング協会事務局の(ゆ)です。

大きな変化があった年が明けて早1か月が経ち、もう立春も過ぎましたね。
前回のブログでは、節分で義父に『鬼は外!』といいながら豆をぶつけられた義母が涙目になって怒っていたというエピソードをご紹介しましたが、義父は75歳まで現役で働いた後、時間に余裕ができたこともあり、生涯大学に通って、パソコンを始め色々な講義を受けていたようです。クラブ活動では茶道部に入ってお茶を楽しんだり、地域のサークルでも絵画教室に入って、スケッチ旅行にも出かけたり絵画展も開いたりしていたので、畳2畳位の大きさのもの10数枚程も含めて300枚以上の油絵を描いて、リタイア後の生活を満喫していたようです。

生涯大学では「エンディングノート」の書き方も教わったそうですが、ちょうど時を同じくして大病にかかったこともあり、ある程度の覚悟をもって書き始めたようです。幸い、手術は成功して、その後も病気をしながらもなんとか元気に20年以上を過ごしてひ孫との面会まで果たせたのですが、昨年の12月に96歳と7か月で他界しました。そこで、残された私達家族は、義父のエンディングノートの存在を初めて知ったのですが、約50ページに渡って愛用の万年筆でびっしりと書き込んであり、ページが足りなかったのか、更に10ページほどノート用紙が付け足されていました。

そこには、大正、昭和、平成、令和にまで及んだ長い人生で経験した様々なことがしっかりとした自筆で書かれていましたが、働きながら夜間大学にも通い、勉強熱心な優秀な学生でもあったようです。何を聞いても懇切丁寧に教えてくれた博識な義父でしたが、本当は先生になりたかったということは、このノートで初めて知りました。親や兄弟姉妹や戦友等の友人・知人との別れが悲しかったということの他に嬉しかったことというのも書かれていました。義父は70歳の時に叙勲されており、それももちろん名誉なこととして嬉しかったそうですが、それ以上に嬉しかったのは自分の家族を持てたことで、義母、兄夫婦とその子供達、私達夫婦、そして愛犬にいたるまで、それぞれへの想いが丁寧に細やかに書かれていました。

義父とよく絵の話をしていた私宛には、『色々な気遣いを有難う。絵が上達する才があると思いますので、上手になって人生を楽しんでください。健康に十分に留意されますように祈ります。母さんをよろしくお願いします』といったことが書かれていました。自分が楽しんだように私にも絵を楽しんで欲しいという想いが伝わってきましたが、ノートには、胸の奥にしまって言いたくても言えなかったこと等、様々な想いと共に、そこかしこに感謝の想いがあふれていて、涙なくしては読めませんでした。数年前に施設に入ったため、この1年は面会が難しくなってしまい、1年前の今頃に会いに行って少し話をして握手をしたのが最後になってしまいました。

私は歯が出ていて歯並びがよくないことが子供の頃からコンプレックスなのですが、ずっと前にその話をした時、義母は『あらー、気づかなかったわぁ』と優しくスルーしてくれて、更に義父は真面目な顔で『歯が出ている人のことを「山桜」という。なぜなら葉(歯)が先に出るから』と一言。優しい上に学のある綺麗な表現だなあと尊敬の念を抱いてしまったことを今でも忘れません。(質は違いますが、主人はそういう才能を受け継いだのか、大きな口を開けて笑う私を下からのぞき込んで『すごい!歯が咲いてるよ!』と言って、自分の表現力がすごいと言って自分でえらく感心しておりました)。

義父とはもうそんな会話ができなくなってしまい寂しいですが、今は家の壁という壁に義父の絵が飾ってあり、優しかった義父の代わりに見守ってくれているような気がします。嫁の欲目?かもしれませんが、人生100年時代とはいえ、これだけのエンディングノートを書ける人は多くないのではないかと思います。いずれにしても、このノートがなければ、義父の色々な想いを知りえませんでしたので、「文を書くこと」には「想いを伝える」機能もあると思います。

「想いを伝える」手段としては他にオンライン等もありますが、当会の東日本支部では、活動内容をVE特別資料にまとめ、当会HPで公開するなど、オンライン会議の長所を生かした「ニューノーマル時代の活動スタイル」へのチャレンジを続けているところです。4月からの新年度を前に、積み重ねてきた1年間の活動の報告会を、3月2日にオンラインで開催いたします。
お申し込みの締切りは2月24日になりますが、メンバーの方々の想いの込められた発表を今後のVE活動のヒントにされてみてはいかがでしょうか?(https://www.sjve.org/20766

では、よい週末をお迎えくださいませ。 (ゆ)

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