文を書く(2)  (ゆ)  No.241

こんにちは。公益社団法人日本バリュー・エンジニアリング協会事務局の(ゆ)です。

前回のブログで年賀状のお話をしましたが、それがお手製の版画だったり毛筆だったりするとうっとりと見入ってしまいます。誰しもが慌ただしい年末に(用意周到な方はもっと早くから準備されるのかもしれませんが)準備をされる心の余裕があって素敵だなと思います。

私も以前は自分で印刷したりしていた時もありましたが、手書きで宛名や一言を書いたりしている時間は、相手を思い浮かべることのできる贅沢な時間なのではないかしらと思います。今やパソコンでの編集を始め外注もできる便利な時代ですが、先月の新聞で、『ある作文コンクールの応募で「手書き以外は認めない」という規定に驚いている。デジタル文化に逆行している』という投稿を巡る中学生達の意見が掲載されていました。

賛成派は『誤字脱字等の間違いも減り、推敲する時間がとれる』、『速く綺麗に仕上がる』、反対派は『字に個性と温かみがあり味わい深い』、『筆圧などから書き手の心情が伝わる』といった意見があげられていました。確かに両方とも利点があるのですが、今のデジタル機器の便利さを享受しつつも、私は子どもの時に原稿用紙に手書きで文を書いていた世代ですので手書きにも愛着があります。

この投書への意見交換の記事から遡ること数週間前、新聞社主催の「第70回 全国小・中学校作文コンクール」(確かに「応募する児童・生徒の自筆に限り、ワープロ、パソコンの作品は不可」という制約条件がありました)で、「文部科学大臣賞」を受賞した中学生、小学校高学年、同低学年の子供達の作文が掲載されていました。

受賞された作文はどれも素晴らしかったのですが、中でも感銘を受けたのは小学校1年生の女の子の作文です。1年生なので、すべてひらがなとカタカナでしたが、よくこれだけの量の作文を自筆で書けたものだと驚いたのですが、「ふつうになりたい」という題名のその作文の内容にはもっと驚いてしまいました。

そこには、自分の「発達障害」という病気のせいで感覚過敏があり、苦手なことがたくさんあると書かれていました。『運動会のピストルの音が怖い』、『匂いも苦手でレストランでは、ハンバーグやカレーの匂いが混ざって気持ち悪くなって吐いてしまう』『テストで100点が取れなくても、かけっこで一番になれなくてもいいから、みんなと同じことが、ふつうにできるようになりたい』と切々と訴えていましたが、お母さんから『気持ちは文字で書くといいよ』とアドバイスを受け、更に『障害だからあきらめるんじゃなくて、障害だから頑張ります。来年、入学する弟のステキな先輩になりたいから、先生とお母さんと家族とこれからも頑張りたいです』と結ばれていました。

この女の子の一所懸命な想いが込められているであろう自筆の文字も見てみたいと思いましたが、陰ながら応援したくなってしまいました。昨年から今年にかけて、多くの大人達が、それまでふつうだったことができなくなってしまい不安の中で過ごしてきたことと思いますが、生まれて6、7年しか経っていないこの女の子の病気に対する姿勢を見習って、前を向いて行こうという気持ちにもなりました。

他の生徒や先生に迷惑をかけてしまうからと遠慮して一人で別室で食べていた給食も、どうすれば一緒に食べられるようになるかを周りに相談しながら工夫して教室で完食できるようになったばかりか、給食当番にも挑戦できたそうです。教室で食べられなかったという過去を克服した現在の様子、そして未来も更に頑張ると決意表明をしていることが文章からひしひしと伝わってきて、こちらまで元気づけられましたし、「文を書く」ことは、自分自身だけでなく、それを読む人をも鼓舞する機能もあるのだなあと思いました。

この女の子ほどの名文でなくても、過去・現在・未来について文を書こうと思えば書けるとは思いますが、未来への願望ならいざ知らず、未来のことを予測するというのは難しいものではないでしょうか?中でも、これからの新製品開発・次世代型商品開発には、潜在的要求機能を把握する未来予測が重要だと言えます。

当会では、2月10日に「企画段階のVE ~シナリオライティング法の活用~」セミナーをオンラインで開催いたします。未来シナリオを合理的に作成する技法を体験し、企画段階のVE(0 Look VE)のアプローチ法が学習できますので、この機会に参加されてみてはいかがでしょうか?(https://www.sjve.org/semi/18163

では、よい週末をお迎えくださいませ。 (ゆ)

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